2012年6月27日に行われたチリヌルヲワカの「京都・SOLE CAFE『チリヌルヲワカ~阿部 is in inside~』アコースティックライブのライブレポートです。
2012年6月27日に行われたチリヌルヲワカの「京都・SOLE CAFE 『チリヌルヲワカ~阿部 is in inside~』アコースティックライブ。ニューアルバム「あ可よろし」をひっさげて全国を精力的に周っている彼らが、ついに京都にもやってくる!ということで、ボーカルであるユウの12年来(!)のファンであるスタッフと、高校生の頃に毎日ユウの真似をしてギターを弾いていたというスタッフの2人が会社を飛び出しました。ニューアルバムの収録曲を頭の中でリピートして、取材に向かう道中も期待で胸が膨らみっぱなし。そんななか聴いて参りましたライブを、余韻に浸りつつ振り返ってみたいと思います。
先日放送されたUstreamのインタビューで、「今の自分にとっては、お客さんがいるということ自体が本当に有難い。お客さんが一人来るということがいかにすごいことかを、今までで一番実感している。」と語っていたボーカルのユウさん。その想いからなのか、全国をまわっている彼らが京都の会場として選んだのは大きなライブハウス等ではなく、中心地からはずれた場所にある小さなカフェ「sole cafe」。店内に入ってみると、ステージも特になく、楽器は客席と同じフロア、同じ目線で設置され、最前列の観客との距離も1.5m程度と信じられない近さ。観客数も50人程度とかなりの少人数で、そのためかとてもアットホームな雰囲気の中、チリヌルヲワカの登場を心待ちにしていました。
そのような和やかな雰囲気の中で、本当に1.5m先というまさに目の前の距離に登場したチリヌルヲワカの4人。Tシャツ、ハーフパンツにスニーカーやサンダルというラフな格好の彼らを見て、その気取らない雰囲気に拍手をしながら思わず笑顔になってしまいました。
しかし唐突にはじまった1曲目で、会場の雰囲気ががらっと変わります。アルバムでは最後尾に収録されていて元からしっとりとした曲調である「ホオズキ」が、アコースティック調でより静かにアレンジされ、ちょうど日が暮れて藍色になった外の世界と混ざり合い、会場全体が一気にその夜に引き込まれていくような感覚につつまれました。
そう、ライブのタイトルにもある通り、今回はアコースティックライブ。全体的にいつもの勢いのあるバンドサウンドではなく、静かで雰囲気のある曲調にアレンジされていました。そのような曲達の中でも、一番アコースティック調のアレンジがぴったりだと感じたのが、アルバムの9曲目に収録されている「新月」。イントロに散りばめられたエレアコの高音がまさに夜空を連想させて、歌詞の中の女の子の、相手を想うほど世界中でひとりきりになったような気分になる心情がそのまま音に表れているようでした。
メンバーでセッションをしながら曲作りをすることが多いというチリヌルヲワカ。ライブ中のMCからもメンバーの仲の良さが充分伺えましたが、「天邪鬼」のように途中でがらっと変調する遊び心のきいた特徴的な曲の展開に、個性豊かなメンバーの見事な調和が表れているような気がしました。
今回はアコースティックライブということで、阿部さんの叩くドラムも設置されたものは小口径のバスドラムにスネアとライトシンバルのみ。それらにタンバリンやマラカスなどを駆使して、静かな曲調にマッチしたリズムを奏でていました。また落ち着いた演奏の中でイワイさんのベースの魅力が際立ち、時に遊び心をきかせつつしっかり全体をまとめあげるリズムは心地よいの一言。さらにギターの坂本さんのエレアコでの演奏はもちろん、男性とは思えない澄んだ高音でのコーラスが印象的で、音が溶け合うとはこういうことかと納得してしまいました。
「新月」の演奏が終わったところで、会場は一旦休憩時間に。その間、メンバーはそれぞれの京都にまつわるエピソードを話してくれました。
「京都が好きで旅行にもよく来る」というユウさん。中でも錦市場で売っているピーナッツが大好きで毎回買って帰るらしく、「昨日も買って食べたけどやっぱり美味しかった」と絶賛。またベースのイワイさんは昔、京都の格安ゲストハウス「ウノハウス」になんと10連泊もして、京都を満喫した思い出を披露。一方、ドラムの阿部さんは、「中学校の修学旅行で京都に来た際に湯豆腐を食べた思い出しかない…」とのこと。しかしギターの坂本さんは、今年の1月に今回と同じsole caféでライブを行った際に、ひとり参加できなかった阿部さんに対して3人で湯豆腐を食べている様子の写メを送り付けたのだそう。
格安ゲストハウス 「ウノ・ハウス」
京都市中京区東椹木町108
阿部さんは「あれは寂しかった…」と言いつつも「それじゃあ今夜は湯豆腐のような熱いライブを!」と宣言してくれ、会場が笑い声に包まれたところで休憩時間は終了。なんとも和やかな時間でした。
MCの際に出た「チリヌルヲワカのライブに来るのが初めての人―?」という質問に、観客の中で手を挙げたのはなんと1人だけ。ライブ中はそれぞれ着席したまま小さく体を揺らしたり口元で口ずさんだりと、会場を終始包んでいた和やかな雰囲気の正体はチリヌルヲワカをよく知る観客が作り出したものだったのかもしれません。
アコースティックライブのため静かな曲が多い中、最後の方ではチリヌルヲワカらしいバンドサウンドが垣間見える場面もありました。11曲目の「ホワイトホール」では、迫力のあるベースがしっかりきいた演奏で、さらに今回のライブの中は唯一とも言える歪みのきいた勢いのあるギターソロを聞くことができました。改めてとても不思議に感じたのが、ユウさんの声は特徴的で可愛らしいのに、なぜか本格的なバンドサウンドともアコースティックの静かな演奏ともマッチしてしまうこと。ラストは1stアルバム「イロハ」の最後に収録されている「なずき」で、静かに重なる音で締めくくられました。
さらにアンコールでは、1stアルバム「イロハ」の1曲目「カスガイ」と、ニューアルバムから「念じる」を披露。取材スタッフは観客から見えない場所にいるのをいいことに、曲に合わせて体を揺らしながら「あぁこのまま終わってほしくないなぁ」などと考えていました。名残惜しいライブの最後は、楽しそうな阿部さんのシンバルが長く鳴り響き、音の余韻とともにメンバーの笑顔と会場を包む温かい雰囲気を残しながら去っていきました。
今回のライブでも披露されたチリヌルヲワカの2ndフルアルバム「あ可よろし」は、結成当初からのファンであるスタッフも「最高傑作」と称賛するほど、タイトル通り「あ可よろし」な作品。実はこのアルバムは一般のCDショップ等では販売しておらず、ライブ販売とチリヌルヲワカの公式サイト上でしか手に入れることができません。チリヌルヲワカの魅力が「これでもか」というほど詰まった名盤アルバムになっているので、ぜひぜひ皆さん一度聴いてみることをオススメします。
タイトルの「あ可よろし」とは「あきらかによいこと」、最上級の表現を冠した自信作だ。ユウが作詞作曲を手掛ける楽曲(1曲のみバンドで作曲)は、光と影、赤裸々と奥ゆかしさを巧みに織り成す歌詞、ドラマティック感を携えた「ヲワカ節」なるメロディー、スリルと貫禄が同居するバンド感とグルーヴ。そして全体に貫かれる"和"の佇まい。比類なき独自性と中毒性、濃密で純然たるロックは、ライブフリークだけでなく耳の肥えた音楽リスナー達の心をも掴んで離さないだろう。バンド渾身の今作は、オフィシャルサイト通販とライブ会場での販売となる。
お客さんの顔も緩む、暖かい空間
〒603-8244 京都市北区紫野東蓮台野町10-16
【TEL】075-493-7011
【cafe】11:00~15:00 (日祝定休日)
【LIve】平日、週末休日問わず、不定期的
http://www.solecafe.jp
チリヌルヲワカとは、今年2月に解散したGO!GO!7188のヴォーカル&ギター・ユウ、ザ・コレクターズのメンバーで最近はTAIJI at THE BONNETにも参加、名実ともに知られるドラマー・阿部耕作、椎名林檎や高野寛など多数のセッションで名を馳せるベーシスト・イワイエイキチ、2010年のメンバーチェンジ後にバンドに加入した若き気鋭のギタリスト・坂本夏樹の4人からなるロックバンド