【寄稿文】二代目代表・今井雄紀が語る「みやこ音楽祭の作り方と終わり」

みやこ音楽祭の作り方と終わり

お客さんとミュージシャンとスタッフの距離が近いフェス

2007年5月ごろ、みやこ音楽祭の代表になった僕の最初の仕事は、その年のコンセプトを考え、企画書をつくることでした。企画書は、ミュージシャンに出演依頼をする際、最初に送付させて頂くもので、そのあたまに来るのが「みやこ音楽祭とは」という、コンセプト説明の部分です。スタッフのみんなと毎晩議論をし、京大の生協に行っては、キムチおでんを食べながら、1人でこれを考えていました。

ひと月ぐらい悩んで、僕たちが導きだした結論は「お客さんとミュージシャンとスタッフの距離が近いフェス」でした。出演者のみなさんが会場をウロウロしてたり、スタッフとお客さんが親しげに喋ってたりするフェスって、他じゃなかなかないんじゃないかなと思ったのです。語呂も悪いし、キャッチーでもなんでもないこのコンセプト、後で聴くと「全然ロックちゃうやん！」と思ってた人もたくさんいたらしいのですが、兎にも角にも、そこからすべてをはじめました。

一喜一憂の日々

コンセプトが決まったら出演者のリストアップと交渉です。[1]超大物[2]最近注目のバンド[3]個人的に強い思い入れがある人と、各スタッフが好き勝手言いながらお声がけするミュージシャンをリストアップしていきます。この年初めて来てもらったハンバートハンバートはまさにこの[3]で、あるスタッフの強い希望でお声がけをしました。3/4GUMBOSは[1]ですね。

そしてそして、イベンターの方に紹介してもらったり、友達の元カノの元カレの...とたどったり、いきなり事務所に電話をしたりしながら、交渉をしていきます。ミーティング中にマネージャーさんから電話があったりすると、緊張が走るのもこのころ。決まれば飛び上がって喜んで、断られたらしょんぼりしてと、一喜一憂の日々でした。

同時平行で、会場づくりも進めていきます。足湯をやりたい(冷めるので却下)とか、スナックを作りたいとかか、こたつを置きたいとか、畳を敷きたいとか、「お客さんとミュージシャンとスタッフの距離が近いフェス」を実現するための場づくりについても議論を重ねました。

またまた同時平行で告知も進めていきます。毎日毎日京都中のライブハウスを回って、出てくる人たちにフライヤーを手渡ししてました。「行くから要らないです！」とか、「昨日もいましたよね？」とか言われたりしつつ、毎晩しつこくフライヤーを配ります。そうそう、このころHPで告知解禁するたびに異様な速さ(数分後とか)でそれをニュース化してくれるサイトがあって不思議に思っていたのですが、そのサイトこそ、「ナタリー」でした。昔からほんとにお世話になってます。

生きもののように毎分毎に変化していくイベントの流れ

そうやってない頭しぼって、諸先輩方の知識をお借りして、ようやく辿り着くのが本番です。どんなに準備をしたつもりでも必ずトラブルが起こるので、それをひとつひとつ、解決していきます。1日目が終わったら、各部署で反省点を洗い翌日の対応策を考えます。生きもののように毎分毎に変化していくイベントの流れを読みながら、きちんと栄養補給をしながら、会場内をかけずり回るのです。僕は未だに、最初の代表挨拶前ゆーきゃんさんに「これはクスリだから」と黒霧島ロックを一気させられてから、終演後「泣いてるやん、泣いてるやんお前」と岸田さんに笑われるまでの記憶があまりありません。

これは2007年の例ですが、毎回似たようなものだと思います。うまくノウハウを貯められないまま毎年代表が変わっていくこのイベントは、毎年毎年いろんなものがぎりぎりで運営されているのです。たっくさんの人に支えてもらいながら。

素敵なフィナーレを迎える準備が着々と進んでいます。

そうして歴史を重ねてきたみやこ音楽祭も、ついに今年でお終いとなりました。すっごくさびいしいですが、最後らしく特別なことがたくさんあります。ラインナップが超豪華なのは言わずもがなですが、くるりが2日間出演してくれたり、過去のみやこを振りかえれるコーナーがあったり、代表が初代～六代目までそろったりもします。

今、会場で現役のみんなををひやかしつつこれを書いていますが、過去に何度か足を運んでくださった方には昔を懐かしんでもらえる、はじめて来てくださる方にはこれまで知らなかったことをちょっと後悔してもらえる、そんな素敵なフィナーレを迎える準備が着々と進んでいます。

まだチケットもあるようですし、若干数ですが当日券も出ると思うので、よかったらみなさんぜひ会場にお越しください。

最高に「近い」フェスが、もうすぐはじまります。