Exhibitions展覧会
【KYOTOGRAPHIE2023】インマ・バレッロ「Breaking Walls」
KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭2023のメインプログラム。陶器などを使ってオブジェやインスタレーション作品を制作するニューヨーク在住のスペイン人アーティスト、インマ・バレッロによる、インスタレーション展です。
バレッロは、これまでの芸術的表現のステレオタイプから解放されることで不完全さを受け入れ、アクシデントを歓迎しながら制作に取り組んでいます。作品に使われる陶器の破片は、自然や文化の破壊を示唆し、同時に私たちの社会的、個人的、精神的な生活の不安定な側面にも言及しています。バレッロは、壊れることが終焉であるとは考えず、逆に壊れることに前進の可能性や変容のプロセスを見出します。
2019年、バレッロは日本の伝統的な陶磁器の修復技法である金継ぎを京都で学びました。金継ぎには金をはじめとする金属の粉が使われる一方で、バレロの故郷、スペインの陶磁器は金属の鎹(かすがい)を用いて修復されます。双方の伝統技法に使われる金属は、新しいつながりを作るために使われているのです。
本作《Breaking Walls》に向け、バレッロは京都市内の窯元や陶芸家、学生たちなど多くの人々の協力を得て陶磁器を集めました。その破片は金属製のメッシュフレームに詰められ、壁が完成します。このプロセスではスペインと日本の修復技法が呼応し、金属と陶磁器の破片が共に新しいかたちを創造するのです。
会場に立つ二重の壁の間は歩けるようになっており、その空間は人々を迎え入れてくれます。バレッロはこの壁を、何かを区切る境界線としてではなく、コミュニティが集う空間として捉えています。
共に展示される映像作品には、バレッロが制作した繊細で女性的なドレスに見立てた陶器の立体作品が意図的に壊される様子が映し出されます。そして《Breaking Walls》を制作するために使われたのも、さまざまな理由で廃棄されることになった陶芸作品です。誠心誠意を込めて制作した作品を何らかの理由でアーティストたちが手放したのと同様に、バレッロもまた、この映像作品を制作するため、愛する作品を手放さなければなりませんでした。それは、破壊するという行為の暴力性や女性的なかたちの崩壊、新しいものを生み出すために壊されたドレスの運命を記録しています。繊細な作品を壊すという行為がアートになり、究極の破壊を否定することで、脆さと強さがつながるのです。
壊れた陶磁器の破片から制作されたバレッロの作品は、多様性と共存の意義、伝統や文化、コミュニティの重要性に光を当てることになるでしょう。
インマ・バレッロ
スペイン、エストレマドゥーラ州生まれ。20年以上にわたり、粘土、陶磁器、金属、ガラス、木材を使った大規模な陶芸作品を制作している。幼少の頃によく発見した新石器時代やローマ時代、モレスク様式の陶器のかけらがもつ豊かな歴史に触発され制作を行うバレッロは、これらの発掘物を神秘的な遺物であり、独立した美のオブジェであるとみなしている。
バレッロの作品の断片は、文化やコミュニティのもろさやレジリエンス(回復力)についても触れているほか、女性らしさや自然界を体現しており、私たちが共有するもの、目に見えないもの、失ったものについて語り合うための作品ともいえる。また、シュルレアリスムの影響が見られる作品は、女性らしさや自然界のあり方についても問いを投げかけている。
また、ヨーロッパ、アメリカ、そして日本で陶芸および金継ぎで割れた陶器を修理する技術を学び、作品に取り入れている。
主にニューヨークで展覧会を開催し、作品が世界中のプライベートコレクションにも所蔵されている。今春には、自身が家族と暮らすマンハッタンのインスティトゥト・セルバンテスで個展を開催予定。
展覧会概要
期間 | 2023/04/15(土) 〜 2023/05/14(日) |
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会場・開催場所 | 伊藤佑 町家跡地 |
時間 | 12:00~20:00(入館は19:30まで) |
休館日 | 4/18(火)、4/25(火)、5/9(火) |
料金 | 無料 |
注意事項等 |
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info@kyotographie.jp | |
ホームページ | https://www.kyotographie.jp/programs/2023/inma-barrero/ |
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