Report&Reviewレポート・レビュー

ボストン美術館展(京都市美術館)に一足早く行ってきました!

2010/07/06

「京都で遊ぼうART」のスタッフが、行ってきた展覧会やイベントをレポート! 今回は一足早く行って来ました、こちらの展覧会を速報です!去年はルーヴル、今年は...

「ボストン美術館展-西洋絵画の巨匠たち-」 @京都市美術館
(2010/07/06-08/29)

ということで、今回ありがたいことにプレス向けの内覧会にいけることになったので、1日だけ早く展覧会を覗いてきました。残念ながらスケジュールの都合上あまりじっくりと見ることは出来なかったのですが、展示室の様子をざっとご紹介したいと思います。
既に行くつもり、という方も、どうしようか迷っている、という方もご参考に!

実は日本とゆかりが深い「ボストン美術館」。

repo-boston01.jpgまず記者会見では、美術館の館長さんや企画を担当した学芸員さんから、ボストン美術館や展覧会についてのお話をお聞きしました。

ボストン美術館は、1870年に開館したアメリカでは一番古い美術館です。アメリカの美術館といえばメトロポリタン美術館も有名ですが、こちらも同じ年に開館しています。

ボストン美術館の特徴は、他のアメリカの施設にもいえますが「市民が作った施設」ということ。
王侯貴族がいなかったアメリカでは、公に頼らず、市民達が自分達のものを寄付したり、お金を出したりして集めたコレクションが主流なのだそうです。(現在も寄付と入場料・グッズ販売収益で運営)京都も町の人たちがお金を出し合って建てた番組小学校があったりしますが、それにも通じるものを感じます。
また、先日まで奈良国立博物館で開催されていた「大遣唐使展」に展示されていた「吉備大臣入唐絵巻」もボストン美術館の所蔵品ですし、明治時代には岡倉天心が東洋美術部門の管理顧問になっていたのだとか。実は結構日本と縁の深い美術館なんですね

テーマ別の構成で、「比べて見る」が楽しめます。

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今回の展覧会は全体を主題別に8章に分けた構成。主題別なので、宗教画、肖像画、風景画...といったように、同じ系統のモチーフやテーマの作品ごとに各部屋が分かれています。なので、時系列順になっていないところが面白いところ。古い時代も新しい時代も、同じ部屋に一緒に置かれています。

例えば印象派のマネ(19世紀)の描いた肖像画の隣に、ベラスケス(17世紀)の描いた絵が置かれている、という感じ。同じ主題でも時代や作家による描き方の変化がとてもわかりやすくなっています。
それぞれの違いや個性を見比べながらみると、より楽しめるのではないでしょうか。

この点でのスタッフSのお勧めは肖像画の部屋のピカソ。レンブラントなどの他の肖像画を見た後に目にすると、その異質さが寄りいっそう際立って見えた気がしました。(明らかに周りの空気が違っていたような...;;)




肖像画といえばこの人、レンブラントの貴重な全身肖像画。


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左はレンブラントの『ヨハネス・エリソン師』と『ヨハネス・エリソン師の妻 マリア・ボッケノール』(1684)。
他にも夫婦を描いた肖像画はありますが、レンブラントはどこか荘厳で、かつ今にも動き出しそうなリアル感があります。
レンブラントの肖像画は最近も様々な展覧会にも出品されていますが、今回の出品作はちょっとレア物。
オランダ出身の牧師さん夫婦の肖像画なのですが、バストアップではなく全身が描かれています。数多くの肖像画を描いたレンブラントですが、全身肖像画自体がとても高価で注文数が少なかったのか、2点1対の全身肖像画はボストン美術館の見解によると生涯にたったの3対しか描いていないということで、その点から非常に貴重な作品です。
ほぼ等身大で仲良く並ぶ夫婦像。さながら、教会の祭壇画のような雰囲気も感じさせられました。

ちなみにこの作品、レンブラントがまだ20代の頃に描いたものだそう。この時点で既に売れっ子作家だったといいますが、その技量にただただ脱帽です。

※この作品が「夫婦像」であることになぞらえて、7/12には公募で選ばれたカップル1組による京都市美術館での結婚式も開催されるとのこと。
明治建築としてもレトロで宮殿のような雰囲気がある京都市美術館での結婚式とは、なんともロマンチックですね。


360度モネ。11点の名作に囲まれて。

repo-boston07.jpg 周囲の壁にあるのは全てモネ!近づいたり離れたり、じっくりと堪能できます。
今回のもうひとつの大きな見どころは、日本でもファンの多い印象派の巨匠・クロード=モネの作品。

モネはボストン美術館のコレクションでも特に充実している作家で、その数は世界第二位を誇ります。
展覧会では、そこから一挙に11点が展示されています。今回、会場内にはモネの作品だけを集めたスペースが設置されていました。いわば「360度モネの作品に囲まれる」感じ。
その中には有名なシリーズ作品「ルーアン大聖堂」や「つみわら」の一部も含まれています。なんとも贅沢な空間!
また、スペースが広めにとられているので、近くで見た後に離れた距離から眺める...という見方も楽しめます。「光の画家」とも呼ばれるモネの絵はどうしても近くで見ると全体がぼんやりとして見えてしまう気がするのですが、そこを思い切り距離をとって引いて見ると色の点が重なり合い、時間の経過で変化する光の色合いや明暗がよりはっきりとわかります。是非、近くからだけではなく遠くからも作品を眺めてみて下さい。
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今回はマネ、ピサロ、シスレー、ドガ、ルノアールなど印象派は特に充実した内容になっています。また、ミレー、クールベやカミーユ・コローなどバルビゾン派の作品も多く出品されているなど、特に19世紀の作品を多く見ることが出来ます。
これらの作品はちょうど、ボストン美術館が開館した時期とも制作時期が重なります。
ボストンの人々は当時最先端のアートだったこれらに関心が高く、特に印象派に関しては早い時期から積極的に収集が行われていたのだそう。
今で言えば現代アートの作品を熱心に人々が集めた、ということ。当時のボストン市民たちの心意気が、これら19世紀の絵画コレクションには詰まっているのかもしれません。


repo-boston10.jpg ミュージアムショップも覗いてきました。このぬいぐるみ、皆今回作品が出ている画家がモデルです。誰が誰だかわかりますか?
「絵画のフルコースをどうぞ」のキャッチフレーズ通り、かなり幅広い時代の作品が集められていましたが、あえてそれを時代別にしなかったことでかえって素直に作品が見られるな構成になっているような気がしました。
あまり西洋画には詳しくないんだけれど...という方でも、難しく考えずに西洋画の魅力に触れられるのではないかと思います。

また、作品と作品の間のスペースがかなりゆったりと余裕を持って取られていて、見ていて窮屈な感じが殆どしなかった(展示品数が多いと次々に作品が出てきて正直最後のほうは酔い気味...となってしまうことがあるのですが、そういうことはありませんでした)のも、ポイントだと思います。

ただ、実質30分しか展示会場にいられなかったのでじっくりと拝見、とまではいきませんでした...時間を見てもう一度覗きに来れたらと思う次第です。

展覧会は7月6日(火)~8月29日(日)までの約2ヶ月弱。
少し期間が短めなので、どうぞお見逃しなく!

関連リンク

ボストン美術館展 西洋絵画の巨匠たち
京都市美術館
展覧会公式ホームページ
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