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【予習・復習】ナポリ・カポディモンテ美術館展 見どころ作品&キーワード(1)

2010/10/18

10月8日から京都文化博物館で始まった「ナポリ・カポディモンテ美術館展」。
先日はチケットプレゼントも行いましたが、とても多くの方にご応募いただきました。ありがとうございます!
さて、「京都で遊ぼうART」ではチケプレの際にアンケートをとっているのですが、今回はそのアンケートの中でお伺いした「気になる作品」について、ピックアップしてみようと思います。

パルミジャニーノ『貴婦人の肖像』

napoli_antea.jpgパルミジャニーノ
《貴婦人の肖像(アンテア)》
(カポディモンテ美術館蔵)

さて、一番人気だったのは...やはり、チラシやポスターにもなっている、パルミジャニーノの『貴婦人の肖像(アンテア)』でした。

《アンケートより》
・ 「ポスターのインパクトが非常に強かったです。」
・ 「初見で美しさに引き付けられたので。」
・ 「展覧会を紹介する番組でナポリの少年が必ず恋をする美女と聞きました。」
・ 「じっと見つめていると、逆にこちらの心の中を覗かれているような、少し不安な気持ちになりますね。」
・ 「本当に細長い絵なんでしょうか?」

やはり看板娘効果か、インパクトが非常に強かったようですね。
じっとこちらを真っ直ぐに見つめてくる、大きな瞳の女性。確かに、目の前にしばらくいると心を見透かされてしまいそうで、ちょっとどきどきしてしまう、そんなまなざしが印象的です。
モデルの彼女は作者・パルミジャニーノの恋人だった「アンテア」という女性だと言われていますが、その根拠はなく、本当のところははっきりしません。

■ マニエリスム
「細長い絵」というご意見は、「マニエリスム」のことを指していらっしゃるかと思います。
作者のパルミジャニーノは、ルネッサンスとバロックの丁度間「マニエリスム」の時代を代表する画家です。

ルネッサンスの最盛期、構図や表現の形がきちんと確立され、芸術はひとつの完成形を見せたといわれました。特に、ミケランジェロの表現手法が最も高度とされ、それが基準とされました。
「こういう表現が正しい」という、芸術の表現手法。これを「マニエラ」と呼びます。
その後の芸術家達は、この「マニエラ」をことさらに重視するようになります。「マニエリスム」の語源はここにあります。

確かに、セオリーや枠を踏まえることは悪いことではありません。
しかし、次第に技術へのこだわりは極端なものになっていきます。時には、無理やり「マニエラ」の構図や表現の枠に合わせようとし、結果妙に一部が不自然に大きくなったり、人間の体が「何頭身あるの!?」というくらい縦伸びしているような、非現実的な表現がされるようになったのでした。(他にも、学問の影響など色々な要因はあるようですが)

因みに、「マンネリ」の語源もこれ。「みんな同じ形(マニエラ)にばかりこだわるので、中身の無い同じようなものばかり出来てしまった」ので、それがなまって「マンネリ」になったのだとか。


この『貴婦人の肖像』も、よく見ると微妙におかしなところがあります。
何だか彼女の右肩だけ、妙に肩幅があるように見えませんか?
少し肩を前の方に向けている...のかもしれませんが、それにしても妙に右だけが筋肉質な男の人のように大きく見えてきます。
もっとよく見ると、顔のパーツ配置も若干歪んでいるような感じも...
是非、本物を見て、確かめてみていただきたいと思います。

■ パルミジャニーノ(1503-1540)
イタリアのパルマ生まれの画家。名前は直訳すると「パルマっ子」(当然あだ名)。
尊敬する画家はラファエロ。確かに言われてみると何となく似ているような感じもします(実際、ラファエロの自画像のコスプレ?という自画像も描いてます...とにかく好きだったんでしょうね)
それはもうとんでもない美少年だったようで、彼自身も「自分はイケメン!」と自覚していたとか...要するに自信家でナルシスト。癖が強すぎます。
とにかく変わった人で、普通自画像を描くときは平らな鏡を使うところ、反抗したかったのか何なのか、わざわざ凸面鏡に写した姿を描いていたりします。
そんな彼ですが、37歳の若さで病で亡くなってしまいます。晩年は何故か絵ではなくて怪しい錬金術にハマり、綺麗な美少年はどこへやら、まるで別人のような姿だったとか...。



関連リンク

ナポリ・宮廷と美 カポディモンテ美術館展
京都文化博物館
【予習】「ナポリ・カポディモンテ美術館展」(10月8日~/京都文化博物館)を予習!

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