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【投稿レポート】ぜんぶ!やなせたかし!~ビールの王様・詩とメルヘン・アンパンマンetc.~(京都国際マンガミュージアム)

2010/12/01

実際の展覧会の様子をご紹介している展覧会レポート。
今回はライターの梅田たけしさんに、こちらの展覧会の感想レポートをお寄せいただきました!梅田さん、どうもありがとうございます!

ぜんぶ!やなせたかし!~ビールの王様・詩とメルヘン・アンパンマンetc.~」 @京都国際マンガミュージアム
(2010/10/02-12/26)

「アンパンマン」に込められた作者・やなせたかしの歴史と思い


flyer_yanasetakashi.jpgのサムネール画像のサムネール画像極端な大器晩成型と言おうか、「漫画家やなせたかし」こと柳瀬嵩は、こと漫画に関しては、驚くほど遅咲きだ。

もちろん「アンパンマン」がヒットするまでにも漫画を描く機会はあった。35歳で独立してから描いた四コマ漫画が、ここ国際マンガミュージアムの展示場には所狭しと並ぶ。
私事で恐縮だが、いくら文章を書く機会があっても、それ一本で食べて行けるまでには私も相当苦労している。漫画家やなせたかしが、漫画以外にもテレビや作詞の仕事も来るものはすべてやったというエピソードには、そんな苦悩が裏にはあっただろうことが想像できる。


ところで、ヒット作「アンパンマン」が、やなせたかし50歳の時に晴れて日の目を見るのであるが、この「アンパンマン」という作品には、戦争体験を持つ、やなせたかしのこんな思いが込められているのをご存じだろうか。

「人は傷つかないで正義を行うことはできない」

yanasetakashi-2.jpg会場展示風景(提供・京都国際マンガミュージアム)
アンパンマンの顔が、簡単に取り替えられるものであることは、誰もが知っていることだろう。例えバイキンマンとの闘いで傷ついても、顔を取り替えて元気を取り戻す姿は、皆が目にするシーンだ。
しかし、この、アニメでは当たり前の事情が、漫画ではいささか異なるという事実を知っている人は、稀であろうと思う。まさに、その、顔を取り替えるという行為において、やなせたかしの信条が、はっきりと現れているのである。

アンパンマンは、例えその顔が傷ついても、町のみんなに残りの顔を全部食べてもらわないと顔を新しくすることができない。これが、「アンパンマン」という漫画に、やなせたかしが込めた思いなのである。


今回の「やなせたかし展」では、順路に従って、漫画家やなせたかしの歴史が、写真などとともに紹介されていた。しかし、代表作である「アンパンマン」にも、いや、代表作だからこそなおさら、漫画家であるとともに一人の人間としてのその歴史が、色濃やかに、反映されているのが見て取れた。いつの時代も「表現者」は、無意識であっても己を作品の中に込めてしまうものなのだなあと、そんなことを考えていた。


文責:梅田たけし 編集:京都で遊ぼうART


ぜんぶ!やなせたかし!~ビールの王様・詩とメルヘン・アンパンマンetc.~」展は、12/26(日)まで開催されています。
現在90歳を超えるご高齢ながら、いつまでも「表現者」として精力的に創作活動をされているやなせたかし先生。その作品の中には、常に人生経験に裏打ちされた共通した思いがあるのでしょう。
この展覧会は、「やなせたかし」という一人の人間の人生を辿る旅、ともいえるのかもしれません。

ミュージアムではお子さんも参加できる関連イベントも色々企画されています。この週末やクリスマス時期に、親子でお出かけしてみるのも良いかもしれませんね!
(イベント情報は展覧会のご紹介ページに掲載しています)

関連リンク

ぜんぶ!やなせたかし!~ビールの王様・詩とメルヘン・アンパンマンetc.~
京都国際マンガミュージアム

梅田たけしさんのブログ「人生ほーろー記」

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