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【レポート】アート町家作品展2012(ARTS MACHIYA Exhibition'12)-アートと町家が出会う日。

2012/01/20

京都の伝統的な家「京町家」で国内第一線のアートと出会える、京都ならではの贅沢な展覧会
「アート町家作品展(ARTS MACHIYA Exhibition)2012」
1月21日(土)からの公開を前に、一足早く内覧会に行ってきました!

イベントの概要についてはこちら!

この展覧会は、現在アートシーンの第一線で活躍している京都ゆかりの作家4名が、4箇所の京町家それぞれの空間えをプロデュース・作品の展示を行うというもの。
会場となる京町家は、もともと京都の地域ベンチャー企業・株式会社 庵の「京町家ステイ」という企画で使われていて、通常は旅行者向けに、一棟貸しのゲストハウスになっています。

その京町家が、期間限定で、アーティスト・プロデュース仕様になっているというわけです。アーティストの手でしつらえられた京町家は、どんな表情を見せてくれるのでしょうか?

まずはインフォメーションセンターへ。


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会場に赴く前に、まずは総合受付(インフォメーションセンター)へ。
上の写真の右側、のれんの奥に受付があるので、そちらで参加受付をします。
すると、4つの会場の位置を示した地図がもらえます。
これが各会場での入場パス代わり。地図を頼りに、四つの会場を回りましょう。
会場はどれもインフォメーションから徒歩約5~10分ほど、さほど遠くはないので、散歩感覚で町並みを楽しみながら歩けます。(周辺にはいい感じの京都らしい建物や面白いお店もありますよ!)

まずはインフォメーション横(のれんのとなりの入り口)、「藍の町家」(筋屋町町家)があるのでそちらから行ってみます。

「藍の町家」(筋屋町町家)


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「藍の町家」は、築130年くらいの建物。もとは豆問屋さんが住んでいたそうです。
こちらを担当されたのは、日本を代表する染色作家のひとり、福本潮子さん。特に藍染で知られ、着物帯の製作・プロデュースも行っていらっしゃいます。

部屋のあちこちには福本さんが製作した藍染の作品やファブリックが。
上の写真の玄関マットも、作品のひとつです。
偶然、福本さんご本人にお会いできましたのでお話を伺ったところ、こちらは古い着物や歯切れを細く裂いて、それを織り込んで作る「裂き織」という技法で作られたそう。毛糸のようなざっくりとした、暖かな手触りが印象的でした。まさに昔ながらのエコ!

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座布団や掛け軸も作品。和室の空間にもぴったりなじんでいます。

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二階、三階にも上がれます。ちょっとモダンなこちらの部屋には、藍の絞り染めが美しいカーテンにクッション。町家なのに、まるで南国のリゾートホテルを思わせます。
となりにはベッドルームもあるのですが、そちらも見所。ぜひ天井にご注目ください☆

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玄関先。テーブルはもともとの家具のようですが、板扉を再利用したものでとてもユニーク。壁のタペストリーと座布団の藍染文様が見事に調和しています。満ち欠けする月と、水面にうつる月のようです。
全体的に女性らしい繊細さと、それでいて凛とした空気を感じるしつらえでした。

「影像の町家」(石不動之町町家)

「藍の町家」を出て、正面の道(富小路通)をまっすぐ進み、二区画目で曲がって少し歩いたところに、小さな路地があります。一見わかりにくいですが、ちゃんと「ARTS MACHIYA」の表示が入り口にされているのでご確認を。(となりに美容室があります)
そこを奥へ進んだところに、「影像の町家」があります。

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ご覧の通り二軒長屋(二棟続きの建物)。隣の家は普通に人が住んでいらっしゃるので、間違って開けないように!奥の方が会場です。
こちらは映像作家で京都造形芸大の先生でもある、大西宏志さんが担当。

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ここでの主役は「金魚」。小さな画面にゆらゆらと、きままに金魚が泳いでいます。現れたり、隠れたり。まるで足元は池のよう。コードがからまっているように見えるのは、「水草」のイメージだそうです。
写真ではうまくうつっていませんが、坪庭のほうにも作品があります。こちらは「掛け軸」のイメージでのしつらえだそう。なるほど、いわれて見るとなんだかこの部屋全体が床の間のようにも見えてきます...

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こちらは金魚が泳ぐボードの上に、石が置かれています。こ、これは!枯山水!竜安寺のお庭か!
しかし、スタッフさんがいうのにはこれ、「世界地図」だそう。金魚はちょうど日本の位置を示しています。確かに見ていると世界地図にも見えてくる...
目の前の座布団に座って見下ろすと、まるで世界を見下ろしている気分に...?

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二階から見下ろすと、おくどさん(台所)にも大きな金魚が泳いでいました!
今度はまるで金魚鉢の中にいるような気分に...
(こちらは見る角度でぜんぜん姿が違って見えるので、ぜひ別の場所からも見てみてください)

建物自体はこじんまりとしているのですが、いろいろな視点が体感できる、大きなインスタレーションの中にいるような感じがしました。
「えっここにも!?」というところにも仕掛けがされているので、隅々までじっくりと楽しんでください♪

「万象の町家」(美濃屋町町家)

次は少し歩いて木屋町方面へ。周囲には川、雰囲気のよい旅館が立ち並ぶ風情ある風景が広がっています。

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この路地(右側)を進んだ奥に入り口があります。

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入り口はこんな感じ。ちなみに手前にも建物があるのですが、そちらは大家さん(代々続く耳鼻科のお医者様でした)のお宅だそう。
なんと玄関前にあるお庭を通じて繋がっています。ここにもびっくり!

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この会場を担当したのは、陶芸家・造形作家の近藤高弘さん。陶芸の町・京都の清水出身で、陶器やガラスを用いた作品で国内外で活躍されています。
こちらのオブジェは近藤さん得意の「銀滴」という技法が使われています。
写真だと残念ながらわかりませんが、表面の銀のつぶつぶが光の反射で、本当に水滴のように輝きます。ぜひいろいろな角度から眺めてみてください。

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思わずわあ!と叫んでしまうこの風景!木屋町通りにあるだけあり、鴨川にぴったり面しています。おうちで川床ができてしまうじゃないですか。すばらしい。一度こういうところに暮らしてみたいものです...

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テーブルはよくみると、古い杉戸絵を改造したものでした。上におかれたガラスのオブジェは墨のよう。まるで絵に溶け込んでいくようです。

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二階には人の顔(これ、近藤さんご本人の顔がモデルだとか)のオブジェがずらり。それぞれ材質や技法が違っていて、同じ顔のはずなのに表情がどれも違って見えます。
こちらの作品は、昨年の東日本大震災に影響を受けて製作されたものだそう。タイトルを見て、考えさせられました...

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床の間飾り。オブジェはもちろん近藤さんの作品(椿の絵付けがされていました。これも「頭」を連想させますね)ですが、後ろの掛け軸は近藤さんではなく、陶芸の巨匠・富本憲吉の作。
近藤さんのお祖父さんはこれまた陶芸家の大家・近藤悠三。ちょうど同じくらいの世代です。
こんな風に、しつらえの一部にはアーティストさんご自身のコレクションも生かされていたりします。

「品格の町家」(和泉屋町町家)


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「万象の町家」を出て少し北に行ったところに、「品格の町家」があります。
もともとは宿屋だった場所だそう。担当は、現代日本を代表する日本画家、畠中光享さん。

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こちらも鴨川に面した場所なので、窓の向こうには鴨川の流れが楽しめます。天井は曲線美が美しい舟天井。ちょっとユニークなつくりになっています。改装はされているそうですが、そこは昔のままだそう。

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漆喰壁にかかっているのは、畠中さんがまだ20代のころの作品だそう。黒地に金泥、そして雲母で絵が描かれています。スタッフさんによるとまだ絵の具が高く数が揃えられなかったため、色数を少なくして描いた作品なのだとか。でもこのモダンなしつらえの中で見ると、とてもシックで、壁の色ともとてもよく合っています。

今回のイベントでは会場となる京町家を生かしてしつらえを考える、ということが根底にあったため、アーティストさんが会場の空間に寄る形で展示を決めているそう。
しかしこのしっくり具合、お見事です。

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仏教美術の研究者としても知られる畠中さん。そのため、仏教美術品の収集も積極的に行われており、コレクション展も開催されています。
ご自身の作品(上)とともに、階段下にはあの一休さんの筆による布袋さんの掛け軸が!!(室町時代の作品)こんな貴重な作品を間近に鑑賞できるとは...
ほかにも、ご自身が旅先のヨーロッパで収集されたアンティークなどのコレクションも部屋のあちこちにちりばめられています。

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二階にあがると、目の前には東山連峰が望めます。大文字の送り火も見えるかも...?
片側は和のしつらえ(チベット仏教のターラ菩薩が描かれています。仏壇のイメージですね)、片側はまるでリゾート...ちょっと面白いコラボレーションになっています。畳の香りもよい感じ。

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もう反対側の部屋は、大きな金屏風が。
金は一見派手なイメージがありますが、和の空間にはよく合いますね。
この部屋にもコレクション品が隠れています。探してみては?


のんびり見て回って、大体2時間くらいでしょうか。
この周り順はあくまで一例。パスは共通なので、どの順番で会場に行っても大丈夫です。
途中、近くのカフェで一息いれたり、ちょっと移動して買い物したり...もOKです。
ただし、パスは一日しか使えないので(翌日以降は×)会場のオープン時間には注意してくださいね。

21日、22日の土日には作家さんのギャラリートークも開催されます。
※申し込みが必要ですので、詳細は実行委員会までお問い合わせください。

通常は18時までですが、25日(水)には、20時までオープンしているそうなので、
お仕事帰りにでも立ち寄ってみてはいかがでしょうか。

アート町家作品展2012(ARTS MACHIYA Exhibition)

2012年1月21日(土)~27日(金) 11:00~18:00(受付は17:00まで)
※ 1/25(水)のみ11:00~20:00(受付は19:00まで)

イベントの概要についてはこちら!

展示会場に泊まれます。

ARTSMACHIYA2012 (54).jpgもともとはゲストハウスとして使われている今回ご紹介した4つの京町家。
展覧会の開催後、1月28日(土)~3月4日(日)の期間限定で、アーティストさんのしつらえた空間で宿泊できるプランが企画されています。
通常とは違うしつらえで、今だけの京町家が体験できる機会です。
また、期間中には担当したアーティストさんと夕食をともにしたり、一緒に工房を見学したりできる交流特別プランも用意されているそう。
「ちょっと、京町家で過ごしてみたいな...」と思った方は、一泊から利用できるので問い合わせてみてはいかがでしょう?

もちろん、その期間以外にも宿泊利用が可能です。
町家の改装などを担当した建築担当のスタッフさんにお話を伺ったところ、
「やはり、町家は人が暮らすもの。人がそこで時間を過ごしてこそ生きてくるものだと思います。見るだけではなく、ぜひ「滞在」もしてみてください」とのこと。
ちょっと、今度の京都旅には取り入れてみては?

詳細・お問い合わせ

ARTS MACHIYA2012 実行委員会事務局(株式会社 庵 Iori Co.)
TEL:075-352-0211
MAIL:info@kyoto-machiya.com
URL:http://art-kyotomachiya.com/
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