【内覧会レポート】世界を変える美しい本 インド・タラブックスの挑戦(細見美術館)
6月24日に、細見美術館で開催の「世界を変える美しい本 インド・タラブックスの挑戦」内覧会に参加してきました!
タラブックスは、南インドのチェンナイを拠点に活動している出版社。中でも少数民族の芸術(民俗芸術)とコラボレーションしたハンドメイドの絵本やビジュアルブックで世界的に高い評価を受けています。展覧会ではこれまでの代表作から選んだ本や原画など約300点が展示されます(なんと!全て撮影OK!!)
最初の第一展示室ではインド中央部に暮らすゴンド族のアーティストと制作した絵本「夜の木」が特集されています。なんと全てシルクスクリーンの手刷!日本を含め8か国語で出版されています(表紙もすべて違う木)
木はゴンド族を象徴するモチーフ。例えば、枝葉から楽器を作る木は「うたの木」など、全ての木にそれぞれ違う物語があるのだそう。絵本を作る際にも先に絵を描いてもらい、その木のお話を聞いたうえで本の形にしていったそうです。
内覧会で作品解説をしてくださったタラブックス編集長のギータさん(右)は、「彼ら(少数民族)は文字を書けない人も多いが、その内に広い世界や文化を持っていて、それを絵として表現している。彼らとの出会いで文字を書かぬ人々に伝わる豊かな文化がたくさんあること、自分たちの知らない世界がたくさん広がっていることを知ることができました。アートはその人の出自や環境に関わらず生み出されるものなんです」と話してくださいました。
こちらはインドの有名な物語「ラーマーヤナ」を絵本化した際の挿絵。本来の主人公ラーマではなく敢えて妻のシータ視点の語りに合わせて制作したそう。絵本の挿絵にするにあたり、絵巻では普段使わないズームインなどの表現も取り入れられています。
逆にポトゥアの表現を活かして作られたのが「津波」の絵本。人々が流される様子を表現しようと、絵巻のように広げていけるような形になっています。(このポトゥアの人たち、伝承や神話から海外ニュースまで絵巻にしてしまう人たち!ユニークな作品も展示されています)
第二展示室には他にも様々な地方の民族による作品が並んでいます。口述伝承の物語には吟遊詩人が音楽に合わせて朗読するCDをつける、普段は家の壁をキャンバスに大きな絵を描いている民族は原画も壁の大きさに合わせた大きな紙に描いてもらう...など、各民族の表現の方法や文化を尊重した形で本が作られていることがわかります。
また、各民族が自分達の物語を描くだけでなく、アメリカで伝わる物語をインドの民俗画家が絵を描いたり、インドの話をフランス人のイラストレーターが絵にしたり、と様々な国のアーティストが文化や国境を越えたコラボレーションをしている点もユニークです。(日本人の作家さんも参加されています!)
第三室でも、様々なかたちの本が紹介されています。お話に合った本の形、開き方を考えるのも絵本作りにおいて大切な要素。お話の意味や展開の仕方に合わせて、絵巻や蛇腹折など本自体の形・表現もしっかり考えて作られています。
こちらは地母神の物語を描いた布製の絵本。女神を敬わなかったために衰退した村が、神を描いた布を捧げることで救われるというお話で、実際にその奉納布を現在まで作り続けている職人さんと協力して制作したのだそう。奉納布に込められた物語を本にするということで、奉納布作りと同じ、手づくりの自然染料を使った伝統的な木版捺染技法が使われ、全ページが手刷り。手間も人手もかかった一大プロジェクトだったそうです。
今回の展覧会に際して、ギータさんは「タラブックスとしても京都という歴史ある街で展覧会ができることはとてもスペシャルなことです。京都には神社や寺に沢山の神様仏様が祀られていますが、そんな場所とインドが繋がりを持てることを嬉しく思います」とお話しされていました。
本という形のなかに、国境も文化も民族も越えた沢山の人たちの縁と営みが詰まっている。そんな感覚が伝わってくる展覧会でした。
展示の途中ではタラブックス工房での絵本製作の流れも映像などで紹介されています。この工房はフェアトレードで設立されたもので、常時2、30人ほどの職人さんが作業を行っているそうです。作っている様子もとても面白いので、ぜひ足を止めて見てみてください!
また、ショップでは実際にタラブックスの絵本を購入できるほか、挿絵の柄を使ったグッズも販売されています。こちらも要チェックです!
また、お茶室では特別コラボ企画でチャイやラッシーも飲めちゃいますよ!