【レポ】浜中悠樹 写真展 「UTSUROI」
五条のGallery Mainにて開催の浜中悠樹 写真展 「UTSUROI」を観覧してきました。
展示室の中に入るとそこには掛軸のようにしつらえられた作品がずらり。一見すると写真展というより日本画の展覧会に来たような印象を受けます。
作品は全て伊勢和紙に刷られており、和紙ならではのザラっとした質感に、シルエット風に撮影された植物の姿が相まって、まるで絵画のような雰囲気を生み出しています。実際、遠くから見ると繊細なタッチの日本画に、近づいてみてやっと写真だ!とわかるほど。(壁に描いた絵のようにも見えますね)
額装したものも、写真というよりは版画のような感じを受けます。
出展作家の浜中さんによれば、「元々西洋生まれの表現ツールである写真を、日本的に表現してみたかった」とのこと。そのために、日本画で一般的なモチーフである植物を被写体に選び、写真の特徴である立体感や奥行きを極力封じて敢えて平面的な表現を目指したそうです。
曇天の日に撮影することで背景をシンプルな白一色にするところは、日本画でいう「間」の表現を意識。また、花にだけピントを合わせ、背景の枝木をぼかすことで水墨画のような滲みのような色合いを生み出すところはまさに絵画の様相です。
写真は一瞬をリアルに切り取るものというイメージがありましたが、このようなこともできるのだ、と写真の表現の幅広さを感じることができました。
ちなみに、被写体となっている植物は、下鴨神社や京都市立植物園など、京都市内の各所、街中にあるものだそう。つまり、どれも人が剪定などの手入れをしている、人が育てている植物たちです。
「以前は、人の手が入っていない状態こそが自然の美しさと思っていました。でもいざ撮り始めると、京都の街中の植物ばかり撮っていた。人の手が適度に入れられた植物に、美しさや安心感を見意識に見出していたのだと思います。そこに、僕が表現したい"人と自然の共存の美"があった」と浜中さん。
手つかずの自然がもつ、どこか人を寄せ付けない美しさとは違う、人が手入れした自然がもつ日常の中にするりと入り込むような、親しみのある美しさ。作品一枚一枚にそんな温かさを感じられた気がしました。
展覧会は7月15日(月)まで。
詳細:http://www.kyotodeasobo.com/art/search/gallery/gallery-main/UTSUROI