【内覧会レポート】ドレス・コード?――着る人たちのゲーム(京都国立近代美術館)
8月9日(金)からスタートの「ドレス・コード?――着る人たちのゲーム」(京都国立近代美術館)内覧会に行ってきました!
この展覧会は、京都国立近代美術館と、京都服飾文化研究財団(KCI)による共同企画。5年に1度、毎回テーマを変えてファッションに関する様々な展示を行っています。
今年はちょうど世界博物館会議(ICOM)京都大会の関連で服飾に関する研究部会(コスチューム部会)が行われるため、世界に向けての発信も視野に入れられているそう(チラシも最初から日英版が!)
最近はハイブランドが自ら企画して美術館で展覧会を開催することも増えており、ファッション展が一種のメディアとなっている流れもあります。
これに対し「ドレス・コード?」展はそれとは異なり、批評的視点を持ったファッション展として、「着る」という行為そのものを、KCIのコレクションを中心にどのように表現できるか、という考えに基づき企画したとのこと。
ファッションの他、現代アート、写真、映像、漫画やアニメ、SNS...といった他の分野との関連性にも大きく視野を広げた内容となっています。
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展覧会は0~12、計13のセクションで成り立っています。
漫画「イノサン Rouge」とのコラボ展示コーナー。実際にKCIが所蔵する漫画と同時代(フランス革命時頃)の衣装と、それをキャラクターに着せた描きおろしイラストが並びます。とにかく細工の細かさは必見!(コラボグッズもありますよ)
こちらは1900年代から現代までのスーツをずらっと並べた一角。年代ごとのスタイルの違いを見比べて楽しめます。
「スーツ」「ミリタリー」「タータンチェック」といったようにアイテムごとにまとめられた形での展示が多く見られます。これはSNSで使う"ハッシュタグ"をイメージしたそう。
ファッションの普及に今やSNSは欠かせないもの。一般の人が自らファッションをカテゴライズし発信していく感覚を取り入れたかったとか。
例えばスーツは、本来は組織に属する人の制服的位置づけであったり、フォーマルさをイメージさせるものでした、それが時代を経るとその「スーツはフォーマルなもの」と言った感覚、いわばスーツのもつドレス・コードから逸脱したデザインや色柄のものが生まれていくことがわかります。
元は炭鉱の労働服として生まれたデニムが、ジェームス・ディーンが映画で着用したことでお洒落なものとして認識・一般化された例が知られますが、時代を経て当初とは違う昨日や意味に変化していくというファッションの特徴の一つを感じることができました。
中にはセクションの表示板に飾られているものも!
こちらはアート作品とコラボレーションしたもののコーナー。「描かれているものが何か」をわかるとより楽しいものです。
手掛ける人が変われば同じシャネルスーツでもその印象は大違い。また、シャネル自身も女性の社会進出のアイコンとなり、シャネルスーツもその象徴になりました、まるで時代を映す鏡のようです。
こちらは街行く人のファッションを撮影したストリートスナップを、色や共通したものなどで分けた《フォト・ノート》。これも"まとめてみると、バラバラではわからなかった色々なものが見えてくる"作品ですね。フレームごとに何で分けたものなのか考えながら見るとより楽しめそうです。
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普段は私たちが当たり前に享受している「着る」ということ。あまり日常生活の上では気にしていないものですが、展覧会を通して様々な角度や分野・文脈で見ることで、そこにはさまざまな意味が込められている。時代性、性別、生き方、価値観、人となり。ファッションというものが内包するものの大きさ、「着る」という行為とは何か?を改めて考えさせられる展示内容でした。
日々何気なく選んでいる自分の服を見る目も、少し変わってきそうな予感がします。
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