【レポ】京都市京セラ美術館リニューアル記念展(1)「京都の美術250年の夢」 最初の一歩:コレクションの原点
ついに3年の休館期間を終え、京都市京セラ美術館がリニューアルオープン!
そのオープン記念展覧会を内覧会で一足先に拝見してきました!
みどころや、実際の展覧会の様子などを交えてご紹介します!
※京都市京セラ美術館の入館は、当面の間事前予約制(定員有)となっています。予約方法・詳細は京都市京セラ美術館のWebサイトをご確認ください。
■ 過去のレポートはこちら!
【レポ】《1》内覧会:京都市京セラ美術館 リニューアル!見どころスポットはここ!
【レポ】《2》内覧会:京都市京セラ美術館 リニューアル!見どころスポットはここ!
■ 工事中の様子やインタビューなどの特集はこちら!
京都MUSEUM紀行。Special【京都市美術館 リニューアル特集】
入口には既にチケット販売スペースができていました。本館・新館どこの展示でもこちらで購入できて便利です。新館側にもチケット販売所があるので、入場したところの近くを利用すれば大丈夫です。
中央ホールに入って右側がコレクションルーム(常設展示室)、左側が企画展示室の入口です。
真直ぐ庭園側に抜けると新館へ。それぞれの入口に開催中の展覧会バナーが掲示されているのでわかりやすいです。
2階の展示へもホール内の階段を上がれば直接向かえます。
まずは企画展示室、開館記念展として開催されるシリーズ特別展「京都の美術250年の夢」、その特別企画にあたる「最初の一歩:コレクションの原点」から!
※この展覧会は未公開(中止)となっておりましたが、会期を変更の上6月2日より再展示となりました。
※レポートの内容は3月に開催されたプレス向け内覧会時のものとなっています。一部展示品の配置が展示再開後と異なる場合がございます。予めご了承ください。
「京都の美術250年の夢」
最初の一歩:コレクションの原点
この展覧会は、京都市美術館の開館3年目(1935)に行われた、初めてのコレクション展「本館所蔵品陳列」を再現したもの。まさに最初の一歩、美術館が最初にコレクションした作品をずらりと並べた内容になっています。
展示作品は日本画、洋画、工芸、彫刻など多岐にわたり、バランスの良い構成。
中にはこれまでなかなかお目にかかる機会が少なかった作品も...!
展示会場では、学芸課長の山田諭さんによる解説が。
現在では、美術館の収蔵品は基本的に学芸員さんが選定するものですが、京都市美術館の開館当初の頃は、まだ「学芸員」という仕事が存在していませんでした。代わりを担っていたのは、京都で既に地位を築いていた日本画家や工芸家などの美術家たち。自ら作品を作る傍ら公募展の審査員も務めていた彼らが、美術館に展示する作品や購入する作品を決めていたのです。
その"最初の一歩"となったのが、京都市美術館の開館翌年の1934年に行われた開館記念展「大礼記念京都美術館展」。この展覧会は次代を担う新たな美術を奨励することを目的としており、若手作家の優秀な作品を積極的に購入するという方針があったそうです。そして、この展覧会の出品作品から美術館買上げとなったものが、京都市美術館最初のコレクションの一部となっています。
殆どの作品は展覧会への出品のために制作されたいわば"新作"で、まだ評価が定まっていない若手や当時画壇デビュー間もない作家の作品も含まれているそうです。
京都市美術館は、当時の"現代美術館"のような位置づけだったといえるかもしれません。
また、現代では少々評価に困るような作品もあるそうで、現代と当時の流行や、評価の基準・方針の違いなどを垣間見ることができます。
工芸品にも、大礼記念展に合わせて制作・出品された1934年作のものが多く見られます。これらも箱には当時の管理用の作品番号がそのまま残されています。
こちらは漆芸時計。当時の流行だった流線型のデザインが取り入れられたモダンなフォルムが印象的です。
こちらは清水六兵衛(六代)の作。丸い円形の紋自体は伝統的なものですが、その中にはアール・ヌーヴォーやアール・デコを思わせる洋風な花柄が描かれています。こちらも当時の流行を感じさせます。
京都市美術館の開館当時、工芸家たちはそれまでの名をあまり出さない職人スタイルから脱却し、展覧会で人に見せることを意識した装飾性を増した美術的な作品を作る傾向になっていたそうです。これらの作品はその表れともいえます。
また、作品は京都だけでなく全国各地から集められていました。彫刻分野では、遠方の作家は輸送の関係で小型作品を出品していたようです。背景を知ると、作品を見るのがより楽しくなりますね。
作品以外にも、昔の図録なども展示されています。
表紙のデザインが凝ったものもあり、見ていて楽しくなります。展示中の作品やお馴染みの有名作品のポストカードなどもあります。
美術館のコレクションには、購入以外にも、作家が自ら作品を美術館に寄贈する例もあったそうです。特に当時の京都の画家たちにとって、自らの作品を美術館に寄贈する行為は、一種の習わし、ステータスのようになっていたとか。京都市美術館という存在がいかに作家たちと密接に結びついたものであったかを伺わせます。
作家寄贈によるコレクション作品のひとつが、写真左の菊池契月「散策」です。
京都市美術館で1934年に開催された第15回帝展のために制作され、特選を受賞した作品でした。契月は美術館に展示した作品をそのまま美術館に収めることを選んだのです。
髪を短くした女の子が流行りのデザインの着物姿で洋犬と散歩をする、なんともモダンな一枚。現在では京都市美術館を代表するコレクションとなっています。
"最初のコレクション展"を通して、今までと同時にこれからの京都市美術館も垣間見ることのできる、シリーズ展のプロローグに相応しい展示内容でした。
※レポートの内容は3月のプレス向け内覧会時のもののため、一部作品の配置が再展示後と異なっている場合がございます。