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【レポ】時間~TIME BOWIE×KYOTO×SUKITA 鋤田正義写真展(美術館「えき」KYOTO)

2021/04/09

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©Sukita

4/3-5/5に美術館「えき」KYOTOで開催の「鋤田正義写真展」。
内覧に参加いたしました。展示の様子と見どころをご紹介します。


今回の展覧会の主役は、ミュージシャンや俳優などのポートレート作品で知られる写真家・鋤田正義さんと、世界的ロック・アーティストで俳優としても活躍したデヴィッド・ボウイ。二人は1972年に知人の紹介でボウイの母国・イギリスで出会い、翌年にボウイは鋤田さんを自身のワールド・ツアーにカメラマンとして同行させ、以来度々仕事を共にするなど親交を深めます。写真を通した二人の関係は2016年にボウイが世を去るまで続きました。

今回の展覧会の柱となるのは、そんな二人がともに過ごした1980年3月29日の京都での一日です。
ちょうど来日中で京都に滞在していたボウイは、撮影に来ないかと鋤田さんを京都に招きました。鋤田さんがその日に撮影したボウイの姿は、まるで以前から京都の住人であったかのように街に溶け込んでいます。

それから40年以上の時が経ち、ボウイはこの世を去りました。そして鋤田さんは現代の京都を訪れ、ボウイと過ごした京都での一日をたどるようにその風景を撮影しました。この展覧会では1980年と現代、ふたつの時間の京都が交錯するように展示され、鋤田さんとボウイの時空を超えた旅へと見る人を誘います。

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©Sukita

展覧会の構成は、ボウイのイメージカラーであるレッドと、黒、黄色の壁が迷路のように入り組み、その左右や突き当りに写真が配されています。京都の路地裏をイメージした空間構成だそうで、壁の風合いも町家の土壁をイメージされているそうです。

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©Sukita

展覧会に際して、鋤田正義さん(写真左)とプロデューサー・立川直樹さん(写真右)の挨拶も行われました。以前からボウイとの思い出の地である京都での写真展を考えていた鋤田さんに、新たに現在の京都を撮るアイディアを立川さんがもちかけたことから、今回の企画が生まれたそう。二人は複数回にわたり京都を訪れ、鋤田さんの記憶や1980年に撮影された写真を手掛かりにボウイが訪れた場所をたどり、その現在の姿を撮影しました。

中にはなかなかどこで撮影されたものなのかわからず、調査に大変苦労されたところもあったとか。

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©Sukita

例えば、この写真の路地。路地といっても京都には無数にあるため、全くどこかわからずにいたところ、展覧会の直前になって背景に写り込んだ丸い窓から祇園のとある路地と判明したため、改めて撮影することができたのだそうです。

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©Sukita

また、ボウイと出会った人の縁を感じる出会いもありました。この老舗の画材屋さんは、店を訪れたボウイを先代であるお父様が応対した際のことを、現在のご主人が覚えておられたそう。こちらは店先に佇むボウイの写真と対になるように展示された同じ場所に座るご主人の写真ですが、背景の棚の配置は40年の時を経ても変わっていません。時代を越えての「再会」のようにも感じます。

1980年の写真はモノクロームを主体に撮影していたため、かえって現在のカラー写真と良い対比効果になっていると鋤田さんは仰っていました。白黒フィルムの風合いに合わせるため、新たに撮影したカラー写真は色合いを鮮やかにすることでフィルムに寄せた雰囲気を出したそうです。

一方で、時代を経ての変化を感じる部分もありました。ボウイの背景に見える阪急電車の駅構内の様子は、地下道の風景は今と変わらないように見えますが、電車の車体は明らかに昔のもの。電車の車内の広告や周囲の乗客の装いにも時代を感じます。ボウイの横に偶然写り込んでいた小さな子供の姿に気づいた鋤田さんは、「この子も、もう今は4,50歳くらいになっているんでしょうね」と仰っていました。

当時の子どもが京都を訪れたボウイと同じ年ごろの大人になっている。それだけの時間が写真と私たちの間にはあるのに、写真を見ているとそれを忘れてしまいそうになります。「京都は変わらないでいてほしいけれど、でもやっぱり変わっているところもあるんですね」という鋤田さんの言葉が印象的でした。

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©Sukita

また、過去に訪れた場所以外にも、ボウイがいたら訪れたであろう、彼が好きそうな場所も今回新たに訪れ撮影したそうです。緑のコケが美しい祇王寺、朱の色が生える清水寺といった場所の風景は、ボウイが好きだったものの一遍を、時を越えて、写真を通して今の私たちに感じさせてくれます。
庭の写真は、鮮やかな紅葉と緑の苔のという色合いがどこか、ボウイが着ている衣装にも近いものに感じます。

こうして写真を見ていると、京都の街のどこかにボウイが暮らしているような、ひょっこりと現れそうな、一緒に街を歩いているような、そんな感覚になってきます。何より、どの写真のボウイも自然体で、とても楽しそうなのです。

写真は時間や記憶、思い出をそこに留めるものです。そこには、人の「存在」そのものも含まれているのかもしれません。もうこの世にボウイはいないけれど、写真を通してここにいる。一緒に歩いている、同じ街の風景を見ている。40年という時間を越えて、確かに「そこにいる」、そんな、人の息吹を感じる展覧会でした。

デヴィッド・ボウイを知っている人も、知らない人も、一緒に時間を越えた「京都の旅」を写真を通じて楽しんでみてはいかがでしょうか?


時間~TIME BOWIE×KYOTO×SUKITA 鋤田正義写真展(~2021/5/5|美術館「えき」KYOTO)

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