【レビュー】Kyoto Crafts Exhibition DIALOGUE2024(ホテルカンラ京都)
烏丸五条のホテルカンラ京都を会場に開催の Kyoto Crafts Exhibition DIALOGUE 2024。こちらのBUYERS DAY(招待者限定)日の3/7に取材にお伺いさせていただきました。どんなイベントなのか、その様子をご紹介します!
※この記事は2024/3/7(木)のBUYERS DAY(招待者限定/プレス・バイヤー向け)時の取材内容に基づきます。来場日・時間によっては内容が異なる場合がございます。予めご了承ください。
Kyoto Crafts Exhibition DIALOGUE とは
「DIALOGUE」は、2018年にスタートした伝統工芸の技を活かした作品の展示や手仕事の作り手を紹介するイベント。ホテルの客室を展示ブースとして使用し、各部屋に全国から集まった工芸品を扱うメーカーやブランドが自ら商品を展示・紹介、販売を行います。
今年は京都をはじめ全国から、陶芸、木工、染織、漆芸、金工の他、伝統工芸の素材を用いたアパレルなど、さまざまなプロダクトを扱う66のブランドが集結しています!
...とてもすべてはご紹介できそうにないので、このレビューでは主に京都のブランド、メーカーからピックアップしてご紹介します。
「DIALOGUE」の特徴は、ホテルのフロアを展示室にしているところ。つまり人が過ごす「部屋」「住居」のような間取り・設えのなかで展示が行われます。その分、展示ブランドごとに工夫をこらした見せ方が楽しめるようになっています。内装のように展示していたり、現代アートのオブジェクトのような組合せ方をしていたり、ベッドスペースをそのまま使ったり...この個性を愉しむのも見どころ。
こちらは京焼の窯元・洸泉窯さんの展示。洸泉窯さんは、中国伝来の色鮮やかな交趾焼の技法を受け継ぐ窯元さん。今回はその特徴の一つである色鮮やかな発色を見てもらいたいと、カラフルな一輪挿しやミニプレートをテーブルに組み合わせて展示されています。一種の色見本も兼ねています、とのこと。テーブルの上に置いているので、お皿がランチョンマットの様な雰囲気に。
また、今回は1ブランド単独での展示の他、他のブランドと併せての展示、グループ展示になっているところも多く、その分いろいろな「コラボレーション」が楽しめるところもポイントです。
こちらは京都の陶芸家さん5組によるグループ「TASTES OF KOGEI」の展示風景。
異なる作家さんの作品をベッドやバスルームなど各所に分けて展示しています。全く方向性の違う作品を同時に見比べられる、合同展風の仕様です。(ちなみに写真は本来ベッドのある所を展示スペースとして利用しています)
ちなみに、展示室の中にはこんなグループ名を刻印した棒状のものが置かれていました。これは実際に作品制作に使っているヘラを利用して作ったのだそう!随所にちょっとした遊び心があり、部屋の隅々まで見逃せません。
京町家の守り神としてお馴染み「鐘馗さん」と、カラフルな椿模様の千代紙を使った屏風の組合せは陶芸家の吉田瑞希さんのブランド「Zui」と、大阪の友禅千代紙メーカーのブランド「REKAO」の展示。使用する部屋が同じということで生まれたコラボレーションです。
吉田さんは京町家の飾り瓦として使われる伝統的な守り神"鐘馗さん"を、日々の暮らしに取り入れやすいものにプロダクト化した作品を制作しています。真面目な顔からゆるふわ~とした顔、ひょうきんなポーズなものまでユニーク!これはおうちにお迎えしたくなっちゃいますね。後ろはREKAOとイラストレーターの羽野瀬里さんのブランド「CruXpark」とのコラボレーション作品の屏風。
こちらは普段舞台衣装を専門に制作している山元染工場さんの展示。ポスターのように飾られた友禅の型紙が素敵です。文字の書かれた型紙は「襟文字」。所属している店や組、名前を袢纏や法被の襟部分に染めるもので、沢山の人がいる舞台上ではこれで役柄がすぐにわかるようにしていたそう。「ものづくり」の現場発ならではの展示です。
今回は舞台衣装の縞柄を手ぬぐいに染めたものと、昔の型紙を再利用しカラフルな色で染め重ねた生地をブランド「ケイコロール」の作品を展示販売されています。「英子ロール」の展示ブースは画家のアトリエのような雰囲気!窓の外の京都タワーが見える風景もなんだか絵になります。
こちらは緞帳を中心に手掛けている西陣織メーカー、清原織物さんの展示。これはお風呂場を利用したもので、風呂蓋の上に並べられているのは、よく日本庭園などで見かける「止め石」「関守石」(これ以上は立ち入り禁止を示す石の目印)をアレンジしたもの。石を結ぶ紐は緞帳で使う金糸や絹糸を撚り合わせて作られています!緞帳づくりの際に出る端材を再利用しているそうです。これなら外に置くのも良いけれど、部屋の中でインテリアを兼ねて使えそう。他にも、端材を利用した小物類や、緞帳の織技を活かしたラグマットなども扱われていました。
中には職人実演をして下さっているところも!
主にお寺や神社などの錺金具を制作されている株式会社竹内さんのブランド「錺之-KAZARINO-」では、実際に職人の方が来場されて、錺作りの様子を見せて下さっていました。この時は框(かまち)金具に鏨で魚々子(細かい粒粒模様)を打ち込む実演中。手元の動きも間近で見られます。(ご厚意で体験もさせていただいたのですが、簡単なようできれいに粒をそろえて打ち込むのは大変難しかったです...職人さんすごい)
「DIALOGUE」では1階エントランス前でも日替わりで2名の職人さんが制作実演を行っており、実際にものづくりを間近に感じられますよ。
また、京都以外のメーカー・ブランドとしては今回、石川県輪島市の「輪島キリモト」さんが参加されていらっしゃいました。「輪島キリモト」は200年以上の歴史を持つ輪島塗メーカー。食器はもちろんのこと、家具や建物内装も輪島塗の技を活かされてきました。
2024年元日に起きた能登半島地震では類に及ばず、代表の桐本さんをはじめ職人さんや社員さんは全員無事だったものの自宅や工房に大きな被害を受けられたといいます。
今回の展示品はそんな中でも被害を免れた作品たちが並びます。
美しい木目を活かしたもの、変わり塗りで独特の表情をつけたもの、まるで漆器に見えない金属や陶器の様な重厚感あるもの(でも持ってみると軽い!)など...どれも職人の丁寧な手仕事が感じられるものばかり。
対応してくださった桐本さんは「大変な状況ではあるけど、下を向いてばかりでは前に進めない。良いものを創る気持ちを絶やさずに、顔を上げて進んでいきたい」とお話してくださいました。
今回の「DIALOGUE」では、能登半島地震への寄付にもなる輪島塗商品の販売や、寄付金の募集も行われています。京都もしかりですが、輪島も伝統工芸が支えてきた街。だからこそ職人さんを応援することは地域を応援することに繋がります。この機会に、職人さんへの思いのこもった品を手に取ってみては。
他のブースもどれも魅力的!3時間ほど時間をとりましたがとてもまわり切れませんでした...
3/8(金)・9(土)は一般参加日(MARKET DAY)で、一般観覧者も展示品の購入が可能です。
工芸の「今」を担う作り手の方と直接交流して、作品への思いやブランドのコンセプトなども伺える貴重な機会。お時間のある方は足を運んでみてください!
▽ 詳細はこちら
Kyoto Crafts Exhibition DIALOGUE 2024(ホテルカンラ京都・2024/3/6~3/9)