Report&Reviewレポート・レビュー

【連載コラム】白沙村荘の庭から|第十八回「橋本関雪のマスターピースについて」

2020/08/25

京都には大小さまざまなミュージアムがありますが、 中には嘗て作家自身が暮らした家や、現在も人が暮らす住居を公開している施設もあります。
「白沙村荘の庭から」は、そんなミュージアムのひとつ、白沙村荘 橋本関雪記念館の副館長・橋本眞次様に、ミュージアムの日々を徒然と綴っていただくコラムです。


橋本関雪という人物は、日本画家として知られています。
画家ということは、作品もある程度知られていなければいけないのですが、日本が近代に置かれていた状況の影響もあり、現代では橋本関雪のみならず他の作家も人物像も、作品もあまり知られていない事が多く見られます。

当時の大きな展覧会に出品された、いわゆるマスターピースについては所在がはっきりとしているべきなのですが、それもまた近年までは幾つか不明のままであったものもあります。

hakusasonso_18_04a.jpg hakusasonso_18_04b.jpg
橋本関雪「後醍醐帝」福田美術館

その中で、関雪にとって特に重要であった作品が近年、嵐山に開館した福田美術館の開館記念展で公開されました。作品のタイトルは「後醍醐帝」(1901)、橋本関雪の系譜の祖先にあたるとされる、橋本八郎正員という人物は楠木正成公にお仕えし、湊川で討死をしたと「太平記」で記されています。
この作品には、後醍醐天皇と楠木一門が描かれていますが、その橋本八郎正員も無論描かれているとされており、そういう意味では祖先を描いた重要な位置付けの作品と言えるのです。
福田美術館には、他に行方を捜していた「五花斑馬(1923)※収蔵名は群馬」や「睡猿(1935)」などの橋本関雪作品が多く収蔵され、定期的に展示公開されています。

hakusasonso_18_02b.jpg hakusasonso_18_02a.jpg
橋本関雪「琵琶行」 橋本関雪記念館
hakusasonso_18_03b.jpg hakusasonso_18_03a.jpg
橋本関雪「木蘭」橋本関雪記念館

その傍らで白沙村荘にも、「木蘭(1918)」や「琵琶行(1910)」といったマスターピースが新規収蔵されました。「琵琶行」は、東京時代最後の作品で関雪の出世作とされる作品。「木蘭」は、白沙村荘で描かれた最初の大作とされる作品で、この夏に岡崎の京都市京セラ美術館の開館記念展で展示される予定でしたが、COVID-19の影響により展示が見送られてしまいました。
やむなく、白沙村荘の秋季展で展示をする事になりましたので、よろしければご高覧下さい。

■ 白沙村荘秋季展
2020年10月24日(土)より12月6日(日)まで

まだ幾つかのマスターピースは、今もなお所在が判然としないままです。
今後、それらを含む見たこともない関雪の作品が、どんどん表舞台に現れるのではないかと今から楽しみにしています。


白沙村荘 橋本関雪記念館についてはこちら

「白沙村荘の庭から」バックナンバー(~2014)はこちら

最近の記事