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【レポ】KYOTOGRAPHIE2020京都国際写真祭 (京都府庁旧本館/出町枡形商店街)

2020/10/16

毎年京都市内各所の様々な会場で国際的に活躍する気鋭のアーティストによる作品や、重要作家の貴重な写真コレクションを展示している「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」。
通常は春、ゴールデンウイークに合わせて開催されていますが、2020年は新型コロナウイルス感染症拡大の影響も有り、秋に延期開催となりました。

普段とは色々と違う状況に置かれながらも、その展示内容は魅力的なものばかり!
今回は全14会場のうち、個人的に行ける範囲で会期中に伺った会場の展示内容を少しご紹介します。実際に足を運ばれた方もそうでない方も、少しでも雰囲気を味わって頂ければ幸いです。

KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭2020 についてはこちら!

※メインプログラムの展示の開催は10/18までですが、アソシエイテッドプログラムなど一部は会期を過ぎても開催されている場合があります。詳細はイベントページ、公式Webサイトをご確認ください。

京都府庁旧本館

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京都府庁旧本館では、旧正庁の部屋でピエール=エリィ・ド・ピブラック 、旧議場で オマー・ヴィクター・ディオプ 、2人の作家の展覧会が開催されました。

ピエール=エリィ・ド・ピブラック
「In Situ」

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ピエール=エリィ・ド・ピブラックはフランスの写真家。今回展示されたのは、パリのオペラ座(ガルニエ宮)の舞台裏に密着して撮影した2つのシリーズ作品です。

展覧会タイトルにもなっている「In Situ」はバックステージやリハーサル中のダンサーたちの姿を、無音カメラを駆使して躍動感や情感たっぷりに撮影したもの。「Catharsis」はオペラ座のあちこちを舞台にダンサーたちを配置した、まるで絵画のような作風。全く異なるアプローチのシリーズを一度に楽しめます。

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「In Situ」は普段は見られない、舞台の裏側の生々しい息遣いが聞こえてくるような作品や、ダンサーたちの動きをそのまま一枚の平面に封じたような作品が印象深いシリーズでした。

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対する「Catharsis」は屋根の上や客席、階段が印象的な広間などオペラ座の特徴的な場所にダンサーが配され、まるでオペラ座というものの一部として溶け込んでいるようにも感じました。
静と動、表と裏、光と影。ふたつのオペラ座の姿を同時に見ているような感覚になります。

京都府庁旧本館の洋館らしいしつらえも、現地のオペラ座の雰囲気にどこか近いものを感じさせ、一層没入感がありました。

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そして真っ暗な部屋の中に作品が展示されたスペースがあり、まるで実際に舞台を客席から見ているかのような演出になっていました。こちらは写真ではうまく伝えきれないので、足を運べる方はぜひ現地で見てほしいと思います。

ピエール=エリィ・ド・ピブラック「In Situ」

オマー・ヴィクター・ ディオプ
「Diaspora」

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オマー・ヴィクター・ディオプはセネガル出身のフォトグラファー。京都府庁旧本館では彼の代表作シリーズ「Diaspora」を展示しています。

作品は、荘厳な旧議場の部屋の中に、まるで歴代議長の肖像画のように配置されていました。カラフルな色合いが、会場に良く映えます!

このシリーズは欧米で活躍したアフリカ出身の歴史上の偉人、欧州リーグでプレーするアフリカ出身のサッカー選手、そして当時欧州で活動していたディオプ自らを重ねたセルフポートレートのシリーズ作品。被写体になっているのは全て作者であるディオプ自身です。

モデルになっている人物は、主に15~19世紀に活躍した、アフリカでは有名な偉人達です。彼らの多くは、アフリカから奴隷として渡った者、もしくはその末裔にあたり、人種差別や逆境を経験しながらも、貴族の従者から頭角を現し欧州社会で高い評価を得たり、国を導く偉大な政治家となったり、はたまた独立運動に身を投じる革命の志士となったりと、それぞれに功績・偉業を成し遂げたといいます。


異国の地にありながら活躍した彼らの姿は、現在欧州のサッカーリーグで活躍している多くのアフリカにルーツを持つ選手たちにも通じます。アフリカの人々にとってサッカーは切っても切れない大事な存在。写真を見ると、皆スパイクやボール、キーパーグローブなどサッカーにまつわるものを身につけたり手にしています。

それを、当時欧州で活動していたディオプ自身も、アウェーの土地で成功を目指していたアフリカ人。そのすべてをレイヤーとして重ね、一枚の写真として形にしたのが「Disapora」なのだそうです。

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残念ながら、モデルの偉人たちは日本ではなじみのない人ばかりです。入口で配られていたリーフレットにはそれぞれがどのようなことを成し遂げた人物であるのか、丁寧な説明書きが添えられていました。この機会に少しでも知ってほしい、という思いを感じるものでした。

アフリカ出身の作家らしい、鮮やかな色合いがとても印象的な見ているだけでも楽しい作品ですが、その中に込められた自分のルーツに真摯に向き合う作者の想いを感じると、非常に重みが増してきます。

入口に掲げられていたパネルでは、会期が変更になった間に起きた「BLM(ブラック・ライフス・マター)」の出来事が触れられていました。ルーツや見た目の違いから不利な状況に立たされる構造は今だけではなく、昔からあるものなのだ。その現実を考えさせられるものでもありました。

オマー・ヴィクター・ ディオプ「Diaspora」

出町枡形商店街

オマー・ヴィクター・ ディオプ
「Masu Masu Masugata」

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オマー・ヴィクター・ディオプの展示は、もうひとつ。京阪出町柳駅や鴨川デルタからほど近い、出町枡形商店街で行われた「Masu Masu Masugata」です。

こちらは2019年秋に一ヶ月弱京都に滞在したディオプが、実際に商店街で働いている店主やその家族を被写体としたポートレート作品。果物屋さんはミカン、時計屋さんは時計、呉服店はきものを、といったように、店主達が扱っているものが色鮮やかな背景にコラージュされ、見ていて楽しいとてもポップなスタイルの作品です。

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会期中には、この作品が巨大な垂れ幕としてアーケードの屋根からつるされていました。
面白いところは、皆被写体になった方のお店のすぐ近くに配置されているところ!「この写真の人はどんな人なんだろう?実際はどんなお店なんだろう?」と想像を膨らませながら、実際にお店にも訪れることができるというわけです。作品とそこに映った人々、そして町自体が全て繋がっているような、空間全体をひとつの作品のように感じられる、展示でした。

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ちなみに作品は商店街の中に新設されたKYOTOGRAPHIE初のパーマネントスペース「DELTA」に小さなサイズで全て展示されているので、見逃した作品も確認することができるのが有難いポイント。作家コメンタリーもチェックすることができました。ショップも兼ねているので、こちらも併せてぜひ!

オマー・ヴィクター・ ディオプ「Masu Masu Masugata」

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