Report&Reviewレポート・レビュー

【レポ】小川貴士 水彩画展「古都・光に映えて」

2023/07/06

ご縁がありまして、パパジョンズカフェ京都六角で開催の 小川貴士 水彩画展「古都・光に映えて」にお伺いしました。ちょうど祇園祭の前祭時期に合わせての開催です。

絵を描かれた小川貴士さんは、2009年から本格的に画家として活動を始め、これまでイタリアや北欧、東京で生活をされてきましたが、1年半ほど前から京都へ移住。以来京都で暮らしながら各所を巡ってスケッチを続けているそうです。今回は京都で制作した新作を、以前暮らしたイタリアやフィンランドでの風景画とともに展示されています。

20230705_175748.jpg左の2点がイタリア・ヴェネツィアの風景を左右で朝~夜の変化と共に描いたもの。
右の2点は京都、五山送り火の大文字山/大覚寺の月見。

以前から何度か京都には訪れる機会はあったそうですが、訪問時点毎ではなく一続きの街の空気を感じたいと考えられたのが移住のきっかけだそう。一年半の暮らしの中で小川さんは「京都は季節に境目がない」、シームレスであると感じたといいます。
「季節を春夏秋冬の4つに分けられない。その間にもはっきり名前のない季節が無数にあることを京都で知りました。」

20230705_180105.jpgのサムネイル画像左は仁和寺、右が鴨川のほとり。どちらも春の京都の景色です。

特に京都にはその時期ごとの花の名所があり、「この花ならここ」と各所に散っている点も興味深く感じたのだそう。今回展示されている京都をテーマにした作品には、様々な季節の花が各所の風景と共に描かれています。それは仁和寺や知恩院といった有名なところもあれば、西陣の知る人ぞ知るお寺さんや、鴨川べりの何気ない風景などさまざま。

「花を追っていくとおのずと京都のあちこちに足を運ぶことになって、色々な京都の姿を見ることができました。最初からそのように作ったのではなく、1200年の歴史の中で残っていったものが積み重なって形作られていったことに、京都の深さを感じます」

20230705_180124.jpg
作品はカフェの各席横に展示。もう一つ窓の向こうに風景が見えるよう。

また、小川さんはヨーロッパ時代から、風景だけでなくそこに暮らす人の営みに惹かれるとのこと。展示されているイタリアやフィンランドの風景を描いた絵も、随所に人の姿や人の作った船や建物など、人の存在を感じる要素が描かれています。「風景画というと自然のイメージが先行しますが、どの場所にも人が暮らしている。その息吹も一緒に描いていきたいと思っています」と小川さんは仰っていました。

20230705_175758.jpg
メインビジュアルの大船鉾の巡行を描いた一枚。
鉾の左側に見える建物は二階囃子の会場になっている「ごはん処矢尾定」さん。

今回の展示のメインビジュアルになっている大船鉾の絵も、「人の営み」が大いに創作意欲を掻き立てたとか。「街の人がお祭りを楽しんでいる、ハレの日の幸せな空気を絵にしたいと思いました」という小川さん、その感覚が絵に描き込まれた人々の様子からも伝わってくるようです。祭の熱気と晴れやかさと共に、通りを吹き抜ける夏風爽やかさも感じる一枚です。

大船鉾との縁は、二階囃子の会場(ごはん処矢尾定さん)に上げて頂く機会があったこと。絵を描いていることを話すと、お店のご主人が快く二階を見せて下さったそうです。
曳き初めも二階から眺めさせていただいたそうで、街に暮らす人の視点での祇園祭を見ることができたとのこと。「住む以前に思っていたよりずっと敷居が低くて、京都の人は気さくで自分を受け入れてくれると感じました」と小川さんはいいます。

祇園祭の絵はもう一点、南観音山をモデルにした絵も展示されていますが、「まちの夏祭り」としての祇園祭の風景がそこにあります。夕刻から夜の間、まさに「宵(の)山(鉾町)」。
特別だけれど、暮らす人の日常の延長線上にある存在としての行事の姿が見えました。

今後は行事や季節だけでなく、住んでいるからこそ見られる普段着の京都の姿も絵にしていきたいという小川さん。小川さんの目に普段着の京都がどのように映るのか、今後どんな絵がしたためられていくのか、楽しみです。


会場は烏丸御池駅と四条/烏丸駅のちょうど間くらいにあるので、山鉾見物の休憩がてら立ち寄るにもぴったり。爽やかな色彩で描かれた京都や欧州の景色を眺めて、一息ついてみては?

開催は7/17まで。

小川貴士 水彩画展「古都・光に映えて」

最近の記事