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【レポ】特別展「東福寺」(京都国立博物館)

2023/10/30

あれも、これもビッグスケール!文化財で体感する大寺院・東福寺の世界。

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いよいよ開幕した、京都国立博物館2023年秋の特別展「東福寺」。
春には東京国立博物館で開催され好評を博した展覧会が、満を持して地元京都での凱旋開催となりました!

紅葉の名所として知られる京都を代表する大寺院である東福寺。しかし、意外にも所蔵品をまとめて公開する機会はほとんどありませんでした。そんな知られざる東福寺の寺宝を一挙公開する初の大規模展覧会です。

内容は地元開催に相応しく、東京展よりも展示件数は30件以上増え、また、京都展限定の展示作品も50件近くと、さらにボリュームアップしています。
その展示の様子をご紹介します!

※この記事は2023年10月の内覧会時(前期展示)の内容に基づきます。観覧時期により展示内容が記事と異なる場合がございます。予めご了承ください。

「東」大寺+「興」福寺=東福寺。

toufukuji2023_repo (3).jpg右は《九条道家像》乾峯士雲賛 南北朝時代(康永2年/1343)京都・東福寺蔵【展示は11/5まで】

展覧会は、東福寺の成り立ちから発展を支えた僧侶たち、そして大陸との交流によって花開いた禅宗文化を、5章構成で紹介。
冒頭では、東福寺の名付け親で発願者の九条道家が紹介されています。
彼が「奈良の東大寺と興福寺と同等、いやそれ以上にスケールの大きな寺院を作るんだ!」と願い、それぞれから一字をとって「東福寺」と名付けたのだそう。
東福寺は後に「伽藍面」と呼ばれるほど、建物と敷地の巨大スケールが評判になりますが、最初から「大きい」ことをイメージされていたのです。

今回の展覧会もそのスケールの大きさが、大きなテーマとなっています。

また、日本の禅宗寺院としても東福寺は初期からあり、かつ災害に遭う機会が少なかったことから、保存状態が驚くほど良い中世期(鎌倉・南北朝時代)の品々が多く伝わっている点も特徴なのだそう。そのため、本展の展示作品も中世期のものを主体に構成されています。

東福寺の歴史を彩る、個性豊かな僧侶たち

toufukuji2023_repo (1).jpg左は《円爾像》自賛 鎌倉時代(弘安3年/ 1280)京都・東福寺蔵【展示は11/5まで】
円爾のポーズは肖像画によって様々ですが、病で隻眼であったためどれも片目を瞑った姿で描かれています。

東福寺の開山・円爾は中国・宋で修行した高僧。語学に非常に堪能で、知り合いも多く国内外に広いコネクションを持っていたそうです。
冒頭には早速その円爾の肖像画が。禅宗では修業を終えた証として師匠が弟子に自分の肖像画を与えたり、高僧の肖像画を法事の際に飾る習わしがあります。そのため禅宗が伝わった鎌倉時代以降に日本の肖像画の技術が大いに向上しました。特に円爾は、生前から当時としても多くの肖像画が制作され、若いころから晩年に至るまでを肖像画で見ることができるそう。会場内でも色々なパターンの円爾像が登場しているので、見比べてみるのもおすすめです。

toufukuji2023_repo (2).jpg 右は国宝《無準師範像》自賛 中国・南宋時代(嘉照2年/1238)京都・東福寺蔵【展示は11/5まで】

次の部屋では、円爾が修業を終えた際に師匠で中国の高僧・無準師範から与えられた肖像画も。こちらは日本にある中国絵画の肖像画でももっとも有名かつ最高峰といわれる作品で、見たことがある方も多いのではないでしょうか。今にも喋り出しそうなリアリティある描写が素晴らしい逸品です。肖像画に添えられた賛は、修行を終えた弟子の円爾に送った言葉なのだそうです。

toufukuji2023_repo(21).jpg特別展「東福寺」(京都国立博物館)展示風景

続いては次の世代、円爾の弟子たちに注目。
円爾の弟子たちは「聖一派」と呼ばれ、積極的に海外(中国)へ留学したり、新しい知識や文化を日本に伝えたり、東福寺や禅宗の発展に大きく貢献しました。今回は東福寺の塔頭に伝わるさまざまな弟子たちの肖像画が紹介されているのですが、どれも個性豊か。どんな人だったのか、表情や周囲の関連資料から人となりに思いを馳せてみるのも良さそうです。

toufukuji2023_repo (5).jpg重要文化財《癡兀大慧像》自賛 鎌倉時代(正安3年/1301)京都・願成寺蔵【展示は11/5まで】

こちらは中世随一の"強面"肖像画という《癡兀大慧像》。円爾に法論を挑んで負かされてしまったことがきっかけで弟子になったという、これまた強い経歴のお方さんです。カッと目を見開いた表情が印象的ですが、丸いお顔の輪郭のせいかどこか愛嬌も感じます。

toufukuji2023_repo (6).jpg《虎 一大字》虎関師錬筆 鎌倉~南北朝時代(14世紀)京都・霊源院蔵

また、ユニークな一品がこちら。円爾の孫弟子にあたる虎関師錬が書いた「虎」の字です。書というより象形文字の様な、絵のようにも見える不思議なかたちをしています。自分の名前の一字から発想したのか、それとも自分をイメージして書いたのか、何か深い意味があるのか...その詳細は不明。隣にある虎関師錬(肖像画)に思わず「これは何ですか?」と尋ねてみたい気持ちになりました。
※この《虎 一大字》は展覧会グッズにも採用されています!

雪舟と同格の天才?
東福寺が誇る画聖・明兆の大作をご覧あれ。

toufukuji2023_repo (9).jpg特別展「東福寺」(京都国立博物館)展示風景
左端は重要文化財《白衣観音図》吉山明兆筆 室町時代(15世紀)京都・東福寺蔵【展示は11/5まで】
なんと高さ3mもあります!

続いて登場するのが東福寺を代表する絵仏師・明兆の作品群。
明兆は「画聖」とも呼ばれ、かつては同時期に活躍した雪舟とも並び称されたほどの画僧でした。とにかく絵を描くことを優先するために出世はせずにずっと下の役職で働きながら「寺院専属の画家」として働き続けた人で、会場には彼の人となりのわかる資料も展示されています。
明兆の作品は高さ3mや2m級の巨大なものが多いので、ぜひ会場でそのサイズ感を体感してください!

toufukuji2023_repo (10).jpg重要文化財《五百羅漢図》吉山明兆筆 南北朝時代(至徳3年/1386)京都・東福寺蔵
※展示内容は時期により異なります(写真は10/22までの展示)

本展最大の目玉《五百羅漢図》は、彼が30代の頃に描いた、仏陀に付き従った500人の羅漢(弟子)たちが不思議な力で奇跡を起こす姿などを描いたシリーズ作品。今回は東福寺に現存するもの(45幅)と、他館所蔵のものや失われたものの模写・復元品も含め全50幅が4期に分けて公開されます。
なお、第50号幅は展覧会の開催直前に、明兆筆のオリジナルが現在ロシアのエルミタージュ美術館にあることがわかったそう。展覧会はそんな発見の機会でもあります。

2008~2022年までの14年間をかけた大修理を終えて蘇った色鮮やかかつ繊細な筆致は圧巻の一言!羅漢さんたちの個性豊かな表情までじっくり堪能できます。また、作品の横には場面をコミック風に紹介した解説パネルもあり、お話を楽しみながら作品を鑑賞できます。

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なお、明兆最大の作品、高さ11mもある《仏涅槃図》は東福寺展の後期期間に合わせて、東福寺の本堂で公開されます(流石に博物館の中では展示が不可能なので、一部を実物大で複製したものが会場内にあしらわれています)明兆の筆による壁画も一緒に見られるそうなので、明兆づくしの空間で作品が味わえます。この機会に東福寺と京博をはしごしてみては?

大きい!すごい!
東福寺のスケールを感じる仏像たち

toufukuji2023_repo (12).jpg特別展「東福寺」(京都国立博物館)展示風景

1階フロアの目玉は、東福寺のスケールを肌で感じられる仏像たち。夏から先行公開されていた二天王立像をはじめ10点以上の仏像たちが彫刻ゾーンに並びます。

toufukuji2023_repo (14).jpg《仏手》鎌倉~南北朝時代(14世紀)京都・東福寺蔵【通期展示】

ここの見所は巨大な「仏手」!
かつての東福寺のご本尊、高さ15mもあったという大仏様の一部です。この手だけでも2m以上の高さがあります。残念ながら仏像自体は明治時代に焼失してしまったため、残されたのはこの手、そして横に展示されている蓮弁(仏像の台座)、光背の化仏のみ。真ん中に置かれた化仏(小さいお像)が在りし日の姿を偲ばせます。
ですが、近くに行くだけでも仏像、そしてかつての仏殿のスケールは感じることができるのではないでしょうか。
この仏手が展示されたエリアはフォトスポットになっていて、会場内で記念撮影も可能!手の横に立ってみたり、同じポーズをとって楽しむのも良いですよ。

toufukuji2023_repo (16).jpg 左:重要文化財《阿難立像》右:重要文化財《迦葉立像》共に鎌倉時代(13世紀)
中:重要文化財《朱漆塗牡丹唐草文透彫前卓》南北朝時代(14世紀)
全て京都・東福寺蔵【通期展示】

フロアの中心には、今にも動き出しそうな活き活きとした表情が特徴の《阿難立像》《迦葉立像》(どちらも重要文化財)と、現在のご本尊(阿弥陀如来立像)の写真が。大きな卓も置かれていて、本堂の内部を再現しています。

他にも鎌倉時代ならではのリアルな表現の仏像たちがずらりと並んでいます。これだけの数の仏像を(巨大なものも含めて)一堂に展示できるのは、東福寺と京博がご近所だからこそ!この貴重な機会をじっくりと堪能したいものです。

海外文化の窓口としての東福寺

toufukuji2023_repo (19).jpg特別展「東福寺」(京都国立博物館)展示風景

1階の他の展示室では、東福寺と海外(主に中国)との交流を感じられる品々を中心に展示されています。

こちらは東福寺の開山となる円爾が修業を終えて中国から日本へ戻る際、無準師範が「貴方は日本で大きなお寺を建てるだろう、その時に必要だろうから」と書いて持たせたという、様々な扁額(看板)用の書と、それを用いて実際に作られた扁額(どれも大きい!)。書のスケールとともに、師弟の確かな絆も感じられます。

toufukuji2023_repo (18).jpg特別展「東福寺」(京都国立博物館)展示風景

こちらはなんと沈没船から見つかった引き上げ品。この展示室に並ぶ青磁や白磁などの陶磁器は「新安沈船」と呼ばれる、1975年に韓国の南西部で見つかった沈没船から引き揚げられたもの。沈没船から「東福寺」と書かれた木簡が見つかったことから、東福寺が中国に注文した品々だったことがわかったそうです。
調査の結果によれば、沈没してしまったのは1323年。当時、東福寺は火災などで伽藍に被害が出ており、復興のさなかにありました。そこで必要な陶磁器を中国(当時は元の時代)に注文し、それを運んでいる最中に海に沈んでしまったようです。
東福寺は何かあれば中国にすぐにものを注文できるパイプがしっかりとあったこと、当時の海外交流や貿易面においても重要な立場を担っていたことが伝わってきます。


東福寺と言えば、紅葉と通天橋と広い敷地...そういったイメージでしたが、実はこんなにたくさんの文化財が伝わっていたのかとそのボリュームとスケールにただただ驚かされました。普通に自分の頭上を越える高さの作品がいくつも並んでいたり、沢山の大きな仏像たちに囲まれたり...こんな体験はなかなかできるものではありません。そしてこれらの品々は総じて、東福寺という大きな空間が、器があったからこそ生み出され守り伝えられたのだなと感じました。

今度はこの寺宝たちが長く過ごしてきた場所として、東福寺に足を運んでみたい!そんな気持ちになる展覧会でした。

ちょうど11月からは、東福寺でも特別公開が開催予定。展覧会と併せて見ると、より楽しめるはず。この機会に足を運んでみてはいかがでしょうか?

前期展示は11/5まで。後期展示が11/7(火)から、展覧会は12/3(日)までの開催です。

特別展「東福寺」(京都国立博物館)

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