“The young talents are so bright in the castle of art.”
学園内は、きらきら輝く才能にあふれていました。
iD 京造卒展
2013年度
京都造形芸術大学 卒業展 大学院 修了展
2014年2月22日(土) → 3月2日(日)
ルイス・ヘナト・クリゲル 喜怒哀楽
“Please turn the hundle” の言葉に合わせてハンドルを矢印の方向に回せば、
コミカルな独特の動きをします。それは紙ならではのしなやかな動き。その動きに思わず笑みがこぼれ、ゆえに安心感を味わえます。
北川篤 And touch the sky
この北川君は約半年前に、三条にあるギャラリーH2Oで知り合って以来でした。
ふらっと訪れたF棟にいたので、びっくりしました。
このコンパクトにまとめられた陶器はこれでも1000枚あるとのこと。
このゆるやかなカーブに、北川君の作品を美しく見せようとするセンスを感じることができます。
きっと、直感。
「天までとどけ!」
そんなことはできないのはわかっているけど、気持ちはそこまで行っているよ!
きっとそれがタイトルにこめられた思いなのでしょう。
うつわって、食を彩るとても身近なアイテムです、
とは、いつもうつわを見るたびに思うこと。
台所の棚のなかにはすでに家族が使う十分な数のうつわがあるというのに、
それでも陶器市などでうつわを買い求めるのは、
飽きることなくおいしくご飯を食べたい!という根っからの願いからだと思います。
中林ゆうみ 呼吸するうつわ
この中林さんも以前からの知己で、北川君に教えられてこの会場に来ました。
カフェ『森のひみつきち』で、ゆうみさんのうつわを使ってお料理が出てきます。
学生女子の立ち働くすがたが初々しい。
食後のコーヒーも手作りカップでいただけます。
素朴に落ち着くいろかたち。
東條由佳 1minute
「首・手・足がな~い!」と驚くなかれ。
これは、『しわ』を通して人間を見る、という変化球的作品。
タイトルからわかるように、1分ごとの横からの動きを捉えたもの。
ひとの体を描いていないにもかかわらず、かえってその『実』を見極めようとする意図を見て取れるのです。
モノの本質を見極めるアプローチには制限などない、と気づかされました。
普段使わない脳の一部を、ツンツン刺激する作品です。
森本成美 タイトルはなし(あえてつけるなら”dinner”)
ボクのこころにしみこむ作品でした。
評論家気取りで言葉をつらつら並べて分析するのは愚の骨頂、
ただ作品の前に立ち1対1で向き合えば、体の芯がす~っと澄んでくる、そんな絵です。
「ひととの距離をどう保ったらいいのか、わからない時期があって…」
と少々自信なさげに作者の森本さんが説明してくれました。
様々なものを描きこんでいた方法を捨て、よけいなものを差し引き、手数をかけないようになって
描けるようになった絵。
仮のタイトルにあるように、この絵は楽しかった食事を思いながら描いたそうで、その思いが薄い黄色と相まって見るひとにも素直に伝わってきます。
未だ確たる線を自分のものにしてはいない…
けれども、その発展途上にしか描けない、逆に希少価値の高い作品だと思います。
下山早智子 夢と現実の狭間の街で I
エッチングは、魔法。
ヴェールに包まれた世界。
そこは中世ヨーロッパ。
でもたしかにひとが創り上げた数百年前のとある時代。
もうそこへは戻ることはできない。
それは謎に満ちたふわふわな街だった。
山崎千智 Dancing on drawing
「おぉ!躍動する水墨画!」
こども芸術学科の展示室の様子です。
皆さん、学生さんの説明を受けながら、このように作品を鑑賞しています。
井上亜美 いのちの在り処
これは蝉の抜け殻。
虫の死骸に寒天と瞬間接着剤を使った、変り種の作品です。
ひっくり返ったトンボの抜け殻もあります。
島田紗希 はんかち屋さん
ぽかぽかとこころあったかくなる絵本とかわいいハンカチ。
それは手に伝わるやわらかさを持っています。
早川祥子 一本の木
回る灯篭のある教室に落ち葉の香り。
足を踏みしめるたびにサクッサクッと。
石崎由起 潜み音
樹齢800年のくすの木の根。
昨年の9月に青蓮院門跡近くの道端で絵を描く学生さんにばったり出会い。
今回この卒展に来て、この絵の前に来て、「はっ!」と思い出しました。
800年という年月を生きた、という鼓動(それが潜み音)が画面からあふれ出ています。
言うなればその間に、鎌倉・室町・戦国・安土桃山・江戸時代と武士の世があり、
明治・大正・昭和・平成と市民の世へと変遷してきたのだから。
その間も変わらずそこに在る、という凄みがみごとに表現されています。
山下那菜 玉堂富貴・遊蝶・藻魚図 (真ん中の絵が該当、写真はインターネットから引用)
「はぁ~…美しい…」
思わずため息の漏れる作品です。
これは泉屋博古堂所蔵の椿椿山(つばきちんざん)の筆の模写。
「今までは輪郭を描いてから色をのせる方法で絵を描いていたので、今回のこの作品を描くときはいろいろと模索しながらの制作でした」
とファイルを見せながら説明してくれたのは、この絵の作者の山下那菜さんです。
というのも、今回は『没骨法・たらし込み』という技法を使っての製作だったから。
この技法は中国明末清初の花鳥画着彩というもので、輪郭を描かないもの。
そして、考えてみました、
「かつての日本画を模写するのはなぜなのか?」
すでに存在する絵を現代に再び描く理由…
それは、古の日本人画家の持っていた優れた美的感覚を持つDNAが、
現代のこの国に確実に受け継がれているという証明をするために。
それが、この若い女子学生のなかに脈々と受け継がれているのです。
『美』を表現することへの取り組みには様々なアプローチがあると思いますが、没骨法・たらし込みを使ったことによるその効果は絶大で、輪郭のないその絵はやわらかさを十分に表現しきれています。
まさしく、牡丹の透明感のあるうすいピンクは日本人のこころに溶け込む色になり、
藤の紫はその高貴さをただよわせてそこにあるのです。
京象さ~ん!
ゆるキャラ登場!京造…とかけてるのかな?
坂本優里子 譜楽器 Pizzicato(ピッツィカート)
「音楽へのきっかけを楽しいものに」
この作品にはそんな優しい思いが込められています。
作品名のPizzicato とは、弦楽器の弦を指で弾く演奏技法のこと。
「どうしても譜面を見ると、敬遠しがちになるのですけど」
と装置を扱いながら説明してくれるのは、作者の坂本優里子さん。
「この楕円の木をボードの音符の上に持ってきて軽く押さえ、この弦を人差し指で弾けば…」
その音符の音が出る、という仕組み。
音楽の楽しさが、とても単純な造りの装置と操作で体感できる優れもの。
「この透明ボードの下の楽譜を変えれば、また別の曲を弾くこともできるんです」
丁寧に説明してくれる坂本さんのその姿勢に、音楽は楽しいものだ、ということを世の中に広めたい、そんなあたたかい思いを感じることができました。
「音楽の原点がこのPizzicatoなら」
とても素敵なこと。
子供たちが楽しそうにこのPizzicato で遊ぶ姿がまぶたに想像できます。
この日は、京造卒展の最終日。
NA棟1F特設ステージにて行われている、18:15からのクロージングイベント「Student Prize 授賞式」を見ていると、
「あぁ、もうすぐお祭りが終わる…」
という一抹の寂しさを感じます。
でも、名前を呼ばれて壇上に上がり、受賞を受ける学生たちの表情は涙にぬれても輝いていました。
君たちの4年間の集大成は、訪れたひとびとを驚かせ、感動を与え、喜びをもたらし、美しきものへの飽くなき探究心を共感させるものでした。
「ヤァ~!今回もめっちゃいいもの見た~!」
京都学生アート 卒業・修了制作展
中里楓です。「京都をもっと好きになる!」「アートが好き!」「カフェが好き!」この3つのコンセプトをもとに京都の魅力を探し歩いてます。時空的にも空間的にも京都にはひとを惹きつけるものがいっぱい。そんな京都的小宇宙を精いっぱいご紹介します。