“Kawaii has existed since before we were born.”
日本のカワイイは、ボクらが生まれるずっと以前からあった・・・
gallery C.A.J. のオーナーさんからいただいたチケットを持って、この展覧会に行ってきました。
京都高島屋グランドホール〈7階〉
生誕100周年記念 中原淳一展
2014年4月2日[水]→14日[月]
中原淳一・・・
このチケットをいただくまで、こんな才能を持つデザイナーがいたなんて知りませんでした。
その精神は、日本中の女性を美しくすること。
画家・中原淳一のそういった姿勢が会場全体に満ちていました。
第Ⅰ章 中原淳一の原点
展覧会場に入ってすぐ右側には、雑誌「それいゆ」が年代ごと、1946年から1959年まで展示されています。
その印象は、紙質は現在の雑誌類に比べてかなり劣る、ということが一目でわかるものの、使われている色は当時の時代背景を省みれば、それはカラフルで贅沢なものだった、というものでした。
中原淳一デザインドレス再現
COLOUR and COLOUR 黒 「女の部屋」創刊号1970年
花もようのドレス (中原淳一スタイルブック)1957年
色あせなくて、スタイリッシュで、現代のファッションシーンにもみごとに通じるドレスです。
第Ⅱ章 「あなたらしくあること」 -ファッションデザイナーとして-
表紙原画 『590スタイルブラウス集』 1953年 水彩・ペン・紙
今回も一枚、スケッチしてみました。
原画をよく観察して、自分で描いてみてわかることがあります。
「・・・意外と、この頬のラインがむずかしい・・・」
それは、ここより外に引けばふっくらとした印象になり、内に引けばやせた印象から健康的な美しさを失ってしまう、そうはならない絶妙な頬のラインであるということ。それに、
「絵を描くって、楽しいことかも・・・」
という自分がいることも少しずつ感じてきています。
○それいゆじゅにあぱた~ん 『ジュニアそれいゆ』 第4号口絵原画 1955年 インク・墨・紙
これらの絵は、大人でも子供でもない10代後半の少女たちの姿が描かれたものです。
それまで見てきた前半の大人びた女性像とはやはり違うな、とその違いを見逃すまいと凝視していたら、
「なにかお勉強されているのですか?」
とお二人のご婦人から声をかけられました。
なんでも、先ほど絵をスケッチしているときから気にかけてくださっていたとのこと。
絵の勉強・・・半分当たっているかもしれません。
京都にある博物館・美術館・ギャラリーの展覧会・個展を回ってレポートを投稿する、京遊のライターをしていますとご説明すると、その優しそうなご婦人から、
「この時代はモノがない時代で・・・ボタンホールを縫うにも一苦労していました・・・」
とか、
「使っている生地といえば、コットンとかウールでしょ、化学繊維なんてなかったですし・・・」
など、戦後を生きた年代ならではの貴重なお話を聞くことができました。
そんな大変な時代だったにもかかわらず、
「現代にも通じるこれらの “かわいらしさ” と “色使い” は、驚嘆に値すると思うんです」
と素直なボクの感想をお話すると、お二人は即座に賛同してくださいました。
わずか5~6分間お話しただけでしたが、とても楽しい時間でした。
表紙原画 『ジュニアそれいゆ』第24号 1958年 水彩・紙 (絵はがきから)
あの女優さんに似ていると思うけど・・・
第Ⅲ章 「生活を美しくする」 ライフスタイルの提案
○みだしなみせくしょん ひまわり 少女スタイルブック
『ひまわり』第2巻 第8号原画 1948年 インク・墨・紙
これらの少女の服には、レース・リボン・ネッカチーフ・ハンカチーフなどがあしらわれていて、とてもかわいらしい装いになっています。
そこに含まれる中原淳一の意図は、
『幼いうちから美しいものにふれるということが、少女たちの心の糧になる』
というもの。
のすたるじあ 『ひまわり』第6巻 第1号 口絵原画 1952年 インク・墨・紙 (絵はがきから)
このような着物を召したカワイイ少女を見ていると、日本の平和は彼女たちのおかげで成り立っている、と思えてきます。
第Ⅳ章 多彩な才能
中原淳一は、著名な作家たちの作品の表紙も手がけていました。たとえば、
川端康成「乙女の港」、吉屋信子「憧れ知る頃」、北畠八穂「女人百様」、豊田正子「はだしの子」
などです。これらも意外な発見でした。その広い人脈にも驚きます。
ドレスの再現 書籍『七人のお姫さま』 裏表紙原画 1968年から
裏表紙原画 『七人のお姫さま』 1968年 水彩・インク・紙 (絵はがきから)
この原画から上のドレスが作られています。
かわいらしさが忠実に再現されています。
蝶々夫人 1976年 水彩・インク・紙 (絶筆)
袖をたくし上げて、虚ろで物憂げな眼差しのうつむく横顔の蝶々夫人。
蝶のあしらわれた着物に、背後にも蝶舞うその姿は見る者のこころを捉えて離さぬ、魂のこもった一枚の絵です。
今回の展覧会は2時間ほどかけてじっくり鑑賞する、すごく充実したものでした。
そして出口から出てきて一息ついて思ったこと、それは、
「日本の “Kawaii” の原点は、中原淳一にあった!」
中里楓です。「京都をもっと好きになる!」「アートが好き!」「カフェが好き!」この3つのコンセプトをもとに京都の魅力を探し歩いてます。時空的にも空間的にも京都にはひとを惹きつけるものがいっぱい。そんな京都的小宇宙を精いっぱいご紹介します。