“秋の野の 露にそにほふ 女郎花 はなのひもとく ちきりしられて” 藤原実為
壮大な南禅寺三門を眺めながら左手の小道に沿っていけば、この美術館があります。
初めての訪問でした。
野村美術館
平成26年春季特別展
利休・剣仲・織部の時代 -天正から慶長の書と茶陶-
4月22日(火)~6月8日(日)
この展覧会では3人の茶人、千利休・薮内剣仲・古田織部の書や茶碗が展示されています。
利休と織部は知っていても、剣仲は初めて聞く名でした。
それでは展示されている40数点から、いくつかピックアップしてご紹介しましょう。
妙一字 千利休筆 桃山時代
Calligraphy Written by Sen Rikyu (1522~1591)
Momoyama period. 16th. c.
館内は撮影不可だったので、今回もスケッチしてみました。
これは千利休による一筆。
「この書き始めから…こう流れて…下に降ろし…丸く円を描くように…ここで跳ねっ…チョン!」
書いてみましたが、400年前の利休の気持ち、そう簡単に理解できるものではないですね。
○亀甲竹一重切花入 千利休作 桃山時代
Flower vase Bamboo
Made by Sen Rikyu (1522-1591)
Momoyama period. 16th. c.
まさしく「朴」の一字。
竹の胴体に無造作に走る疵が独特の趣をかもし出し、挿された一輪の花とのギャップがとてもおもしろそう。
その疵から、『ザクッ!』 『ギィヤァッ!』 という音さえも聞こえてきます。
後窯(のちがま)織部耳付茶入 銘 餓鬼腹 桃山時代
Tea caddy Mino ware
Known as “Gakibara”.
Momoyama period. 17th. c.
古田織部の作で、一番目に付きました。
小さな耳に、肩には箆(へら)削り。
大きく下に張った姿が、餓鬼の腹を髣髴とさせるところからこの銘がつけられたとか。
「餓鬼腹」
食べ物を手に取るとすべて火に変わってしまって、常に飢えと渇きに悶え苦しむ者どもを逆手にとって、美のなかに取り込んでしまうとはさすが安土桃山時代!
○竹一重切花入 薮内剣仲
この竹の花入も高さが約一尺、上部の前面を約二寸切り取った形をしています。
○黄瀬戸三段杓立 桃山時代
Landle stand Mino ware
Kiseto style
Momoyama period. 17th. c.
口縁と胴あたりのまだら模様の銅緑釉が目にも鮮やかに映ります。
その胴体の曲線は、瓢として色気を感じます。
○南蛮毛織抱桶水指 インド・ムガール時代 16世紀
Water jar, “Dakioke” type
Mogol Empire. 16th. c.
この丸い水指には、シルクロードの幾何学模様が表面にあしらわれています。
「毛織」とは「もうる」と読み、インドムガール帝国のことを「モール」と訛ったことによるものだそうです。
○蒲生氏郷共筒茶杓 銘 もしほたれつゝ
蒲生氏郷、有名な戦国武将です。
でも、これらの時代を超えた名品を見ていても何か物足りないと感じてしまうのは、やはりガラスの向こう側にあって、手にとってそのぬくもりを感じることができないからでしょう。
「あぁ…手にとって、茶を飲んでみたい…」
これらの名品に囲まれた茶室での一服…想像するだにすばらしい。
「400年前の一品では」
それもできないのですけどね…
時とは価値。時はひとの手では創り出せない絶対的価値。
落としたりして割ってしまっても、時をさかのぼって修復できませんから。
ボクにはいきつけのcafé mement mori でいただく一杯のホットコーヒーが、至福の時をあたえてくれます。
冒頭の和歌は、これも展示されていた
「懐紙手鑑」
という、後水尾天皇・後西天皇など50人の懐紙を収めて折本に仕立てたものからの引用です。
懐紙とは、携帯する二つ折りの和紙のこと。
携帯って、平安時代からあったのですね。
中里楓です。「京都をもっと好きになる!」「アートが好き!」「カフェが好き!」この3つのコンセプトをもとに京都の魅力を探し歩いてます。時空的にも空間的にも京都にはひとを惹きつけるものがいっぱい。そんな京都的小宇宙を精いっぱいご紹介します。