中里楓のアーティスティック探訪 85
オプトギャラリー 森英世展
“There is the deepest ‘Japan’ in the white haze.”
京阪三条駅から東山の緑を望みながら、
「鉛筆であの山の風景を描けるのだろうか?」
という思いがありました。
アーティスティック探訪を始めてしばらくしてから絵を描くことは楽しいんじゃないかと思うようになり、折のあるごとにスケッチブックに鉛筆で絵を描くようになったからです。
そのとき気をつけているのが、うまく上手に描く必要はまったくない、ということ。
今までは絵は見たまま、写真のように描かなければならない、といった思い込みに縛られていたことに気がついたからです。
この思いに対する答えがひとつ、このギャラリーにありました。
オプトギャラリー
森英世展
平成26年10月10日(金)~15日(水)
それは、鉛筆・色鉛筆を使った風景画でした。
そう、鉛筆であの深遠な緑を持つ山々は描けるのです。
「これらは大津の山々の風景で、Bから6Hの鉛筆を使って描いています」
とは、在廊されていた作家の森英世氏の言葉です。
とっても紳士な方でした。
(ギャラリーショーウィンドー内の作品)
以下、ギャラリー内の作品を数点見てみます。
「燠(おき)」 蔓の描き方はまるで”妖異”
「深い谷」 風の流れに谷の音楽が乗っているような
「葎(むぐら)」 蔓草の一種 この文字自体名は体を現し 絵もその幽玄をかもし出しています
ギャラリー内の作品を穴が開くようにじぃ~っと見ているボクを見て、森氏に
「これらの絵を見てどうですか?」
と問われました。
鉛筆の持つ素材の可能性を限りなく駆使して描かれていることに驚き、作品の中に細部までゆき届いた作家の神経の鋒(きっさき)を感じ、
「靄のような、湿気を感じるでしょう」
という森氏の言葉に、
「あぁ…『日本』の風土を見事に描き表しているんだ…」
と思いました。
絵を描く作家がいて、それを見る鑑賞者いて、その作家の只中にしみこんだこの国の’原子’的要素が作品になり、同じ国に住むわれらもそれに共感する素地を持っていると。
同時に個々の作家の持つ、〈才能〉に触れて、感極まるのです。
モノクロで、かすかに色ののった淡い素朴な絵だけれど、山の木々の陰に古の八百万の神々の存在さえも感じさせる数々の絵。
桜が咲き乱れ、新芽の芽吹く初夏に心躍り、肌にまとわりつく湿気の夏を過ごし、台風が席巻し、燃える紅葉に見惚れ、秋の実りに蜻蛉も舞い、白銀の世界に落ち着きを覚え、この土地で採れるものを食べ、同じ澄んだ空気を吸う…
『日本』 この美しき国
森英世氏の絵は、このことを再実感させてくれるものでした。
「これらもどうぞ、フォトスタンドに入れれば」
と森氏からこれら神秘的な絵の描かれたポストカードを3枚もいただき、フォトスタンドに入れて鑑賞することも勧めてくれました。
早速帰る途中に100円ショップでフォトスタンドを購入。
これで小さなアート鑑賞がボクの部屋でもできるようになりました。
「お~!今日はめっちゃいい絵を見た~!」
※haze 靄
中里楓です。「京都をもっと好きになる!」「アートが好き!」「カフェが好き!」この3つのコンセプトをもとに京都の魅力を探し歩いてます。時空的にも空間的にも京都にはひとを惹きつけるものがいっぱい。そんな京都的小宇宙を精いっぱいご紹介します。