“Crimp.....What a nice sound.”
「なんてやわらかな雰囲気なんだ・・」
京都市美術館で美しいものをいっぱい観て、心地好い疲れを感じながらとことこ歩いてきた先の、町のギャラリーにはふわっとした布がありました。
ANTIQUE belle GALLERY
竹村優利佳 ホームスパン作品展 羊毛から紡ぎ生まれた布たち
2014年11月20日(木)~25日(火)
12:00~19:00(最終日17:00まで)
もとからこの作品展を目的にこのギャラリーに来たわけではありません。
なにが待っているかわからない所に、期待以上の素敵な作品があったのです。
「これらは、何ですか?」
テーブルに並べられた織物を見ながら、在廊しているおねえさんに聞いてみました。
「これはホームスパンと言って、羊の毛を紡いで織られた布たちなんです」
このおねえさんは竹村優利佳さん、ホームスパンの作家さんです。
「ホームは家、スパンは紡ぐという意味なんです」
「おぉ~…なるほど~、これはいい肌触りですね~」
作品のひとつのマフラーを手に取ってみると、そのふわふわ感にとてもほっとします。
「そちらに鏡もありますから、どうぞ合せてみて下さい」
この数年、洋服など買ったことのないボクですが、そのマフラーを首に巻いてみると、
「ほぉ~…意外と…いいかも」
温かさもさることながら、手作りのマフラーに巻かれているからでしょうか、
肩のあたりに安心感を纏っているような感覚が。
「この装置はなんて名前なんです?」
「これはスパニングウィールって言います、ボウモウキですね」
ボウモウキとは、漢字で『紡毛機』と書きます。
「このスパニングウィールからしても、美しいですよね、西洋の技術はこんな所も
優れていると思います」
竹村優利佳さんの意見に賛成です、
作品が生まれる前の、道具の持つ機能美からして素晴らしいと。
「それで羊の毛を、このように手で縒りながら…空気をふくませるように紡いでいきます」
「お!おぉぉ!なんて速い!すごい!」
くるくるクルクルと、糸が紡がれていく様子をじかに見ることができて、軽く感動しました。
「これらの糸はすべて手作りなので、その作り手の個性が出る、その人しか作れない一品になるのです」
農作業の間の手作業として培われてきた、織物技術の遺伝子が昔から日本人のなかにあるのでしょう、と竹村優利佳さんは言います。
「なんて素敵な…その遺伝子が竹村さんにポッと出てきているのですね」
「これらはネックウォーマーで、ちょっと失礼して…
このように首に巻いて頂いて、こう留めます」
その姿を鏡で見てみると、これまたいい…よく似合っています。
その留めボタンも独特です。その形状は細長く、革の紐で留めるようにできています。
「それは黒檀で、丁寧に磨かれています」
おしゃれのアクセントですよね。
竹村優利佳さんの優しい布たちは、
“crimp” (http://crimp.petit.cc/)
というブランドで販売もされています。
ギャラリーからの帰り道、その名前を口ずさんでみました…
「”クリンプ“…なんていい響き…」
クリンプとは、羊の天然ウェーブという意味だそうです。
この日もまた、この世の中にある素晴らしいものひとつ、知ることができました。
そして数日後、作品展最終日の25日、疲れた体を押してギャラリーに来て、
このネックウォーマーを買いました。
「これは買っておいたほうがいい」
と直観的に思ったから。
青、グレー、茶、白と遊び心溢れる色の組み合わせに作家のセンスを見てとることができます。
これからますます寒くなっていきます。
きっとおしゃれな相棒になってくれると思います。
中里楓です。「京都をもっと好きになる!」「アートが好き!」「カフェが好き!」この3つのコンセプトをもとに京都の魅力を探し歩いてます。時空的にも空間的にも京都にはひとを惹きつけるものがいっぱい。そんな京都的小宇宙を精いっぱいご紹介します。