“What is the reason that the customs of the late Heian period was expressed in animals?”
展覧会の作品を観るために長蛇の列に並んだのは初めてでした、それも入館まで70分。
京都国立博物館 明治古都館
国宝 鳥獣戯画と高山寺
2014.10/7[火]~11/24[月・休]
でもこの70分はまだ短い方で、先週の土曜日には210分の入場待ち時間でした。
すごい人気です。
出品テーマはⅠからⅣまで分かれています。それぞれ代表的なものを挙げて見ていきましょう。
Ⅰ 高山寺の開創-華厳興隆の道場-
8 明恵上人像(持念珠像)鎌倉時代 十三世紀
明恵上人とは鎌倉時代に後鳥羽上皇からお寺の土地と建物を与えられたお坊さんです。
Ⅱ 明恵上人-人と思想-
51 白光神立像 鎌倉時代 十三世紀
(ポストカードから引用)
白光神とは天竺雪山(ヒマラヤ)の神様だそうで、そのお身体は白一色。
Ⅲ 高山寺の典籍-写本・版本の収蔵-
63 篆隷万象名義 平安時代 永久二年(1114)
日本人の手になる現存最古の漢字字書、最古の写本。
こんな書体の漢字の写本です。
Ⅳ 鳥獣人物戯画-楽しさあふれる絵巻-
国宝 鳥獣人物戯画 甲巻 平安時代 十二世紀
ひっくり返るカエルとひっくり返るウサギ。
カエル 「???なんでオレ倒れてるんやろ???」
このカエルの右側には逃げるサルと追いかけるウサギがいて、
(ポストカードから引用)
ウサギ 「おいこら!待たんかい!」
サル 「違うって!誤解だよ~!」
カエル 「あのサルがやってんで~!」
ひっくり返るウサギは、カエルと相撲を取って負けて倒れ込んでいるんですね。
どの登場動物も表情が豊かで、その動きも滑稽。
(ポストカードから引用)
サル 「ハァ~…如是~ハンニャ~ハ~ラ~ミ~タ~…
カエル 「ふぃ~、仏のまねも楽じゃないなぁ~」
(ポストカードから引用)
烏帽子ネコ 「この界隈もにぎやかだわ」
笠キツネ 「やぁやぁ、みんな元気かな~」
国宝 鳥獣人物戯画 乙巻 平安時代 十二世紀
伝説上の生き物 麒麟
この顔!伝説の麒麟も親しみやすさ満載です。
その目に優しさが漂っていると思いませんか?
この乙巻には他にも、
・水辺で戯れる犀
・翼を広げて飛ぶ隼
・角突き合わせ闘う牛
・天空を舞う龍
・岩場に立つ獏
・咆哮する獅子
(ポストカードから引用)
など多彩な動物たちがいきいきと描かれています。
その筆使いは絶妙です。
国宝 鳥獣人物戯画 丙巻 鎌倉時代 十三世紀
逃げまどうカエルと現れたヘビ
この丙巻の前半はとても楽しそうなシーンが描かれています。
イノシシに乗るウサギ、通りに繰り出すサルにカエル、そこにはお祭り行列に山車があり、
葉っぱの烏帽子のネコ、シカに乗るサルたち、それに闘犬を見物する人々…
それはとてもにぎやかな場面。
でも後半に登場するのが、ヘビ。
国宝 鳥獣人物戯画 丁巻 鎌倉時代 十三世紀
丸太に乗ってお囃子をたてる男
最後の丁巻には、僧侶や貴賎、老若男女が描かれています。
でもその筆のタッチは甲乙丙巻とは違うみたい。
ここには、
・綱を引いて丸太を運ぶ男たち
・綱が切れふっとぶ男たち
・仏事に参列する公卿たち
・牛車に乗る貴族
といった人々が登場。
これだけの親しみやすい絵巻が900年前に描かれたことに驚きを禁じえません。
いったい誰が、何のために描いたのでしょう。
それは今でも謎なのです。
そこをあえて、ボクなりに想像してみます。
人々の営みを、なぜ「人」としてではなく「動物」で描いたのか?
900年前と言えば、平安時代末期で鎌倉時代へと移り行く、
治承・寿永の内乱によって権力移譲がなされる混沌の時期でした。
貴族から武士の時代へと。
それは平安の貴族たちが武士の持つ底知れぬパワーに気付いた時期でもありました。
そんな過渡期の絵描きに思いをはせるのはむずかしいとは思うけれど、
きっとこの鳥獣人物戯画を描いた人は貴族階級に属し、
人としての喜怒哀楽の感情を豊かに持ち、
そのなかでもユーモアの感覚に優れ、
しかも時代の流れを敏感にとらえる能力も持つ人ではなかったかと。
そこから導かれるひとつの答えは、
「新時代の支配者に対するやんわりとした訴え・風刺」
だと思うのです。
権力を失う喪失感を持ちながらも、それを受け入れる懐のあそびも併せ持ち、
しかもそれを数百年と培われた美意識でもって表現したのだと。
丙巻最後に登場するヘビに象徴される武士によって支配者としての地位を失うことになっても、鳥獣人物戯画の絵描きは落胆していなかったのです。
なぜならこれらの絵巻を観ていて「楽しさ」を感じても、「暗さ」というものはまったく感じられないからです。
世界に誇るべき、平安時代の輝ける才能…
「この日も、日本の傑作 Masterpiecesを観た~!」
中里楓です。「京都をもっと好きになる!」「アートが好き!」「カフェが好き!」この3つのコンセプトをもとに京都の魅力を探し歩いてます。時空的にも空間的にも京都にはひとを惹きつけるものがいっぱい。そんな京都的小宇宙を精いっぱいご紹介します。