“室町時代にはモンスターがいる?!”
京都国立博物館の庭園には上の写真のようにロダン像がたたずんでいます。
そんなお庭を散策するのもひとつの楽しみです。
平成知新館名品ギャラリーの展示品の中で、今ボクがとても気に入っているのが、
『室町絵巻』です。
室町時代…それは、とても怪異な世界。
異形の物、魑魅魍魎の類が跋扈していた時代。
それらが絵巻物の中に、生き生きと、あざやかな色に彩られて描かれているのです。
そのお気に入りをご紹介しましょう。
重要美術品 「日高川草子」
室町時代 十五世紀
道成寺縁起の一異本。
遠州橋本の長者の姫君が修行の僧賢学に恋心を抱く物語。
(スケッチから)
『清水寺で出会った十六歳の美しい姫君と契った後、僧賢学(けんがく)は修行の妨げと姫を見捨てる。賢学を慕う一心から姫君は追いすがっていく…』(説明文から)
この船に乗って逃げる僧賢学の、そっけない顔…
笠をかぶって姫の方も顧みず、なんの関心もないといった感じがにじみ出ています。
(スケッチから)
『波に飛び込んで水の泡となっても、あの方に逢わないで消えられようか』(説明文から)
と叫んで水の上を進んでいく姫君。
着物を着たままで、川の流れに逆らいながら泳ぐ時点で相当の執念だと思いますが、これはまだ序の口なのです。
細かいところを見てみると、姫君の表情はすでに能の小面(こおもて)のよう。
それが次の場面では、
(スケッチから)
『…どんなに逃げても逃しはしない…』
首が伸び、その下からは蛇体が現れ、両手の形が変わり青く染まり始める。
目玉も飛び出しその視線も定かではなくなっている。
なにが姫君を、このような化け物に変えるのか。
女子の執念、恐るべし。
(スケッチから)
赤き衣が紅蓮の炎に変わり風が立ち…
頭からは鋭き角を生やし、赤い舌を伸ばし、長き黒髪を風になびかせ、
蛇(じゃ)の身体をくねらせながら、その鋭き爪を賢学に突きたてん!
『賢学!逃すまじ!』
百千のイカズチが鳴るかのように蛇と化した姫が叫ぶ!
この後、僧賢学は梵鐘の中に隠れたところを姫の蛇体に巻きつかれ、怒りの炎に焼かれて死んでしまうのであった…
中里楓です。「京都をもっと好きになる!」「アートが好き!」「カフェが好き!」この3つのコンセプトをもとに京都の魅力を探し歩いてます。時空的にも空間的にも京都にはひとを惹きつけるものがいっぱい。そんな京都的小宇宙を精いっぱいご紹介します。