2月から3月にかけては、京都にある芸術大学の展覧会が目白押しです。
そのトップバッターとして、最初にこの展覧会に行ってきました。
京都市美術館
京都嵯峨芸術大学+大学院
京都嵯峨芸術大学短期大学部
第43回 制作展
2月4日(水)▶ 8日(日)
受付でパンフレットを頂いて、館内を散策します。
今回も会場内には若々しい作品が咲き乱れていました。
そのすべてを紹介することはできませんが、その中でも特にボクの目を引いた数点を
挙げてみたいと思います。
尚、作品の写真は撮っても差し支えないと受付のおねえさんに言われたのですが、それをウェブにはアップはしないで下さいということなので、作品のイラストを描いてその代わりとしています。
そうすれば、言葉で紹介するよりもわかりやすいので。
デザイン学科 映像・アニメーション 相部彩郁(あいべあやか)
「どうぞ触ってみて下さい」
という学生さんの声に導かれて暗いボックスの中に入ってみると、
『ドクッ!ドクッ!ドクッ!』
と心臓の鼓動のような音が響いています。
そして空中には不気味な物体が浮いていて・・・
「こ、こうですか?」
触ってみるとグニャグニャとしてやわらかい・・・
「はい、それでそこから持ち上げてみて下さい」
こう説明してくれるのが相部彩郁さん。
言われるがままその「繭」を持ち上げてみると、
『ドクドクドクッッッ!ドクドクドクッッッ!』
はっ!鼓動音が速くなりました。
「おぉっ!すごいっ!」
と驚いていると、相部さんが説明してくれました。
「この繭はわたしで、その周りの糸は世界とのつながりを表しています」
おぉ、なるほど。これは人とのコミュニケーションを大切に思う言葉です。
「とてもいい!ガラスの向こうの芸術作品を鑑賞するのが当たり前の昨今なのに、
こうやって作品に触れることができて、その鼓動を感じることができて、しかも
その作者とこうやってお話しすることもできるなんて!」
ボクの素直な感想を聞いた相部さんは、こうも言ってくれました。
「雑音の中にも美しいものはあると思うんです
おぉ!若い学生から、このような言葉を聞けるとはちょっと感動です。
デザイン学科 イラストレーション 野尻千明
「これはアクリルに切り絵を1枚ずつ貼って、間隔を開けて箱に納めた作品です」
と野尻千明さんが説明してくれました。
言うなれば、影絵ではない明りを使った絵。
一番奥に炎の灯火があり、手前に人影が浮かびあがっています。
でもそれは人というより、魔物のようなシルエット。
「魔物がひとりいるのはすぐわかると思いますが、実はまだいるんです」
と野尻千明さん。ボクが描いたイラストにもちゃんと隠れていますよ~。
というのもこれはゲーテ作「ファウスト」の一場面を表したものだから。
その揺らめく炎が中世ヨーロッパの黒魔術の支配した世界を彷彿とさせます。
デザイン学科 イラストレーション 澤田早苗
「・・・なんだかおもしろい被り物をしている人がいる・・・」
おもしろそうなので、話しかけてみました。
「おねえさん、なんでそんな格好しているんですか?」
「こうしていれば、だれかが話しかけて来てくれて、そこから世界が広がるんじゃないかと思って」
と明るく答えてくれたのが、澤田早苗さん。
「ここに展示する作品はわたしからアウトプットされたものと考えるうちに、わたし自身が世界を構成するもののひとつなのではないか、と思うようになり・・・」
人の目を惹かせるためにこのような被り物をし、いろんなものを置いた部屋を作って鑑賞者を作品に引き込むようにしているとのこと。
ボクもこの作品の中に引き込まれて、赤い椅子に座って早苗さんとたくさんお話しました。
つねづね、
(作家の才能に触れてみたい)
と思っていましたが、まさか作家本人が作品の中にいて、その作品の中に入ることができるとは!
「あなたとわたしの接点が、わたしにとって世界の起りであるならば、
世界を構成するものは、あなたとわたし」
澤田早苗さんの言葉です。
さきほどの相部彩郁さんもそうでしたが、彼女たちは世界とのつながりを強く意識して生きています。それが作品に存分に表現されています。
それを知って、とてもうれしくなりました。
今回の京都嵯峨芸術大学の制作展、とても満足できるものでした。
※澤田早苗さんの写真は、ご本人の許可をもとに掲載しています。
中里楓です。「京都をもっと好きになる!」「アートが好き!」「カフェが好き!」この3つのコンセプトをもとに京都の魅力を探し歩いてます。時空的にも空間的にも京都にはひとを惹きつけるものがいっぱい。そんな京都的小宇宙を精いっぱいご紹介します。