中里楓のアーティスティック探訪 107
2014年度 京都造形芸術大学 卒業展 大学院 修了展
“I have a great fun in this graduation exhibition!”
今年のこの芸術大学の卒業展は、「すんげ~!」おもしろいものでした。
2014年度 京都造形芸術大学 卒業展 大学院 修了展
2015年2月21日(土)→3月1日(日)
10:00→18:00
京造芸大のこの赤い階段が大好きです。
なぜなら、この先にはワクワクの世界が待っているからです。
それではその魅惑のカオスの中に入ってみましょう。
情報デザイン学科 映像メディアコース 山本早紀 ∣SPACE∣
“kirakira kirakira” 輝いてます!
情報デザイン学科 コミュニケーションデザインコース 今木なつな 「奇物陳思」
寿いています。水引の進化形。日本のこころですな。
キャラクターデザイン学科 キャラクターデザインコース 梅木葵 絆創交差点
このポスター、上映時間を時計の針の上に置いていて、目の残像にインパクト大です。
すばらしい!
キャラクターの看板を持っていたおねえさんに聞いてみました、このおねえさんは
NA102室に展示されている作品を丁寧に説明してくれたのです。
「あなたの作品はどれですか?」
「あ、わたしの作品はここにはなくて、地下の映像ホールで上映されるんです」
上のポスターの13時から上映の、次の写真の作品です。
これはふたりの女の子の微妙な距離感を、独特のタッチのアニメで描いたもの。
「ちょっとわかりづらいので、ご案内します」
とこの梅木葵さんが地下の映像ホールへ連れて行ってくれました。
そうでなければ、こんなところにこんな施設があるとは思わなかったです。
この作品の中で特に印象に残ったのは…
多くの人が入り混じる雑多な交差点で、時空が破れるように親友ふたりの白い空間が広がるシーン。
「とてもよく描けていました」
大学院 芸術表現専攻 八木佑介 午前二時十六分
まるで写真のよう。でもよく見ると点描なんです。
大学院 芸術表現専攻 大庭恵実 contrast
離れて見ると美少女なんだけど、近くに寄ると…
すべて親指の紋なんです。一種のだまし絵ですね。おもしろい!
美術工芸学科 日本画コース 内藤友紀子 生と死
すぐ近くに座っていたおねえさんに聞いてみました。
「これはおねえさんが描いたんですか?」
「はい、そうです」
この人が内藤友紀子さんでした。
「古代エジプトが好きで、その時代の人は心臓で物を考えていたんです。でも現代では脳で物を考えますよね、その対比を描きたかったんです」
次のNC603室は、出ました!模写コース!
このブース内の作品は撮影NGなので写真はインターネットから引用しています。
美術工芸学科 日本画コース 濱谷綾菜 『五百羅漢図 第21幅 六道 地獄 (狩野一信筆)』
(インターネットより引用)
この赤鬼!めちゃリアル!そして拷問にさらされる罪人たち!
これがそのまま模写されているとイメージして下さい。
「作品の追体験がこの絵の作者の筆使いや色彩感覚を学ぶ機会になるのです」
この絵を模写した濱谷綾菜さんの言葉です。
まったくの同感です。すばらしい!
美術工芸学科 日本画コース 馬渕沙代子 『柳二鶏(宋紫石筆)』 長崎歴史文化博物館蔵
「これは…」
言葉を失うほど美しい…
日本人の美的感覚の最高峰と形容するのがもっともふさわしい。
水墨に淡い色で二羽の鶏が描かれています。
「これは、没骨法(もっこつほう)で描いてあるんです」
出た!没骨法!昨年の卒業展で初めて知った描き方の名称です。
この絵の模写作者・馬渕沙代子さんの説明です。
「宋紫石は清の沈南蘋(しんなんぴん)の系統で、これは中国画の要素を取り入れつつ
も、日本的美しさをも表現した絵ですね
写真ででも、ご紹介できないのが惜しいです。
…明治古都館で観た『鳥獣人物戯画』(平安・鎌倉時代)…
…平成知新館で観た『十二類絵巻』(室町時代)…
…同様に『日高川草子』(室町時代)…
これらの絵巻物には、ユーモアにあふれ、とても魅力的な異形のモノたちが生き生きと
描かれています。
かつてのこの国には、あのような異形のモノたちが生きていた。
そしてそれらを滑らかな筆によって描いた絵描きたちもいた。
(…現代にも、そんな絵描きさんはいないのかな~…)
と思っていたら…いた~!!!
くるっと入ったNC406ブースのすぐ左側に!
美術工芸学科 油画コース 松村咲希
『私はショートケーキが嫌い』
「わっ!なんだこの絵!」
一瞬で惹かれました。
これは、タダものではない…
「これは、おねえさんが描いたんですか?」
すぐ近くにいた学生さんに聞いてみました。この学生さんが松村咲希さんでした。
「はい。私、ショートケーキが嫌いで、それをずっと親に言えなかったんです」
子供のころから長い間胸の奥に抱えていた鬱屈が、このような異様な自画となってこの世に現出したのです。
「こんな絵にはなかなか出合えないよ…」
とあまりの異表現に瞬きを忘れるほど呆気にとられていると、
「ほら、ここ、口と鼻がふたつあるんです」
「あ!ほんとや!」
直感で考うるに、食べたくないショートケーキを偽の口で食べ、その匂いを偽の鼻で嗅がざるをえなかったと、そういうことなのでしょう。
『Narcissism』
「こっちの絵のこの黒く丸いのは鏡で、その中にいるのは毛虫人間なんです。それでこっちにいるのが蛾人間で、後ろの黒い影がスパイダーです」
あはははっ!
もう、ボクのツボにぴったりはまって、笑いが止まりません!
「ま、まさしく異形…現代にもいた…異形の絵描き…」
…ザワワ…サワワ…
NC406ブースを後にして4階から3階に下りてきて廊下を歩きながら、もうお腹いっぱいや、と思っていたら、潮が満ちるように静かに目の前に異様な光景が!
美術工芸学科 油画コース 市川結依
『彼は水の流れる音だけを聞いた』
…ザワワ…サワワ…
廊下から壁、その先の流し台から天井に至るまで、黒い物体。
これまたすぐ近くにいたおねえさんに聞いてみました。この人が市川結衣さんでした。
(右下に流し台、天井にうっすら蛍光灯が光り、その下から流れる水の音が聞かれます)
「これは何か…貼ってあるみたいだけど」
「はい、これです、マスキングテープなんです」
とサンプルのテープを見せてくれました、なんの変哲もない黒いテープ。
「これらの無数のテープ群は、わたしの、その場にいることの意味、を表しているんです」
なるほど~、目をつむってその作業風景を想像すると…深いです。
そのなんの変哲もないテープがこのように異常数貼られていることによって、予想もしない化学反応が起きたようで、ボクにはこれが、
『不思議の国への入口』
に見えました。そう、異界への。
もしかしたら、すぐ上の4階で出会った松村咲希さんのSaki Worldへの入口かも?
…ザワワ…サワワ…
「はぁ~…ここにもいたわ、異才のアーティスト…」
市川結衣…あれ?タレントにも同じ名前のひと、いたよな?
中里楓です。「京都をもっと好きになる!」「アートが好き!」「カフェが好き!」この3つのコンセプトをもとに京都の魅力を探し歩いてます。時空的にも空間的にも京都にはひとを惹きつけるものがいっぱい。そんな京都的小宇宙を精いっぱいご紹介します。