『琳派は、間違いなく現代にも生きている』
京都御所の西隣にある和菓子の老舗虎屋さんに、こんなにしぶいギャラリーがあるとは知りませんでした。
その落ち着いた内装のなかで展示されていた作品は、まさしく四百年という時を越えてこその『現代』の息吹を感じるものでした。
虎屋 京都ギャラリー
琳派四百年記念祭
IMA RIMPA -現代の琳派・クロスオーバー展-
2015年9月1日(火)→25日(金)
最初に、「琳派」とは?
簡単に調べてみると…
「桃山時代後期に興り、本阿弥光悦と俵谷宗達が創始し、尾形光琳・乾山兄弟によって発展し、酒井抱一・鈴木其一が江戸に定着させた造形芸術の流派」
らしく、こういった過去の作家の名前に疎くても、あのインパクト十分の「風神雷神図」は、だれもが必ずどこかで目にしたことはあるでしょう。
そして今回のこの琳派四百年記念祭は、琳派における文芸復興という意味合いを持っている、とギャラリーを後にするころには思えるようになっていました。
Universe – 地水風神四季花鳥図 雷神 イラストレーター上田バロン
俵谷宗達の雷神と比べると、大分とスリムになり、身体のラインも太く力強く描かれています。
(なんとも金属的で、メタリックな絵だ…)
背景の金箔といい、体躯をめぐる輪郭といい、そこから受ける印象は、ボクの脳裏に今の現代社会は明治以降の金属的産業の発展によって形造られたということを思い浮かばせるのです。
ゆえにこの鈍く煌めく風神雷神図が誕生したのではないかと。
それともうひとつ。
Universe -地水風神四季花鳥図 風神 イラストレーター上田バロン
出雲大社では60年ぶりの平成の大遷宮が行われ、御本殿が新しく生まれ変わったとのこと。
この出雲大社に代表されるように、この日本では古いものを新しく生まれ変わらせる習慣があって、今回の”IMA RIMPA”もそれに倣ったものだと思うのです。
それも、ただ単にコピーを作ったり、原画を修復するということではなく、過去の輝ける名作を核にして、現代の若き才能を注入することによって日本の芸術が未来へ向けて進化する、ということを意味していると。
Heaven and Earth 天と地 虹蝋彩手染金彩本振袖
デザイン:上田バロン ディレクション:宮川徳三郎 染め:松本伸
この振袖にも見入ってしまいました。
そのデザインの素晴らしさもさることながら、このようにくっきりと染め上げるその職人の業をくみ取ることができるからです。
Dragon Volant(黒いトルソー) Libertē(白いトルソー)
ネイリスト 井田智子 a.k.a.ROSSA
男性の目からすると、ネイルの良さはいまひとつ分りかねると言うのが正直なところです。
でも、キラキラと魅せる妖しき光…まるでアンティークジュエリーのようです。
琳派にインスパイア 水玉琳派 京都美術工芸大学3回生川口京介
琳派に代表される三色、群青・深緑・朱で表現された作品。
「水玉と光を使った作品を作りたかったのです」
と語ってくれたのは、在廊していた川口京介さんです。
その中に七色の美しさを隠し持つ、「ヒカリ」をその表現要素のひとつにした作品で、この作品をじかに観ているときには感じなかったことだけれど、これはまだ完成してはいないのではないか、とボクには思えます。
川口さんは芸大3回生の若者です。若者特有の粗さが作品にあり、でもそれは今しか表現できない貴重なものでもあり、まだ彼の才能は伸びる可能性を秘めている、ということも意味しているのです。
だいぶと大人になってしまったボクのような人間には、かえってそれがうらやましくも感じられます。でも…やはり、
「彼らの才能は称賛に値する」
中里楓です。「京都をもっと好きになる!」「アートが好き!」「カフェが好き!」この3つのコンセプトをもとに京都の魅力を探し歩いてます。時空的にも空間的にも京都にはひとを惹きつけるものがいっぱい。そんな京都的小宇宙を精いっぱいご紹介します。