坪庭から吹いてくるそよ風はとても心地のいいものでした・・・
重要文化財 杉本家住宅 名勝 杉本氏庭園
『京町家の日常風景 一般公開』
“If you are a Japanese,you must feel so comfortable in this house.”
「あなたが日本人ならば、この家にいると必ず心地よく感じるはずだ」
江戸時代に呉服商であった杉本家の邸宅は、京都の町のただなか、下京区綾小路通新町にあります。玄関を通り、露地庭に面した部屋の畳の上に胡坐をかけば、この独り言がおのずと口をついて出てくる、そんな町家です。
「この軒下の木は、一本杉なんですよ」
と、係のご婦人からこの家の説明を聞いていると、露地庭の手水鉢の水たまりで水遊びをしている一羽の小鳥が・・・
「わぁ!なんてかわいくて、風流な・・・」
ゆったりとした時間が、ここでは流れています。
『歳中覚』
これは古くから続く旧家には付き物の記録帳です。一年の行事などについてこと細かく書かれています。その中にはお正月のお料理の献立もあります。
「この流れるような字体、昔の人はよくこんなの読むことができましたね~」
このような記録帳を見るだけでも、この空間には歴史という時間が流れていると感じます。
「黒橡(くろつるばみ)か褐色(かちいろ)か」
黒橡(くろつるばみ)とは橡(櫟=くぬぎの実)の煎汁を染料とし、鉄媒染した紺黒色。
褐色(かちいろ)は紺より更に濃く暗い藍染の色。
この戸棚の色・・・「なんて、深いんだろう・・・」
おくどさん
以前、冷泉家を見学したときに、このようなカマドのことを京都では「おくどさん」と呼んでいると知りました。実際にこのおくどさんで炊いたご飯を食べてみたいものです。
簾を通れば、厳しい陽差しもこんなにやわらかくなって・・・
表を歩けば汗が吹き出すのに、ここに佇めばその暑さもぎりぎりのところでしのげます。
「陽差しと陰 吹く露地風に 時ゆるり (字余り)」
中里楓です。「京都をもっと好きになる!」「アートが好き!」「カフェが好き!」この3つのコンセプトをもとに京都の魅力を探し歩いてます。時空的にも空間的にも京都にはひとを惹きつけるものがいっぱい。そんな京都的小宇宙を精いっぱいご紹介します。