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アートギャラリー北野 山下杏子/和田優紀「たそかれ、誰そ彼」展|中里楓のアーティスティック探訪 126

投稿:2016年11月28日

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「咲く」 山下杏子


"She is a young sparkle talent who gives me a brave step."

アートギャラリー北野は、三条河原町東入ルにあるギャラリーで、いつもフラフラっと入るところです。たまたま寄ったこの日にも、すばらしい絵に出会うことができました。


京都市立芸術大学4年生 山下杏子さん


そのボクを魅了した絵を描いた絵描きさんです。

いくつかの絵を観た後に、在廊していた山下さんにお話を聞くことができました。

「これらの絵を描いたのは、おねえさんですか」

「は、はい!京都市はくぶつ・・あっ、じゃな、あの、京都市立びじゅつ・・はっ、でもな・・きょ、京都市立芸術大学の、山下です!」

ははっ! 緊張のせいでしょうか、自分の学校の名前を間違えるなんて、なんてかわいらしい人なんでしょう。


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「匂零れる」 山下杏子


「この、半開きの目、それと口・・・とても妖艶ですね」

「はい、エロっぽく見えるように、そのように描きました」

ちょっぴりおっちょこちょいな娘が、女性の魅力あふれるこのような絵を描く・・・

見た目はかわいらしくても、絵に対する姿勢は凛としたものを持っていて、ちゃんと考えて描いていると感じることができます。

"Wow! Just this is my type!"(まさしくボクのタイプ!)

と、心の中で叫んでしまいました。


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「匂零れる」 (部分拡大)


この下着の透け具合も見事です。

今回のこの展覧会では、あちこちの作品の中にこのような透け感を見つけることができます。


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「咲く」 (部分拡大)


「この女の人の髪の生え際・・・よく描けていますね~!」

さらに冒頭の「咲く」という絵を間近で見れば、絵描きの神経の鋭さを感じることができるのです。

「この女性のモデルはいるのですか」

「いえ、モデルのような具体的なものはなくて、わたしのなかにあるイメージみたいなものをもとに描いています」

この言葉にも、グッと来ました。

今までの彼女の経験で、彼女の中に蓄積され熟成し、彼女の才能の元になる多くの細胞を経て浮かんできたもの・・・

「しかも、描いているうちにだんだん自分に似てくるみたいで・・・」

「あのボクもたまに模写するのだけど、この前は源頼朝像を模写してみたら、あのほほの部分がうまく描けなくて・・・美しい線って、難しいですよね・・あの、線に対する心構えみたいなものってありますか」

「そう・・・美しい線を描くって、集中力が大事で、お腹がすいていたりお腹がいっぱいだったり、調子がわるかったりすると描けないもので・・・」

「ふふっ!お腹がすいてって!」

思わず笑みがこぼれてしまう、正直なお答えです。


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「日暈」 山下杏子 (部分拡大)


「この花びらの透明感・・・よく描けていますね」

「これは、ホウカイマツを使って描いているんです」

「ホ?ホウカ・・・なんです?」

「方解末、です。膠で溶かすと透明になってしまって、筆で描いて乾かないと色が出てこないんです」

へぇ~!方解末!岩絵の具にそんな名前の粉末があるのですね!


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「日暈」 山下杏子


「この絵を描くときは、空気感を大事に描きました」

日本の情景を描くときには、この『空気感』という概念がとても大事になってくる、と素人ながらボクも思っていました。

このじめっとした、大気中に湿気を多く含んだ国を描くにはどんな素材が適しているのか。

この若き絵描きさんも、そのことをきっと直観で知っているのです。


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「咲く」(部分拡大)


「・・・この花の、真中あたりの膨らみ感からなだらかな球さを残しつつ、回りをぐるっと半透明な花びらが描かれて・・・もう・・・すばらしい!」

「この花も、わたしのなかのイメージを元に描いていて、そのままだと牡丹に見えますけど、本質は色んな花が混ざっていてこんな感じに」

と、手ぶりを加えてつぶらな黒い瞳の山下杏子さんが説明してくれます。ボクは一枚の絵を観るのに、いつもだいたい4~5分かけて観ます。数十秒でその前を通り過ぎてしまうようなことは、極力しません。ボクの心の琴線に触れない絵はべつだけど。

長い時間をかけて白いキャンバスと対峙し、悩み苦しみ、ときに神がかったように筆を走らせてきたであろう絵描きたちへの、それがボク流の礼儀です。

その絵の中に、絵描きたちの才能のほんの小さな光でも見つけることができたときの喜びは、それはもう格別です。その光を、この山下杏子も持っています。

ボクがこのように現代作家のレポートを書くことによって、少しでも彼らの力になれればこんなにうれしいことはありません。

山下杏子さんにお暇の挨拶をし、ギャラリーを後にして京都の雑踏の中に戻ってきても、今回も思うことができました・・・

「あ~!今日もいい絵に会えた~!」


(※文頭英文約:彼女はボクに勇気の一歩を踏み出させてくれる、若き光り輝ける才能です)


会期:2016年11月16日(水) - 11月21日(月)(既に終了しました)

会場:アートギャラリー北野 2階

出展:山下杏子 和田優紀



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