コンテンポラリーアートジュエリー
gallery C.A.J.
「追悼 坪文子のしごと」
2017年10月10日(火)~10月28日(土)
If you disliked some people,but what heals you is someone's faculty eventually.①
京都国立博物館で開催中の「国宝展」で、あまりの人の多さに作品を満足に鑑賞できずに辟易し、言い知れぬ不満をお腹の奥に携えたまま、市バスに揺られて次に訪れたのがこのギャラリーでした。既成概念から解き放たれて製作されたジュエリーを取り扱うギャラリーで、ボクが大好きな場所のひとつです。
このgallery C.A.J.では現在、「追悼 坪文子のしごと」という展覧会が開かれています。
惜しいことに、坪さんは今年の中旬にお亡くなりになられました。
坪さんとは数年前、同じこのギャラリーでお会いして、ほんの数分お話しただけの間柄ですが、当時ギャラリーを訪れていた人すべてが坪さんを慕っているということはよくわかりましたし、そのジュエリー作品を観ればその世界観の広さに驚かされるのは間違いないのです。
「こんな形でも、リングなんです。意外と指にしっくりくるんです」
これを見た時点ですでに、既成のジュエリーの概念が吹っ飛びます。
(あぁ・・・なんとなく気持ちいい・・・)
目に見えぬ呪縛から解放されたかのような感覚を、脳のどこかで感じる・・・
「そんなでも、ネックレスなんです」
久しぶりにお会いしたC.A.J.さんがこのように作品について説明してくれます。
「え~!これが指にはめるリング!アンコウ提灯みたいなのにネックレス!」
坪文子ジュエリーの醍醐味はそんなところにあります。
一見奇抜でジュエリーらしく見えなくても、最後にはきちんとジュエリーとしての役目を果たしていると。
そこには遊び心が満載で、色んな事に興味を持ち、少々困難があっても挑戦し、失敗したとしてもそれから学び、人生って楽しく生きるものと、きっとそう考えていた坪文子さんの軌跡を教えてくれるジュエリーなのです。
「笑ってるお尻!」
「まるで音が聞こえるよう」
数年前にわずか数分間しかお話していないのに、坪さんのことがわかるのかと問われれば、
ちょっと困ってしまうかもしれません。
でもその他の多くの芸術家たちと同じように、数々の作品を通して坪さんの才能と生き様を知ることはできると思うのです。
「ジュエリーの王道・豪華さと遊び心」
芸術についてはずぶの素人であるボクが、京都中の博物館・美術館・ギャラリー・芸大作品展に足を運び、広い年代のアーティストの作品を鑑賞し、ときには現代作家たちと交流してきたからこそ言える、芸術作品には必ずその「人」が反映されると確信しているからです。
「男女雇用機会均等法が施行されても、以前と変わらず女性の地位が低かった時代を反映した作品です」
C.A.J.さんの説明通り、鋸状のギザギザが戦う意志を表していると思えます。
と同時に、
「ギィュゥゥゥィィィ~~~!!!」
と、神経を逆なでするような鈍い金属音も聞こえてきます。
それは、坪さんを始めとする当時の女性たちが感じていた、
(男たちと法律的に平等になったのに!なんだこの現実は!)
という強いもどかしさ、なのです。
刃と刃が向き合っている構図が物語っています。
「台形ネックレス 可動式」
これなんかもおもしろい!
台形の対角線上の2点を動くようにつなぎ合わせてあり、よく見るとその中に多角形の“星”が出来上がる仕組みになっています。
遥か古に思いをはせれば、人類は青銅や金や鉄を加工鍛錬することを文明発祥の端緒としてきました。金属を加工すること、それこそ人類が人類であるために必要なことなのではないか、と思ったりします。
それらの金属がジュエリーとなって人々を美しく飾り、内面から元気にしてくれるとしたら、とても素敵なことじゃないでしょうか。
「鬼籍に入ってから発見されたブローチ」
これこそ坪文子ジュエリーの無限の可能性を内包した作品!
薄銀鼠の宇宙石に無限の星の煌き
未知のフロンティアを旅する地図こそ
“自由”を髣髴と感じさせる金のフレームなり
「本当の自分」
を引き出してくれるジュエリーです。
Fumiko Tsubos' jewelry will still continue to juice living us up, after she passed away. ②
英訳注 ①もしあなたが誰かを嫌いになったとしても、あなたを癒すのは結局だれかの才能なのです。
②坪文子のジュエリーは、彼女が死んだ後でも、生きている私たちを元気づけ続けるのです。(鬼籍の坪文子ジュエリー、生ける私たちを励ます)
コンテンポラリーアートジュエリー
gallery C.A.J.
OPEN 13:00~18:00
CLOSED Monday,Tuesday
京都市中京区富小路御池下る松下町129
Tel 075-211-3648 〒604-8093
中里楓です。「京都をもっと好きになる!」「アートが好き!」「カフェが好き!」この3つのコンセプトをもとに京都の魅力を探し歩いてます。時空的にも空間的にも京都にはひとを惹きつけるものがいっぱい。そんな京都的小宇宙を精いっぱいご紹介します。