Report & Review ボランティアライター・ブロガーの皆様からお寄せいただきました
レビュー・レポートを掲載しています。

ボランティアライター・ブロガーとは

妙心寺 退蔵院 襖絵ツアー

投稿:2013年9月12日

moriyasu201309-1(1).png

こんにちはー。8月27日に 妙心寺 退蔵院へ行ってまいりました。
400年ぶりに襖絵を変えることにされたそうで、新しくお抱えにした襖絵師と
その制作過程のお披露目会がありました。その名も「襖絵ツアー」。
妙心寺の敷地はとても広い。

moriyasu201309-1(2).jpg

まずはここ退蔵院へ集合して住職さんからお話がありました。
伝統技術の継承、人材育成がこのプロジェクトの目的の一つだとか。
絵師だけでなく、ふすま自体も新しく作るので、その職人さんも20代の若手。

ふすまは日本での需要が減るのに対して、海外では注目されているのだそうです。
ドアと違って、スペースを取らない上に、絵が描けるというのがよいのだそうです。
400年前の作品はこちら。このお部屋の右手側の襖に描かれています。

moriyasu201309-1(3).png

これがガラリと変わってしまうのですね。2~3年後に完成し、お披露目になるのだとか。

お話のあと、お庭の散策や寺院の見どころをガイドしていただきました。
窓の外のお庭は、窓枠をふちとした絵に見えるように作られているそうです。
常緑樹を使うことで、四季の変化がないようにしている。「絵」だから、変化がないように。

moriyasu201309-1(4).jpg

moriyasu201309-1(5).png

散策場面もご紹介したいですが割愛!(瓢鮎図と水琴窟が面白かったです)
是非みなさんもお出かけください。

さて、移動しまして、いよいよ絵師・村林由貴さんの描いた襖絵がしつらえられた壽聖院の本堂ならびに書院へ。こちらは襖絵のための習作です。

moriyasu201309-1(6).jpg

moriyasu201309-1(7).jpg

たっぷり429羽のスズメさんが描かれています。
本番で絵師がふすまに描くときには、何も見なくてもさらさらと筆が動くようにするためにたくさんたくさん練習されたそうです。初期段階では色の濃淡も分からず、大きさも大きめだったとのこと。

あまりにスズメばかり描いていたので、息抜きにカエルさんも描かれた、というのが以下。

moriyasu201309-1(8).jpg

かわいいですね。実はこれらの絵は長い長いロール紙に描かれています。

moriyasu201309-1(9).png

このスズメさんの絵は、稲穂と組み合わされて襖に描かれていました。
稲穂も、農家に泊まり込んで取材(スケッチなど)したそうです。
スズメたちは表情豊かで大変可愛らしい。12枚ほどある襖全体で物語が成り立つように仕上げられていました。(撮影はNG)

このスズメの襖絵を描く前に、腕ならしに書院の襖絵を数点描かれていて、そちらも拝見させていただきました。
そこはもう、襖いっぱいに迫力満点の動植物が描かれていました。
それらに比べると、スズメの襖絵はすっきりして落ち着く感じです。
うるさく描かない、というバランスも修行されたそうです。
描きたいと思ったけれど、感情を抑えて仕上げたそうです。
お寺からは、あくまでご本尊がメインであることと、お庭とのバランスをとるようにとだけ注文されて、あとは全て絵師の自由創作。
様々な試行錯誤の上に完成が成り立つのですね。

絵師の村林さんは年配のツアー客を前に、一生懸命説明をしてくださって、彼女の頑張りがよく伝わりました。
自作について人前で話すというのも大変だろうなと思います。
絵師の選抜は公募だったそうで、どうしてやろうと思ったのかたずねると、

「例えば、キャンパスのように持ち運びができるような絵ではなくて、絵で空間を作りたかったんです。」と。

空間に絵があるのではなくて、絵が空間になることをされたかったのですね。
この部屋に来る人たちの、心の置き場所を思案されて構想を練られていることも、解説されていました。

どうして絵師に自分が選ばれたと思いますか?と伺うと、
「んー、わからないですけど、根性をかわれたのかもですねえ…。襖絵も日本画も全くしたことが無かったですから、技術ではないですし…」
きっとお寺さんに人柄を見込まれたのでしょうね。
ツアー客はみな頑張ってねと若い絵師にエールを送りながら退場しました。

帰りながら、様々に考えるところがありましたが、
一番は、自分が死んだ後もずっと作品が残るというのは、どういうことだろう ということでした。
襖の絵は、プリントして大量生産することだってできますが、心を込めて制作する、その価値は計り知れません。
時代が流れても、見る人はそれを受け取ることができるのだと思います。
ではまたー。

moriyasu201309-1(10).jpg



  • 京都で遊ぼう総合TOP
  • 京都で遊ぼうART
  • 京都で遊ぼうMUSIC
  • 京都で遊ぼうSTAY
  • 京都の銭湯