いつも美術館で見る茶碗や、茶釜。
「~家伝来のもの」だったり、「~好みの名品」といった解説が書かれています。
それだけでも十分ですし、その美しさはよくわかります。
でも、茶器は道具。
使い方がわかれば、もっと美しさが理解できるはず。
けど、茶道って敷居が高くて難しい?
そう思っていましたが、今回ご紹介する茶道資料館では気軽にお茶の体験ができるんです。
しかも、入館料だけで体験はなんと無料!
(一週間前までに予約が必要です。)
これはやるしかない。レッツ茶道!
というわけで、展示を見る前に体験させて頂きました。
まず、お茶会の役割を教えてもらいます。
お茶会に呼ばれる人は「客」、お迎えする人は「亭主」となります。
亭主は、お茶をたて客に振舞うことはもちろん、お菓子や床の間、お庭まで、客にお茶を楽しんでもらうために準備するのです。
そしてお茶会が始まります。
客はまず、床の間を拝見。
掛け軸やお花には、亭主からのメッセージがこめられているんです。
冨貴是吉祥。
頭の中で?がたくさん飛び交いました。いきなり難しいではないか。
そこで先生から「いろんな解釈があるのですけど、豊かな事をすることは、いいことにつながるといった感じです。」と解説して頂きました。
「あまり難しく考えずに、どうぞリラックスして、お茶を楽しんでくださいね。」とも声をかけて頂き、少し安心。
今日のお菓子は、梅の花のかわいいお菓子。
もうすぐ梅がきれいな季節。見た目にも満足です。
「お菓子を食べたあとにお茶を頂く。決まり事の一つなんですが、そのほうがお茶がおいしく感じられるんですよ。」
これがお茶の道具一式です。
「決まり事はたくさんあるのだけど、一つ一つに全部意味があるんです。」
特に注目した決まり事が二つ。
一つ目は、ふくさで茶道具をふく、「清め」
もちろん、そんなことしなくてもきれいなはず。
「お客様の前で、さあどうぞと思いながら清めていくんです。」
これぞ、おもてなしの心なり。
もう一つが、「吸いきり」
お茶を頂いたあと、残った泡を音をたてて、ズズッと吸いこんでしまうんです。
「マナー違反ではなくて、お茶碗に残った泡を全部飲み干すんです。」
「からっぽのお茶碗を、裏側まで拝見するためですよ。」
茶釜や茶さじなど、いくら名品だと思っても、客は手に取って見ることはできません。
そのかわり、お茶碗だけは絵柄から裏側まで、じっくりと見ることができるんです。
こちらも梅の花の柄で、春を感じられるきれいなお茶碗でした。
お茶の体験を終えてみると、なんだか心がほっとします。いい気分。
心がほっとする=心が豊かになる。
豊かなことをすることは、いいことにつながる。
掛け軸の?が、理解に変わった気がしました。
お茶の体験を終え、展示室へと向かいます。
今回の展示は「新春の取り合わせ」展。
芽張柳棗(なつめ)というお茶入れは、新春の柳の芽が漆塗りで見事に描かれており、とてもきれい。
さらには伊達政宗が正月の挨拶を記した書などもあり、季節に合ったきれいな展示だと感じます。
なかでも、円能斎という方の記した「如意」という掛け軸。
力強いタッチで如意と書かれているのですが、意味は「思いのままに」だそう。
思いのままに、お茶会を楽しんでくれという、亭主の思いがこめられているのだろうなと感じます。
こんなこと、体験で学ばなければ理解できなかっただろうなと思うんです。
「~好みの名品」とは単なる美術品ではなく、「持ち主のお客様に対するもてなしの心」がたくさん込められた名品なのだろう。
茶道とはなんぞや?
それはもてなしの心。改めて勉強になりました。
館内には小さいけれど、きれいなお庭もあり、眺めながらお茶を飲むこともできます。
展示だけでも素晴らしいのですが、お茶の体験をしてみると何倍も楽しめると思います。
もてなしの心を体感してみてはいかがでしょうか。
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学生時代を過ごした京都が大好きで、お寺や美術館、雑貨屋さんなどをぶらぶらと散策しています。特にお寺には、ヒマさえあれば訪れています。 京都の魅力について、少しでも伝えることができればいいなと思っていますので、よろしくお願い致します。