今回ご紹介する龍安寺は、なんとも不思議なお寺です。
世界遺産にも選ばれていて、有名なお寺なので行ったことがある方も多いと思います。
以前ご紹介した重森三玲さんのお庭のように、豪快な石組みがあるわけでもなく、ぽつぽつと石が並んでいるこのお庭。
何が不思議かと言いますと、みなさん必死に何か考えておられるのです。
このお寺は外国人の方も多いのですが、国籍に関係なく、何かを考えながら方丈から石庭を眺めておられます。
それもそのはず。パンフレットにも、「石庭」と軽く紹介されている程度で、お庭にも解説がないのです。
それは不親切なのではなく、誰が何の意味をこめてこの石庭を作ったのか定かではないため。
謎が謎を呼び、よりこの空間に何の意味がこめられているのか不思議になります。
また15個ある石を、全て見ることができる位置はない。
こんな難しいつくりになっている石庭。
今回はこの石庭にこめられた意味を、みなさんに解き明かせてみせます!
という気持ちでいたのですが、やはりわからない。
せめて、15個全て見える位置を探し出そう。
そう考え、いろんな位置から石庭を見てみました。
もっとも石庭が広く見えるであろう、方丈の中央部分から見ても13個。
やはり見えません。
当然カメラにおさめることもできないのです。
みなさんに、龍安寺の庭の秘密をご紹介することはできないのか…
少しがっかりしながら、石庭を後にし、次の名物を見にいくことに。
そして石庭の裏側にある、龍安寺のもう1つの名物。
水戸黄門が寄進したといわれる、つくばいです。
銭形のつくばいで、四角の穴のまわりに「五、隹、疋、矢」と書かれています。
この四角の穴を漢字の「口」として、それぞれの漢字のへんやつくりに見立てると…
「吾、唯、足、知」
われ、ただ、たる、しると読むことができます。
こちらには解説の看板も立っており、その意味合いを知ることができます。
しかし、これまた難しい。
もう少し詳しく理解するために、お寺の方にたずねてみると…
「禅の教えで、ただ、今あるもの(足りているもの)を、知りなさい。という意味ですよ。」
「欲張らずに、今自分にあるものを見つめ直してみてください。案外それだけで事足りていて、満足できると思います。」
「あとはね、石が全部見えないお庭へのメッセージの意味合いもあると言われているんです。全部見えることにこだわらなくても、庭はきれい。」
なるほど。解説して頂いて石庭の謎も少し理解できた気がします。
石庭が何を意味していて、どうやったら全ての石を見られるかにこだわりすぎていたのです。
ぼくなりの答え。
ただ、目の前に広がる芸術(と、あえて呼ぶことにします)を楽しもう!
そう思いながら、もう一度石庭を見に行きました。なんだかすっきり。
ここまで、石を全て1度に見ることはできないと書いてきましたが、裏技があるのです。
お寺に入るとすぐにある、石庭の模型です。
これなら全ての石のありかを、見ることができます。
目の不自由の方向けの、点字での解説もありましたよ。
あとは、つくばいグッズも売られていました。
そして方丈の外へ出て、池をぐるり。
この鏡容池は睡蓮の浮かぶきれいな池で、こちらは深く考える必要もなくきれいです。
周囲はもみじや桜が植えられていて、苔もきれい。
秋になるともみじが一気に色付き、おすすめです。
龍安寺が建てられた当初は、実は石庭はなく、この鏡容池がメインのお寺だったのです。
まだまだ謎だらけの龍安寺。
春にはしだれ桜が咲き、石庭に花をそえるように見え、とてもきれいだそうです。
ぼくもまた春に行ってみようと思っています。
みなさんも、龍安寺の自分なりの答えを見つけに行かれてはいかがでしょうか。
学生時代を過ごした京都が大好きで、お寺や美術館、雑貨屋さんなどをぶらぶらと散策しています。特にお寺には、ヒマさえあれば訪れています。 京都の魅力について、少しでも伝えることができればいいなと思っていますので、よろしくお願い致します。