北白川疎水のうっそうと木々の茂った小道にそれはある。生垣に囲まれ昔の洋風建築の瀟洒な佇まい。散歩の途中で偶然見つけ、いつか新聞でも紹介されていて一度行きたいと思いながら公開が毎週金・土の10時~16時なのでついつい機会を逃していたがこのほど春の特別公開がありようやく行くことができた。
入館料500円(維持修復協力金)を払う。ボランティアのおじさん(いかにも紳士然としてかっこよく、ユーモアたっぷり)の説明付きだった。
私は古い建築物に興味がある。昔の建物は重厚で丁寧に作られておりしかも意外と建築家や施主の遊び心というかしゃれっ気がドアノブとか照明、欄間、などの細かいところにあり、それを発見して一人ほくそえむのである。
この洋館は昭和2年に京大の教授であった(昭和天皇に生物学を教授されたそうだ)駒井卓博士とその奥様によって建てられた。設計はあのウィリアム・メレル・ヴォーリズである。玄関を入るとまず天井が高く、広い居間、その南側にサンルーム(壁はパステルカラー)出窓のようなベンチシートがありその下は収納庫になっている。
サンルームの隣には唯一の和室。サンルーム側の戸は板戸で和室側はふすま。居間の北側はダイニングで伸長可能な机(当時にもあったのですね)があり学生たちが来たときに活躍したのだろう。そこから広い庭に出られるテラス(藤棚がある)がある。
二階に行く階段がまた素晴らしい。一段の高さが低く、角が丸まっていてらせん状になっていて踊り場がなくボランティアの方によると「つい上まで上がってしまう階段」だそうだ。二階は寝室、書斎、それと特筆すべきはトイレ。
今は当たり前だが当時二階にトイレのある家は珍しかっただろう。寝室の横にはやはりサンルーム。ここにロッキングチェアが置いてあり腰かけてみてくださいといわれるままに座るとなんと正面には大文字の「大」が!!ここで京都人ならかなりの確率で歓声をあげるだろう。一緒に説明を聞いていた横浜の一行が「大文字焼きねっ!」って言ってたけどー大文字焼きって言うなーーと心の中でツッコむ。送り火と言ってほしい。どっちでもいい問題ではないと思うが。
さて 観光客が団体で庭の説明をきいておられたのであまりうろうろできなかったが結構広いお庭で隅の方には温室もあった。広ーい敷地にこじんまりした洒落た洋館、遠くには大文字・比叡の山々、こんなところに住んでいたらさぞや研究もはかどり落ち着いた生活をしておられたんだろうなぁーとしばし会ったこともない駒井博士に想いを馳せた。
駒井家住宅(京都ミュージアム紀行)