高瀬川一の舟入の南角にこのような寺院があるとはここらあたりを何度となく通りながらまったく知らなかった。
ホテルオークラの北側の道ぞいで、ホテルに隣接している。ちなみにホテルオークラ(旧常盤ホテル)を開業したのがここの所有者であった伊集院兼常である。
ここはもとは長州藩の御屋敷で その跡地に当時の政財界人たちが別荘を構えたわけだが 兼常は実業家として活躍したのみならず お茶をたしなむ数寄者であったそうだ。
建造物は京都市指定有形文化財に、庭園は京都市指定名勝となっている。玄関を入るとまず目に入るのが大久保利通の書いた額。幕末・新撰組・薩摩藩・長州藩・坂本龍馬・・・とイメージは広がってゆく。書院では10分ほどのビデオが流されておりこの建物の沿革を知ることができる。
そしてその奥の縁側から眺めるお庭が素晴らしい。午前11時ごろには太陽の光が池に反射しちょうど書院の障子がスクリーンのようになって映し出される。そこまで計算して建物と庭園を設計したのだな、と感心する。
高瀬川から水を取り込み建物の下を通り庭の中央に大きな池となり再び高瀬川に帰っていく仕組みになっているのだが 池の周りはもみじが若葉を芽吹き始めたところで 秋の紅葉もさぞや美しいのだろうなと想像できる。
書院の隣には3畳ほどのお茶室がある。躙り口の正面と左の面は壁で大きな窓があり狭いにもかかわらず とっても開放的、なぜかと思えば下に池があり宙に浮いているというか、池の中に浮かんでいる風情・・・浮遊感がある。
その奥には広間 ここでは緑茶とお菓子をいただいた。縁側から降りてお庭にも少し歩いて行ける。 灯篭や手水鉢がそこここに置かれアクセントとなっている。
木屋町という繁華街にありながら「市中の山居」として静かな佇まいで 庭を眺めていると時のたつのをしばし忘れるようでつい長居してしまった。
明治日本の発展を担った近代数寄者 伊集院兼常の邸宅 「廣誠院」昼の特別公開と夜間ライトアップ「維新の光」