アーティスト・イン・レジデンスとは、芸術制作を行う人物を一定期間ある土地に招聘し、その土地に滞在しながらの作品制作を行わせる事業のことだ。
今回、京都芸術センターに招聘されたのが、ノルウェー出身のベティーナとスウェーデン出身のシモン。この二人は、約3ヶ月間にわたり京都の人と魚料理を作り、食卓を囲んだ。
なぜ魚料理なのか?日本人と北欧人が共通してよく食すのが、「魚」であるからだそうだ。そんなプロジェクトの様子が、京都芸術センターのギャラリー南に展示してある。
ギャラリーには、ベティーナ・シモンと共にこのプロジェクトを作り上げた参加者の写真が展示してあった。皆良い笑顔だ。「料理する」ことが苦痛な人はよく見かけるが、「食べる」ことが苦痛だという人はなかなかいない。食卓に並べられた料理を前にすると、どんな人でも顔を緩ませずにはいられないのだ。
その隣には、参加者とベティーナ・シモンが作った魚料理のレシピが掲載してある。日本の魚料理、北欧の魚料理、さらには、日本と北欧のハイブリッド魚料理...「料理する」ことが好きな人にとっては、たまらないだろう。
そして、ギャラリーの真ん中に佇む大きな白いオブジェ。京都芸術センターのギャラリーは真っ白なので、ぱっと見ただけでは、山のあるオブジェのようにしか見えない。よく注意して見てみると、五重塔、ムーミン、万里の長城、自由の女神などが置いてあった。なるほど、日本には五重塔があり、ムーミンはフィンランドが生みだしたキャラクターである。そして、万里の長城は中国、自由の女神はアメリカにある。この大きな白いオブジェは、世界をあらわしているのだ。
「食」というものは、人間の普遍的行為だ。文化や言葉は違えども、どの国の人でも「食」は共通のものなのである。人間は、「食」を共にすることで精神的距離が縮まると言われているが、国境を越えてもそれは実現できるのだ。「食」を通じての国際交流というのも、なかなか悪くない。
私は「食べる」ことが好きなので、今回の展覧会を、首を長くして待っていた。ギャラリーを後にした後、案の定お腹が空いてきた。
文責:ひるやま 編集:京都で遊ぼうART
京都芸術センター「Artist in Residence Program 2010―Bettina and Simon」