京都「虹の会」のボランティアガイドとして、泉屋博古館の常設展解説ボランティアガイドをする私は、11月21日、一人の陶芸家に出会った。
グレイのベレー帽に地味な感じのラフな上下を着たその老陶芸家は、特別展の「住友コレクションの茶道具」を見た後、エントランスにいた私の方へやって来ると、今しがた見た特別展の感動と興奮を語らずにはいられないというふうに、作品の素晴らしさを語り始めた。
「李朝の井戸茶碗は少しの無駄もない形をしている。
あの茶碗の色は、一度窯に入れただけではとうていでない。数回窯に入れて焼いたにちがいない。
これが李朝時代の名もない陶工によって作られたのもまたすばらしい。
茶入れもシフクも実にわびが感じられそのしつらえも最高だ。現代の作家には到底及ぶことのできない作品だ。」
と、出展されている作品の素晴らしさを、何度も繰り返した。
その一方、今の陶芸作家がこのような古い素晴らしい作品の展覧会を見ない事を、少し嘆いてもいた。
しかし最後には、こう熱く語った。
「自分は80歳だが、このような完璧なすばらしい作品に出会うと、不完全である自分の作品に対して、今にもまして作陶意欲が湧いてくる」と。
老陶芸家の去った後、あらためて特別展を見に行った。
実に普遍的な美しさと存在感のある作品ばかりである。何度見ても飽きることはない。
文:虹のSIKA