その時代を生きた人はもちろん、その時代を知らない人にも懐かしさを感じさせる昭和の風景。いつか、どこかで、見たような、行ったことがあるような気がする景色の記憶。
NHKの朝ドラ「梅ちゃん先生」のオープニングを飾ったジオラマ「梅ちゃん先生の町」は、見応えありました。ミニチュアサイズの小さな町を俯瞰して神の目線で見下ろすもよし、原寸大に縮小させた視線で町に入り込んで眺めるもよし、さまざまな仕掛けを見つけるもよし、物語を想像するもよし、パネル写真と見比べるもよし、楽しみは尽きなく、見ていて飽きません。
さらにすすむと、カフェ黒猫があったり、神保町の古本屋さんがあったり、銀座の町があったり、駄菓子屋さん、銭湯、縁日、電気キネマ館があったり、昭和の世界がそこここに展開していました。
人情味とノスタルジーにあふれる古き、よき昭和。
だけど、それだけではないはず。のどかで、ほのぼのしているだけではなかったはず。
ごちゃごちゃとした混沌もあれば、うらぶれたわびしさもあっただろうし、ある種のいかがわしさもあれば、雑多なエネルギーもあり、バイタリティに満ちていたはず。
70年代の新宿ゴールデン街やガード下の飲み屋、いかがわしいお店、見世物小屋のあるお祭りなど、ドキッとするような、生々しいような、昭和のほの暗い影の部分もちゃんとつくられていました。
すべての日本人が楽しめるジオラマ展だと思います。
文責:虹色