衣笠にある堂本印象美術館は9月1日まで「クールスポット」として開放されている。この期間は無料でギャラリーを楽しめるわけだ。
ぜひこの機会に涼を求めて訪れてみてはどうだろう。
「モノクロームの可能性」と題している今回の企画展は、黒と白の世界、墨の世界がクーラーの涼しさに加え、さらに涼感を高める。
今回のスペシャルは、東寺・小子房からお借りした、印象による襖絵10枚である。小子房は拝観ができないので、この機会に是非見ておきたい。
昭和8年に建立された小子房は「勅使の間」「牡丹の間」「瓜の間」「雛鶏の間」「鷲の間」「枇杷の間」の六部屋が襖によって仕切られていて、印象はその48枚の襖絵を手掛けた。今回の企画展では、「瓜の間」の8枚と「鷲の間」の2枚がメインギャラリーに展示されている。
「瓜の間」の8枚には、キュウリ、スイカ、瓜が生き生きと写生されている。その絵の中から顔を出すイタチや葉の上のカマキリやバッタ、そしてトンボを探してみるのも楽しいだろう。夏らしい題材だが暑さよりも不思議に涼を感じる。
「鷲の間」の2枚は、メインギャラリーの正面を飾っている。後ろを振り向きざまに二本の太い足で仁王立ちのように胸を張って立っている鷲は、確かに羽があり鳥なのだが、部屋の入り口から遠目で見ると、鳥の頭をした大男のようにも見えて、存在感がすごい。
印象は写実も描き抽象画も描いている。風の音が聞こえるような墨の筆跡、空気を感じる墨の濃淡は、居ながらにして座禅をしたような気分にさえなる。
非日常な空間で、1か月分の涼を感じてもらえるかもしれない。
文責:虹のSIKA
モノクロームの可能性 ― 印象の墨絵・東寺小子房襖絵を中心に