毎年、八月七日から十日までの四日間は「六道参り」が行われ、六道の辻周辺は、「六道珍皇寺」(市バス清水道下車西へ五分)へお参りする人で、終日にぎわいを見せる。六道の辻は、古来より「あの世の入り口」と言われている。私も、今年は父の初盆なので「六道参り」にでかけた。
お盆の時期ににぎわうこの界隈と対照的なのが、臨済宗建仁寺をはさんで西側にある、大和大路通りのゑびす神社である。十日ゑびす大祭のにぎわいがウソのように、静かな神社の境内では日差しが強くなる前にと、神主と思われる人がホースで水をまいていた。ほとんどの日本人が一月は神社へ、八月は寺へと節会と共に暮らしている。お祭り好きなのだろうか。信仰が厚いのだろうか。
それはさておき、六道珍皇寺で「六道参り」を終え、寺を出て西へ少し行ったところが六道の辻である。角にある寺にもお参りの線香の煙が立ち込めていた。
六道の辻を今度は南へ少し行くと、六波羅蜜寺がある。日本史の教科書には必ず載っている、口から仏像を出している「空也上人立像」と、「平清盛坐像」がある寺である。
六波羅蜜寺にも、先祖の供養にお参りの人が多くやってきていた。私もお参りをした後、この機会に、2人の木像に会ってみることにした。
六波羅の地は、平清盛が政権を握っていた時期、平家一門の屋敷が広がっていたこともあり、この六波羅蜜寺には、たび重なる兵火を逃れた平安時代や鎌倉時代の木造彫刻の銘宝が安置されている。行ってみて驚いたが、本堂が南北朝時代修営の重要文化財であり、国宝の十一面観音(平安時代)と平安時代の仏像5点(重要文化財)鎌倉時代の木造彫刻9点(重要文化財)を近くで見ることができる。(ただし国宝十一面観音はのぞく)
平安時代の薬師如来坐像にはその大きさに圧倒される。特に仏頭のパワーのすごさはぜひ見に行ってほしい。
清盛坐像は経巻を手にして温和な気品を漂わせ、空也上人の口からは、確かに6体の阿弥陀が出ている。鎌倉時代にできたとは思えぬほど、細部まで精巧に残っていた。
中でもぎょっとしたのが、運慶・湛慶坐像だ。鎌倉時代の仏師として名高い運慶とその息子湛慶が実物大でこちらをまっすぐ向いて座っている。形相、身体、肩のあたり、衣のひだ、まるで実物だ。実際目の前に座って「あなたの話を聞きますよ」と言わんばかりの面持ちだ。七百年も前に作られたのだが、時空を超えて生きているようだった。
お盆の時期、六道界隈を訪れ、運慶・湛慶にあってみてはどうだろうか。不思議な感じに包まれるだろう。
文責:虹のSIKA
京都の街歩きコーナー「京都をぐるっと歩いてみた。」「夜の京都」
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