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没後45年 誌魂の画家 山口 薫展(何必館・京都現代美術館)

投稿:2014年1月21日

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山口薫「おぼろ月に輪舞する子供達」(絶筆)1968年 何必館・京都現代美術館

「何だかいいかんじ」そして「何だか寂しいかんじ」そんな展覧会だった。
私は山口薫という画家を、今日初めて知った。
彼は1907年に群馬県で生まれた。東京美術学校を卒業後、欧州留学、そののち1950年モダンアート協会を結成し、日本洋画の発展を戦前から戦後にかけ貢献したという

彼の絵は、抽象画の様であり具象的でもある。一見何が書かれているのかわからない時も、絵のタイトルを見ると、今まではわからなかった牛や若竹や廃船が画面に現われてくる。草木の中から見える時もあるし、形がはっきりしてくることもある。
作品は、こげ茶色のシンプルな木製の枠だけの額縁の中からキャンパス地を素でのぞかせていて、彼の筆跡を身近に感じさせている。
胃がんで亡くなった彼は、自分の病気を知って以来ひどいショック状態になった。死を認めたくないと思いながらも「自分の垢を残したい」と詩の中でいっている。詩の言葉とキャンバスの筆跡は生身の彼をかんじさせる。
特に絶筆となった「おぼろ月に輪舞する子供達」(S45)は、クレパスで塗ったような薄黄色の満月が淡く清浄な感じで画面の上半分を占めている。月の下には四角いキャンプファイヤーらしき周りに、手をつないで輪になった60人くらいの子供たちが黒いシルエットで踊っている。月と子供たちの間には、前向きに描かれた赤い3頭の馬。真ん中の馬の左前足の筆跡が指ですっとなぞったように汚れていた。

30歳の作品は山口薫のイメージは全くないと言ってよいだろう。タイトル「花の像」は、白い椿を口にくわえた黒いベールに赤い衣のインドの女が描かれている。その作品には芸術に挑むような若々しさを感じる。

そして40代、50代と年齢を重ねるにしたがい、牛、馬、我が子、柿、桃といった身近なテーマを抽象と具象の狭間で淡い色を用いて描いている。

病を知った60代の作品は、幻想的で詩情豊かな独自の世界を作っている。

エントランスからエレベーターで2Fの展示室へ。そんなに広い部屋ではない。7,8作品くらいだったろうか。そして階段で3Fに上がり再びエレベーターで5Fへ上がる。5Fには空へ向かう坪庭と、茶室がある。坪庭はガラスで仕切ってあり、その前にソファーと展示会の図録、絵葉書の見本が置いてある。2,3人が静かに図録を見たり、茶室をのぞいたりと、静寂のなかに時が過ぎる。

私は再び2Fに戻り、3Fへ上がり、山口薫の作品の世界に浸った。
「何だかいいかんじ」そして「何だか寂しいかんじ」そんな思いでギャラリーを後にした。

文責:虹のSIKA



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