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生誕100年 佐藤太清展

投稿:2014年2月14日

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佐藤太清。名前にある「太」がとても印象的です。
展覧会用ポスターの作品「雪椿」の綿のような白い雪と可愛いスズメが大男のようなイメージの「太清」と何だかアンバランスに思えました。
でも本人の写真を見ると、細い人でしたけれど。

自然を描き続けた日本画家、佐藤太清。
「雪を描く」佐藤太清の作品の中でも「東大寺の暮雪」は、しばらく足を止めてしまいました。その作品を前に、私はしんしんと雪が降っている中にいるような気持になりました。
大きな画面のその外に、左右の両端をくれてやって佇む東大寺大仏殿。それを包むかのように天から降ってくる雪。12月ごろの雪でしょうか、水分をあまり含まない雪が屋根にうっすらと積もっています。
静寂の中、あたりは暗くなり空気もとても冷たいに違いありません。しかし屋根の雪は冷たさよりも暖かさすら感じさせます。そしてただ、雪が舞い降りていました。

彼の作品には、場面を切り取った中に見る人を招き入れる不思議な力があります。そしてほとんどが襖より大きな大作です。

最初の部屋にある作品は、竹林の絵が2枚、いや3枚だったか、飛び込んできました。あるいは竹は1枚だったかもしれません。とにかく画面が緑でした。30代に描かれたこれらの作品は竹林の前に、かごに入った果物や、急須が描かれていて自然の中に日常を感じました。

今回の作品展は、それぞれキャプションが詳しいのが特徴だと思います。見落としがちな絵の中の小さな物や、鳥、蝶、虫などに気づかされます。また、太清の描いた時の心情も載せてあって作者をより身近に感じることができます。
「炎がうまくかけずにいたので、中世の絵巻を参考に練習をした」
「龍安寺に行ったが、人が多くいたので描けず、後日早朝に頼んで入れてもらい描いた」「雪を描きに行って雪が降っていなかった」
など、彼の人となりがよくわかります。
作品全体は、華やかで、のびやかで、自由、屈託のなさ、絵を描くことへの真摯な態度、追求心、そして喜びが伝わってきます。30代から70代の作品の変遷をたどる今回の展覧会全体の作品に彼の屈折のない絵描き人生を感じました。

誰もが、作品の前に立つことでいろいろな世界に招待されることでしょう。

文責:虹のSIKA



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