5月17日(土)~7月13日(日)
左京区鹿ケ谷泉屋博故館で住友グループが所有する絵画の中で、19世紀末から20世紀前半にパリの留学した、もしくはパリに居続け活躍し
た画家たちの50点余りの作品が一挙展示されています。
いつもは各会社のロビーや役員室などにあるため、一般では見られないものばかりです。私も先日出かけてみました。
いつもはそれほど作品数が多いとは言えない特別展室に、壁に掛けられてあったり、テーブルに置いた感じで上から見下ろすという手法で、50点余りが密な感じで展示されて、いろいろな方向から作品を楽しめました。
最初に目にする作品は、存在感のある大きなキャンバスに描かれた鹿子木猛郎の「ノルマンディーの浜」です。
1907年制作で絵の具の質感に古さを感じます。
その後特別展室に入ります。
部屋に入り一番目は、黒田清輝の「花と夫人」という作品です。黒田清輝といえば重文の「湖畔」が思い出されます。美術史の図録に必ず載っている、団扇をもって湖を背に描かれた浴衣姿の女人です。油彩でありながら、どこかしっとりした感じの作品です。
今回展示されている作品も黒田らしい、独特のしっとり感があり、色とりどりの小菊が花瓶に画面右半分以上占めていますが、西洋画風の鮮やかなはっきりとした感じではなく、少しベールがかかったように東洋的な湿度を感じるしっとり、はんなりとした感じでした。
そのほかにも浅井忠、和田英作、藤島武二、安井曾太郎、梅原龍三郎ら明治洋画の牽引者たちの作品がpartⅠです。
梅原龍三郎の「霧島」は、豪快、豪放の彼独特の筆タッチでエネルギッシュな作品の多い彼の作品としては、比較的穏やかな墨絵風でもあり、青系の絵の具で霧島をさらっとえがいています。
PartⅡは「沸騰する時代のエトランジェ、パリ豚児の群れ」として藤田嗣治、佐伯祐三、児島善三郎、坂本繁二郎らの作品、partⅢは「クールなパリで個性を磨くー1930年代以降の留学、現代への架け橋としてとして」小磯良平、山口薫、森芳雄、三岸節子らの作品が展示されています。
小磯良平の作品は「風景」「母子像」の2点です。彼らしい淡い感じが出た作品でした。
「踊り子」は東京のギャラリーのみの展示なのが少し残念ですが、「母子像」の隣に展示されている木下孝則の「バレリーナ」は小磯とは違ってはっきりくっきりと描かれたバレリーナの斜め横顔が描かれた作品です。彼女の唇にうっとりさせられました。
今回の作品を見て、明治、大正、昭和初期に多くの日本人がパリで絵を学んでいたことに驚かされました。あのころの日本人は外向き志向で、言葉の壁もものともせず貪欲に学びに出かけて行ったのは、芸術の世界にとどまらなかったのでしょう。
すべての分野で西洋に学び近代化に国を開いた時代だったのでしょう。
文責:虹のSIKA