ホイッスラーは、私にとって初めて聞く絵描きの名前だ。以前に聞いたことがあるかもしれないが、余り記憶に残っていない。
どうも彼は、髭がポイントらしい。鼻の下にあるエッヘンと、いう髭である。
ミュージアムショップのグッズに、髭のポストイット、髭のメモ、髭のマグカップなど、髭にあやかったグッズがあって面白かった。
では、本題に入ろう。油彩のほか、非常に多くのエッチング、リトグラフ、ドライポイントが、第一章人物画、第二章風景画、第三章ジャポニズムの各コーナーにあり、今しがたまで知らなかったホイッスラーにどっぷり浸かったような感じだった。
人物画の最初に、38歳のホイッスラーと対面することになる。「灰色のアレンジメント」と題した、彼の自画像は、まどろんだような薄い霞の中にいながら、こちらをグッと見ている。キャプションには、「一連のノクターンと題する表現を確立した時期であり、顔は緻密にぬり、上半身は荒い筆のタッチで塗っている。また、黒髪の中にこだわって持っていた、一塊の白髪を描いていることから、自信に満ちた様子がよくわかる」とあった。
人物画の一群は、あたかもセピア色の古い写真を見ているような感じだった。
風景画になると、一転して同じように写実的であるが、非常にはっきりと描かれている。
「ブルターニュの海岸」は、和歌山の海岸の岩場に海女がいるような感じだった。
彼は、日本の浮世絵師、広重、鳥居清長、北斎らに影響され、遠近法を打ち破った絵や、恋人ジョーを描く際、団扇を持たせて描いている。当時はジャポニズムが大変流行したそうだ。
最も印象に残ったのが、現在、フリーア美術館に移築されている、「ピーコックルーム」の映像である。ホイッスラーが、彼のパトロンであるレイラントの不在中に、ほとんど装飾のできていた部屋を、「ピーコックルーム」に変えてしまい、怒ったレイラントは、以後、ホイッスラーと絶縁したという部屋である。レイラントは怒ったにもかかわらず、その部屋を使い続けたという。
「ピーコックルーム」
全体が淡いグリーンの色彩で統一され、壁の一面には金色で描かれた二羽の孔雀が描かれ、対する一面には「陶器の国の姫君」と題した、着物を身にまとった金髪の美人の立ち姿が描かれている。フーリー美術館学芸員の話によると「ピーコックルームに入ると、アートの一部になれる」そうだ。一度実際に行って、アートになってみたいものである。
ここで終わらないのが、京都国立近代美術館のすごさである。
同じチケットで4階のギャラリーにもはいれる。
今回は、特別展にあわせ、ホイッスラーやモネらが影響を受けたジャポニズムに因んで、橋・舟・木立の西洋画にはない、キャンバスにおける空間やその描き方が説明してあり、実際に作品が展示されていた。そのコーナーを過ぎると、モネ、ピカソ、マチス、梅原龍三郎、佐伯祐三、等々、有名なアーチストの作品を楽しむことができる。
私の、秋の日のアート三昧の一日は、このようにして終わった。
文責:虹のSIKA