編み物を始めると、止まらなくなる。
ひと目ひと目編んでいるだけなのに、一本の糸が面になり、立体になっていくのが面白い。
下田直子さんの作品もまた、ひと目ずつ、ひと針ずつ、創りだされたものたちだった。
どこにでもありそうなちいさなビーズや布きれが、愛らしく可憐な模様を織り上げる。
異なる素材を組み合わせたり、たくさんの色を使っても破綻なく華やかに仕上げたり。
やっぱりさすがだなあと憧れる。
それでもひとつの編み目、ひとつのステッチは、基礎的な、誰にでもできるものであるはずだ。
だから丁寧に丁寧に作れば、自分にもできるのではないかと思ってしまう。
平凡な自分の手が、素敵なものをつくることができるかもしれないと夢見る。
少し前までは、手作りのものがもっと身近にあふれていたはずだ。
あっという間に「買った方が安い」に負けてしまっただけだ。
展覧会を訪れていたおばあさんたちは、
「昔はよくこんなの作ったよねえ」と、懐かしそうに、楽しそうにしていた。
作品を鑑賞するというよりも、どうやって作っているかを解き明かすように目を凝らして見ていた。
そんなおばあさんたちもまた、素敵に思えた。
そんな風になりたいな、と憧れた。