私が最近気に入っているお花見は、平野神社の夜桜見物だ。
江戸時代から「平野の夜桜」と呼ばれて愛でられてきたという桜は、数も種類も豊富で、見ごろを迎えるとただただ見惚れるばかりである。
しかし平野神社の魅力はそれだけではない。
いくつかのお茶屋さんが店を出して、桜のもとで宴会が開かれているのだ。
ブルーシートで場所取りをして開かれる宴会もよいが、紅白の垂れ幕や提灯で飾られた宴席はまた格別ににぎやかだ。
夜空を埋め尽くすほどの桜を見上げ、眩しいくらいに活気がある宴席を眺め、あちこちからあがる「乾杯!」の声を聞きながら、ぶらぶらと歩く。
自然と、心が躍り始める。
屋台で買ったもの食べて、飲む。
やっぱり、花もダンゴも、両方楽しめるのは愉快だ。
物質的に豊かになった今の日本では、ハレとケが無くなったと言われることがある。
毎日毎日、かつてハレの日にしか食べられなかったもの、着られなかったものを食べて、着ているからだ。
あるいはケが、日常生活から隔離され隠されているからだ。
ぼんやりとした毎日は、ひとの心になにを刻むことができるだろう。
平野神社での夜桜見物は、ハレの気分を感じさせてくれる。
五感全てを使って楽しむことができる。
満開の桜は今もこれからも、晴れ晴れとした非日常をくれるのだ。