京都市内を流れる鴨川は、とても身近な水辺だ。
天気のよい日には読書や散歩など、川堤で思い思いに過ごす人々であふれる。
夏になると、納涼床で美味しいお酒と食事を楽しむこともできる。
暖かい季節、川を渡る風は涼しく心地よい。
パリを訪れた時、セーヌ川の河畔に人々が集っているのを見かけた。
鴨川よりもずっと大きく遊覧船が往来していたりもするのだが、くつろげるように整えられた場所ではたくさんの人々がのんびりした時間を過ごしているようだった。
(そのほとんどが日光浴をしていたことに驚いたが)
水辺というのは、人をゆるやかな気分にさせるものであるらしい。
「光の賛歌 印象派展」では、「パリ、セーヌ、ノルマンディの水辺をたどる旅」とのサブタイトルの通り、印象派の画家たちが描いた水辺の風景が集められている。
明るくてまぶしくて、木々や草花の緑が優しい。そこに流れる川。
青空に、大きな雲が浮かぶ。その下に広がる海。
画面の中なのに、解放感が伝わるようだ。
遠くの避暑地を訪れるのもよいが、往復の道程でかえって疲れてしまうこともある。
できれば日常生活の拠点からそう遠くない場所で、ゆったりと休日を過ごしたい。
100年以上前のフランスの人たちも、現在の私たちと同じようなことを考えていたのだろうか。
でも本当は、自然というのは優しいばかりではないんだということを思い出して、少し辛くなる。
しかしパリの冬は、京都よりも長くて厳しいはずだ。
セーヌ川が氾濫し、水害をもたらしたこともあるようだ。
だからこそ、画家たちは描いたのだろうか。
穏やかな季節が終わってしまった後も、明るい日差しと爽やかな水辺を思い出すために。
そこで感じた心地よさを、思い出すために。