金魚は泳ぐのではなく、舞う。
薄い背びれや尾びれがドレスのようにひらひらと揺れる。
どんなに高くジャンプしても地上に降りるしかないバレリーナとは違って、
水中で金魚はいつまでも高く舞っている。
アートアクアリウム城では見たこともないようなたくさんの金魚が舞っている。
見たこともないような珍しい金魚が舞っている。
ぶらぶらと歩きながら、珍しい金魚を眺める。
江戸時代、金魚は庶民にも広く普及し品評会なども行われたそうだ。
日本庭園で金魚を見つめていると、なんだか自分が大名にでもなった気分になる。
照明の色によって、金魚の色が闇に沈んだり、鮮やかに浮かび上がったりする。
大きくて変わった形の水槽は、見る角度によって金魚の姿が大きくなったり、小さくなったりする。
まるで万華鏡のようだな、と思う。
くるくると表情を変え、同じ模様には二度と出会えない偶然の世界。
そういえば江戸時代、万華鏡も大流行したという。
日本人ならきっと、誰でも一度は飼ったことがある魚。
ちょっとしたことですぐに死んでしまう、はかない魚。
綺麗なもの、珍しいものを求め続ける人間が生み出した魚たち。
会場を出ると、それまで自分がどこにいたのか分からなくなった。
タイムトリップしていたような、異次元の空間にいたような、不思議な気分だった。
金魚の舞に、酔っていたのかもしれない。