先日、細見美術館に行ってきた。
志村ふくみ、洋子の作品展(しむらの色)。
母上の小野豊さんから手ほどきを受けたふくみさん、そして長女の洋子さん、三代に渡って紡いできた染織の道。
志村ふくみ「不二」
ふくみさんの作品は古今東西の歴史や神話・思想・文学からインスパイアされている。
洋子さんは、ゲーテやシュタイナーの色彩論や社会問題への関心も深いようだ。
志村洋子「壽壽」 2012
ふくみさんの米寿の為に織られた「壽壽」。
ヨハネの黙示録に、(苦よもぎ)という星が落ち、多くの人々が亡くなった話がある。
ウクライナ語で「苦よもぎ」をチェルノブイリというのだそうだ。そのあたりは苦よもぎが群生し、黒い草原と呼ばれる。洋子さんは、この草を染めた糸で母に米寿の為の着物を織った。
光と 影・善と悪・真と虚は同じ存在であるという意味を込めたという。
自然界の命を色に染め織る作業は、日々の研究と研鑽を要する。
その結晶が工芸だと思う。
お二人は、その上に深い精神性を投影している。
それが工芸に留まらない芸術へと昇華させているのだろう。
志村ふくみ「小裂帖」「貼交 風炉先屏風」
志村ふくみ 「かるた」
端布をつなぎ合わせた着物や言葉(詩)と布の屏風、かるた。
志村洋子「マチスの部屋」 2012
マチスからのインスピレーションを受けた着物の楽しさ。
柄澤齋(絵)志村洋子(裂)「スフィンクス」
柄澤齋氏の版画・絵と洋子さんのコラボレーション。
小野豊さんの表紙絵にふくみさんの書。
着物だけに留まらない多彩な作品は、現代社会へのメッセージのようである。
自然や生き物を脅かすことへの――