オーストリアとスイスの間にある小さな国、リヒテンシュタイン。
京都市美術館では、日本で初めて侯爵家が所蔵する世界最大級のコレクションを公開している。 これまで目にできなかった作品も多く、興味は尽きない。
ヘルマン・ポステュムスの「古代ローマの廃墟のある風景」は、展示を再三要請されてきたもの。
1536年ローマに滞在していたポステュムスが、皇帝ネロの黄金宮殿の遺跡をモチーフに描いた。
古代の遺跡に対する彼の知識の信憑性を示す。
「ルドヴィージのユノ」は、作品の中央にある頭部像で、現在はローマ国立博物館にある。
その他、描かれた彫刻・絵画の70点の典拠が判明しているという。 なんともロマンのある作品だ。
宝探しのように、それらの遺跡や遺物を探す楽しみを持つ人々が世界中にいるのでは?
ラファエッロ・サンティ《男の肖像》1502/04年頃
©LIECHTENSTEIN. The Princely Collections, Vaduz-Vienna
ラファエロの「男の肖像」 彼の色彩の美しさに、いつも吸い込まれてしまう。 この赤と緑!
ペーテル・パウル・ルーベンス《クララ・セレーナ・ルーベンスの肖像》1616年頃
©LIECHTENSTEIN. The Princely Collections, Vaduz-Vienna
「クララ・ セレーナ・ ルーベンスの肖像」 は、数点展示されているルーベンスの中で、ひときわ異彩を放っている。
ルーベンスといえば、神話的世界など物語性のある作品しかイメージになかった。自分の娘を描いたからか、この時代には他にない自然な表現だと思う。
アンソニー・ヴァン・ダイク《マリア・デ・タシスの肖像》1629/30年頃
©LIECHTENSTEIN. The Princely Collections, Vaduz-Vienna
アンソニー・ヴァン・ダイクの「マリア・デ・タシスの肖像」
ヴァン・ダイクは、ルーベンスの工房で助手をした後、イギリス随一の宮廷画家になった。 夜会のドレス・レースの広い衿・ダチョウの羽根の扇子。 落ち着いた色調や上質な装いがエレガント。
(左)ヨアヒム・フリース「ぜんまい仕掛けの酒器(牡鹿に乗るディアナ)」1610-12年
(右)ディ・パキエ磁器製作所、ウィーン「コーヒーポット」1725年頃
©LIECHTENSTEIN. The Princely Collections, Vaduz-Vienna
現地の展示方を取り入れた(バロックサロン)は、絵画・彫刻・工芸品・家具・タペストリー。
まだまだ綺羅星の如く名作が続き、御紹介したいが。
アルプスに佇む侯爵家の城に思いを馳せる。 日常を忘れる贅沢なひと時を、皆さまもぜひ。
リヒテンシュタイン 華麗なる侯爵家の秘宝(6月9日まで)